舞台「二度目の夏」を観てきました。
ストーリーは、
何不自由なく育った田宮慎一郎は、代々続く田宮家の会社を継ぎ、6代目社長となり、美しい娘・いずみを娶った。
結婚して二度目の夏、二人の姿は郊外の別荘にあった。
夏の間、街中から別荘に居を移すのが、田宮家の習慣だったのだ。別荘には仙台から仕えている今や相談役とでも言うべき落合道子、家政婦の前田早紀子、そして慎一郎の後輩でもあり親友でもある北島謙吾という若者も滞在していた。
慎一郎が出張している間、いずみの遊び相手をつとめる北島。そんな二人を見るにつけ、悪い噂が立つことを、道子は心配していた。
道子は慎一郎に、いくら何でも北島といずみの距離が近すぎる、と進言するが、慎一郎は相手にしない。
慎一郎と一緒に出張から戻った秘書の上野忠も、何かにつけてこの別荘を訪れる。上野と早紀子は、どうやら内密につきあっているらしいが、早紀子は次第に北島に惹かれてゆく。そのことに、激しく嫉妬する上野。
やがて、道子の心配した通り、いずみと北島に噂が立つ。
ある夫婦。彼らの周りの男と女。ある夏。ある別荘。
「嫉妬」を生まない愛情は、真実の愛ではないのか。
男は次第に自分の中の葛藤に追い詰められてゆく。
そしてやがて、そんな男を巻き込みながら、周囲の状況が大きくうねってゆく。
というお話です。
岩松さん作・演出の作品です。岩松さんの作品、ずーっと観ているのですが、時々、あれ?っていう感じで、理解が出来ない時もあるのですが、この作品は、とても良かったです。配役も良かったのかしら。じわじわ責められていく感じが、背筋を触られているような気がして、もう、マジでそれぞれの人物のイヤ~な気持ちが伝わってきました。
慎一郎は子供の頃から家を継ぐことを義務付けられていて、そのように育てられてきています。だから、感情をあまり外に出さないように教育されているんです。彼と結婚したいずみは、美しい女性で、まぁ、普通の考え方なのだと思います。なので、もっと一緒に居て欲しいし、心を許し合っている夫婦になりたいと思っている。夫はとても優しいけど、でも、一歩引いた感じの接し方で、自分が愛されているのかという実感が持てないのだと思うんです。なので、近くで自分の相手をしてくれている北島との距離が縮まってしまう。北島を慎一郎の代わりにしているんです。そして慎一郎に嫉妬して貰い、もっと近づきたいと思っている。
この夫婦の愛し方って、一番悪い愛し方ですよね。お互いに相手の出方を待ってしまっているんです。それじゃ、距離は縮まらず、その内、ダメになってしまいます。どちらかが、嫌がられようがどうしようが、べったりくっ付いて行くようにしないと、上手く行かないよね。一度、そうやって距離を縮めてしまえば、後は、それぞれを尊重してお互いの距離を決めて行けばよいけど、一度、べったりくっ付かないと、それも出来ません。
そんな夫婦の間に入ってしまったのが北島という男性です。彼は慎一郎の後輩で、真面目で気の良い男です。なので、慎一郎に妻の話し相手になってやって欲しいと言われ、素直にこの別荘にやってきて、いずみの相手をしてくれているんです。なのですが、いずみは夫が相手にしてくれない分、彼にすり寄り、やり過ぎというほど北島にくっつきます。北島は、最初は先輩の奥さんと思っていても、これだけ近づかれたら、誘惑されちゃいますよ。意志に反して、いずみを好きになって行ってしまいます。
そんな距離の近いいずみと北島を見て、使用人の道子は二人の仲を疑い、その内に、ご近所の電気屋などにも噂が立ってしまいます。何とかしないとと、道子は心配するのですが、慎一郎は取り合いません。でも、内心は凄く心配をしていて、でも、いずみに何と言ったら良いのか分からないんです。素直に北島と仲良くならないでくれって言えればよいのですが、それが言えないんです。
慎一郎は、北島といずみの事が気になって気になって仕方がないのに、それが言えず、でも、視線や態度にはそれが出てしまうんです。その針で刺すような視線や言葉が北島に刺さり、北島は何とかそれを回避しようと、いずみとの距離を取ろうとするのですが、いずみは構わずにすり寄ってくるので、どうしようもなくなって、良心の呵責に耐えられなくなっていくんです。
慎一郎の両親にも、実は、この夏に起こったことと同じような事があったのではないかという話が、彼らの会話の中で語られます。実際の風景と、周りの人間が見ていた風景とが、違うのかもしれないという事なんです。真実は何だったのか、そして真実ではない噂が、人の心を壊していくという出来事が、この舞台の中で描かれていて。凄く良かったんです。このお話、映画になっても面白いんじゃないかなぁ。
東出さん、舞台をやるようになってから、本当に演技が上手くなってますね。驚くほどです。最初の頃は、ぼそぼそと喋る感じが下手なのかと思っちゃったけど、演技が伴ってきたら、それが特徴になって、凄く生々しい男性が演じられるようになってきたと思います。太賀さんは、上手いですよね。彼が出てくると、寒い冬に温かいシチューが出てきたような気持ちになって、とっても好きです。そして、今回、この二人をかき回すのが、片桐はいりさん。使用人の道子の役なのですが、彼女がキモなんです。最高でした。
私は、この舞台、超!超!超!お薦めしたいと思います。今回、凄く感動して、心に残りました。これは良い作品だと思います。もし、お時間があったら、まだ東京でもやっているので、ぜひ、観に行ってみてください。当日券も、少しあるようです。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
M&Oplays 「二度目の夏」
http://mo-plays.com/secondsummer/