舞台「芙蓉咲く路地のサーガ 熊野にありし男の物語」を観てきました。
ストーリーは、
「路地」を無くした張本人浜村を恨む秋幸だったが、浜村が建てた石碑について問うと、その昔、浜村一族は落ち武者となってこの地に辿り着き、この地に争いの無い幸せな国を作りたいと言って、ここに根を下ろしたという伝説があるらしい。そして浜村も、その想いを継いで、ここを良い国にしたいと考えている理想を話す。そして・・・。
というお話です。
劇団「椿組 2019年夏」公演で、花園神社野外劇として上演されました。中上健次さんの著書「岬」「枯木灘」「地の果て 至上の時」を元に作られたお芝居で、「風仙花」「覇王の七日」も入れているそうです。この秋幸という男を主人公にした物語を書くのに、中上さんはギリシャ悲劇を意識していたと伝わっているそうです。
初めて「椿組」さんの舞台を観せていただいたのですが、凄い迫力で、目の前で汗や唾も飛び散り、驚くほどの濃厚な芝居でした。今回、中上健次さんの原作による舞台と知り、友達が見つけてくれて、観に行ったのでした。
中上健次さんの作品が映画化され「軽蔑」と「千年の愉楽」を観て、中上さんの作品のファンになりました。なんともいえぬ空気感は彼独特のものであり、血というものをとても意識させる内容は、まるで真っ赤な椿を冠するように感じられて、そのドロドロさに感動しました。
今回の舞台も、やはり”血”というものに踊らされる男性の苦しみと、それを産み出しているにも関わらず、出来るだけ見ない振りをする女性の姿が描かれていました。今、こんな事を言うと差別と言われるかもしれませんが、やっぱり男性脳と女性脳って違うと思うんです。血というモノに対して、男性は自分の中にある血にこだわる意識があると思うのですが、女性って、血にこだわらないんですよ。それ以上に情なんです。もちろん、血が繋がっていれば、それだけで愛情は沸くと思うけど、血が繋がってなくても情で繋がれることも出来るんです。女性は男性よりも、自分で人を産み出すという観点から、血というものに支配されないんじゃないかな。もちろん、自分が産んだ子供が一番可愛いけど、でも、それは血ではないと思うんですよね。男性は、自分で産まないから、その感覚を掴むために血にこだわるのかなと思いました。
血にこだわりすぎて、身動きが取れなくなったのが、この秋幸であり、浜村だったのかなと思います。もし、そんなことを気にせずに、親子関係が結べていたら、複雑にならなかっただろうし、父と息子として生きる道があったかもしれないのに、どうしようもない、古くからの因縁があったのでしょうね。
そういえば、作品の主題歌が「ふようのうた」という歌で、山崎ハコさんという方が歌っているのですが、最後のそのハコさんが出てきて、生で歌ってくださいました。すごいお祖母ちゃんだったけど、声は良かったなぁ。この山崎ハコさん、私、名前は知っていたけど、そんなに有名な人だったのかなぁ。あまり昔のフォークソングというのを知らないので、それほど感動は無かったんだけど、友人は凄いと言ってました。
私は、この舞台、お薦めしたいと思います。とても考えさせられる、深い抒情詩だったと思いました。これは再演は無いのかなぁ。でも、この”椿組”さんの舞台、今後も観ていきたいと思いました。凄い迫力です。野外劇場で、こんな舞台が観れるとは驚きました。今回は、次の日に朝から仕事が入っていたので、直ぐに帰りましたが、出来れば、舞台後の飲み会にも参加したかったな。今度こそと思います。ぜひ、この”椿組”さんの舞台、観てみてください。感動だと思います。
ぜひ、楽しんでくださいね。
椿組2019年夏 花園神社野外劇
「芙蓉咲く路地のサーガ 熊野にありし男の物語」
http://tubakigumi.com/upcoming-stage/
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