舞台「ドライビング ミス デイジー」を観てきました。
ストーリーは、
1948年、夏、72歳の未亡人デイジー・ワーサンは、運転中に事故を起こしてしまう。幸い怪我はなかったが、母の身を案じた息子ブーリー・ワーサンは、専用の運転手として初老の黒人ホーク・コールハーンを雇う。典型的なユダヤ人で元教師、意地っ張りで気難しいデイジーは、お抱え運転手なんて金持ちぶっているようで嫌だと乗車拒否。しかしデイジーの態度に屈することなく、飄々と仕事に励むホークにデイジーは根負け。悪態をつきながらも車に乗ることになる。
こうしてデイジーとホークの奇妙な関係が始まった。やがて1台の車の中で、不思議な絆が生まれていく。買い物、墓参り、クリスマス、モービルへの旅行、冬の嵐、礼拝、キング牧師を祝う晩餐会・・・。淡々とした日常生活におけるホークとデイジーのさりげないやりとり。そこに黒人とユダヤ人という人種の違いが影を落とし、葛藤を生み出した-。
ホーク/60歳~85歳
デイジー/72歳~97歳
ブーリー/40歳~65歳
というお話です。
この舞台、すっごく良かったです。本当の演劇を観たという気持ちがして、感動してしまいました。ストーリーも素晴らしいのだと思うのですが、草笛さんと市村さん、堀部さんというトップの俳優さん3人が、2時間弱の舞台の中で、25年間を演じきっているんです。たった2時間で、25年もの時間を、それも若い時代ではなく、高齢になってからの25年ですから、そんなに大きな出来事が起きる訳じゃないでしょ。ゆっくりと、何も起きなそうな25年という歳月の中で、考え方や精神的なものがどんどん変わって、そこに愛が生まれていくという姿が、素晴らしかったです。
映画でも有名なので、私は、TVで観たことがあると思うのですが、全く覚えていなくて、もう一度観たいと思うのですが、既にDVDは廃盤なのかしら。どこかで配信していないかなぁと思って探したのですが、古い映画なので、見つからないんですよねぇ。
このお話の中では、人種差別や、色々な時代背景が描かれているんです。第二次世界大戦のナチスの影響で、ユダヤ人が沢山、ドイツ方面からアメリカに逃げてきて、アメリカの中でも良く思われていなかったようでした。ユダヤ人への迫害があり、デイジーもそんな中で、教師をして、必死で生きてきたのだと思います。同じ時代、奴隷だった黒人も人権を貰い働き始めていたのですが、まだまだ差別は強くて、黒人と同じ椅子には座らないという時代だったようです。
そんな時代に、この二人は出会い、息子のブーリーは事業で成功して、裕福になっていったように見えました。ユダヤ人と黒人という、アメリカ白人文化からハズれた彼らですが、プライドがあり、強い思いがあり、そして相手を思いやる気持ちがあって、幸せになって行くのですが、同じだけ年を取って、身体は動かなくなっていく。それが、あまりにも上手く表現されていて、感動でした。これこそ、演劇ですね。
そうそう、最初に72歳のデイジーが車で事故を起こして、運転手を雇うところが、今起きている高齢者ドライバーの問題に重なってしまいました。デイジーも、自分で運転は出来ると言い張り、車が悪かったんだと言うんです。でも、事故を調べると、アクセルの踏み間違え。息子が運転手を雇ってくれて、本当に良かったです。
日本だと、運転手を雇うなどの文化があまり無いから、やっぱりご近所タクシーっていう簡易的な運転お手伝いの仕事を作って欲しいですね。タクシーとなってしまうと、特殊な登録や認定があるようなので、もう少し、ご近所の高齢者の方を助けられるような、そんなお手伝いお仕事が出来てくれると良いなと思いました。買い物代行だけでも良いけど、でも、スーパーとかで”物を見て買う”っていう行為が、高齢者には大切なリハビリのような気がするんです。何か出来ると良いなぁ。
この舞台、本当に本当に素晴らしくて、私は、超!超!超!お薦めしたいと思います。本当の舞台って、こういうのを言うんだなというお手本のような演劇でした。アドリブがあったとしても、既に決まっていたことのようにスマートにキッチリと、そして全てがそこで起きていて、彼らがそこで生きているように観せてくれる、それが素晴らしいと思いました。まだ、上演中だと思うので、もし、チケットが手に入るようでしたら、これは、ぜひ観るべき舞台だと思います。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
ホリプロ「ドライビングミスデイジー」
https://horipro-stage.jp/stage/dmd2019/
![]() |
ドライビング・ミス・デイジー (スクリーンプレイ)
Amazon |
![]() |
DRIVING MISS DAISY
2,653円
Amazon |