「凪待ち」を観てきました。
ストーリーは、
無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。亜弓の父・勝美は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所に住む小野寺が世話を焼いていた。ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見され・・・。
というお話です。
毎日をふらふらと無為に過ごしていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓の故郷・石巻に戻る決心をした。そこには、末期がんであるにも関わらず、石巻で漁師を続ける亜弓の父・勝美がいた。亜弓の娘・美波は、母の発案で引っ越しを余儀なくされ不服を抱いている。
実家では、近隣に住む小野寺が勝美の世話を焼いていた。人なつっこい小野寺は、郁男を飲み屋へ連れていく。そこで、ひどく酒に酔った村上という中学教師と出会う。村上は、亜弓の元夫で、美波の父だった。
新しい暮らしが始まり、亜弓は美容院を開業し、郁男は印刷会社で働きだす。そんな折、郁男は、会社の同僚らの誘いで競輪のアドバイスをすることに。賭けてはいないもののノミ屋でのレースに興奮する郁男。
ある日、美波は亜弓と衝突し家を飛び出す。その夜、戻らない美波を心配しパニックになる亜弓。落ち着かせようとする郁男を亜弓は激しく非難し「自分の子供じゃないから」と郁男にぶつけてしまう。手に負えないと思った郁男は、激しく捲くし立てる亜弓を車から降ろし、ひとりで探すよう突き放してしまう。
その夜遅く、亜弓は遺体となって戻ってきた。郁男と別れたあと、防波堤の工事現場で何者かに殺害されたのだった。突然の死に、愕然とする郁男と美波だが、年老いた勝美と美波の将来を心配する小野寺は「郁男とは親子じゃないから一緒には暮らせない。」と美波に言い聞かせるのだった。
自分のせいで亜弓は死んだという思いを抱き落ち込む郁男だったが、そんな彼に会社の社長から社員をトラブルに巻き込んだという濡れ衣をかけられ、解雇だと言われてしまう。そして自分が信用されないという、行き場のない怒りを職場で爆発させてしまい、、会社の機械を壊してしまう。それを機に、恋人も、仕事もなくした郁男は、自暴自棄となっていくのだが・・・。後は、映画を観てくださいね。
何とも激しい生き方をする男のお話でした。香取さんが主演なのですが、今までの香取さんのイメージとは違い、ギャンブル依存症の酷い男の役でした。でも、不思議と違和感が無く、郁男という男がボロボロになり、再生していく姿が良く描かれていました。
印刷会社で技術者として働いていた郁男ですが、ギャンブル仲間を庇ったせいで嫌がらせを受けるようになり、会社を解雇されてしまいます。ギャンブル依存症の酷い男なのですが、弱い者虐めを許せないような正義感の強い男性で、いつも貧乏くじを引いてしまうような性格でした。根はとてもイイ奴なのに、ギャンブルを止められず、キレ易い事が、彼を悪い方向へ向けてしまったのかなと思いました。
そして亜弓の故郷の石巻に一緒に行くことになり、ギャンブルをしないという約束をしますが、閉鎖された地域には、その地域の裏社会の資金源である”ノミ屋”があり、一度、そこへ行ってしまった郁男は、そこから抜けられなくなってしまいます。なんでカモにされることが判っていながら、そういうところへ行ってしまうのかなと不思議の思いました。今どき、ネットでどこの競輪でも競馬でも買えるのだから、調べれば良いのにね。勉強しない奴は、何処までも人にカモられるという典型でした。
もー、ここまで書いて、郁男がクズだと分かりますよね。そんな彼が、ある日、亜弓が殺害されたことで、もっとキレてしまい、ボロボロになって行く姿が壮絶で、観ていて辛くなりました。自分のせいで亜弓が殺されたと思い自爆放棄になるのですが、これ、本当に郁男のせいなんですよ。
彼のせいじゃないと言ってあげたいけど、彼が亜弓のパートナーとなった為に、恨み妬みをかって亜弓は殺されてしまいます。もし、亜弓が娘と二人で帰ってきていたなら、こんな事にはならなかったかも知れないのに。でも、亜弓は郁男の事を愛していたし、娘の美波も郁男を父親のように慕っていたんです。どうしようもない運命に泣けました。人の思いって、誰も止めることは出来ないし、責めることも出来ないけど、悪い方向に行く前に、周りが気が付いていれば何とかなったかもしれないのにね。仕方が無いけど、それでも悲しい事だと思いました。
全てを理解した郁男が行きつく結末はどうなるのか。彼はどうやって、今までの自分を償っていくのか。それは感動的でした。郁男一人では、このまま潰れて行ってしまっただろうけど、亜弓の父親と美波という娘のお蔭で、自分の存在価値をもう一度考え直し、生き直す決断をする郁男の姿は、感動的でした。いい話だったなぁ。
この映画を観て、もう郁男は郁男であり、香取さんではなかったです。ガタイも大きく、前かがみで歩く姿は、もうアイドルの香取さんでは無く、そこに郁男が居ました。もう香取さんも40代なのですから、大きな子供が居ても良い年齢ですよね。郁男という男を演じるにはピッタリの年齢でした。父親であり、オッサンであり、壊れた人間を、ここまで演じられたのは素晴らしいと思います。白石監督もここまで香取さんを追い込んだのは凄いです。
他の役者さんたちは、もうベテランの方々ばかりで、白石監督の映画にも出演されている方々が多いので安心でした。良かったです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。本当は、超!を付けたいのですが、暗くて残酷な部分もあるので、万人にお薦めして良いのか悩みまして、普通にしておきました。大人が観る映画だと思います。子供には、この深い愛の物語は難しいかなと。郁男の愛も、亜弓を殺した犯人の愛も、勝美の愛も、美波の愛も、それぞれに理由があり、深いものがあるんです。それを理解して観て欲しいと思いました。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
![]() |
【Amazon.co.jp 限定】凪待ち(著者サイン本+香取慎吾さんポストカード付)※完全数量限定
1,944円
Amazon |
![]() |
キネマ旬報 2019年6月下旬号 No.1812
2,080円
Amazon |