舞台「オレステイア」を観てきました。
ストーリーは、
女医がオレステスに小さい頃の記憶を訪ねている。「二羽の鷲と野ウサギ」。野ウサギのお腹の中には子ウサギがいる。
オレステスの父アガメムノンは戦争の勝利のために、子殺しの神託を実行し、幼い娘イピゲネイアは生贄として殺害された。そして凱旋の日、夫の帰りを盛大に迎えた妻クリュタイメストラは、その夜、自らの手で娘の仇である夫を殺す。
トラウマの為に混乱するオレステスに、女医は真実を見るよう促す。ついにオレステスは父の仇である母クリュタイメストラを殺害。その罪をもって裁判にかけられる。
というお話です。
神話のお話なのですが、これ、誰を主人公に持ってくるかで、話がちょっと違ってくるんですよね。今回は、オレステスが主人公であり、トロイア戦争の因果応報を清算する人物です。昨年、高畑充希さん主演で「エレクトラ」が上演され、弟のオレステスを村上虹郎さんが演じていたのですが、その時のオレステスとは全く違う人物のように見えました。
オレステスは、父親の仇であり、自分の母親でもあるクリュタイメストラを殺してしまいます。この復讐劇は難しいですよね。だって、姉を父親が殺し、父親を姉の復讐の為に母親が殺し、父親の復讐の為に自分が母親を殺すんですもん。何処までも面倒くさいでしょ。で、その一部始終を見ていたのが、もう一人の姉・エレクトラなのですが、今回、エレクトラは重要人物とはならず、省かれていました。
オレステスは、母を殺し、復讐を果たすのですが、母殺しという罪で裁判にかけられます。アポロンやアテネ、エリニュスなどの神々が集まり裁判を開いて、オレステスの罪について話し合います。トロイ戦争から始まり、沢山の人を巻き込んで殺してしまった出来事は、このオレステスが全ての後始末を付けたという事で結審がつきます。
考えてみれば、最初にヘレネがふらふらしていて、トロイ王子・パリスと不倫しちゃうから、トロイ戦争になった訳で、それがなければ、アガメムノンも、愛する娘を生贄にしなくて済んだから、こんな問題は起きなかったんですよ。一人の女のせいで、こんなに沢山の人の運命が変わってしまったのだから、酷い話です。
あ、でも、「エレクトラ」の方で描かれていたのですが、姉のイピゲネイアは、女神アルテミスに救われて、タウリケの神殿巫女となって生きているんです。母を殺して狂ってしまったオレステスを連れてエレクトラが行きついたのがタウリケで、そこで3人の姉弟は再会を喜びます。
オレステスを生田さんが演じていまして、強くて優しいのですが精神的には弱いオレステスを、真っ直ぐに演じていました。こういう真っ直ぐな役、上手いですよね。生田さんには合っているなぁと思いました。
そしてイピゲネイアを趣里さんが演じていたのですが、幼い頃に殺されてしまう可哀想な長女を、可愛く演じられていました。こんな風に無垢な時に父親に殺されてしまったのかと思うと、母親が復讐をしないではいられなかった気持ちも良く解ります。愛らしくて、父親を全く疑っていなかったのに、酷いですよね。まさか、愛する父親に殺されるとは思わなかったでしょう。だからこそ、アルテミスが不憫に思って、救ってくれたのだと思います。
母親役を神野さんが演じていました。今、演劇界でトップクラスの女優さんですよね。彼女が演じる役に間違いはありません。本当に母親の悲しくて、苦しい気持ちが良く伝わってきました。
この舞台、私は、超!お薦めしたいと思います。でも、先日、千秋楽を迎えたかな。もし、またやることがあったら、ぜひ観てみてください。この題材は、何度も舞台化されているので、また、キャスト違いでも観ることが出来ると思います。
ぜひ、楽しんでくださいね。
新国立劇場「オレステイア」
https://www.nntt.jac.go.jp/play/oresteia/
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