「旅のおわり世界のはじまり」を観てきました。
ストーリーは、
いつか舞台で歌を歌うことという夢を胸に秘めたテレビ番組レポーターの葉子は、巨大な湖に潜む幻の怪魚を探すという番組制作のため、かつてシルクロードの中心として栄えた地を訪れる。早速、番組収録を始めた葉子たちだったが、思うようにいかない異国の地でのロケに、番組クルーたちもいらだちを募らせていく。そんなある日、撮影が終わり、ひとり町に出た葉子は、かすかな歌声に導かれ、美しい装飾の施された劇場に迷い込むが・・・。
というお話です。
ユーラシア大陸のど真ん中、ウズベキスタン共和国まで来てレポーターとして仕事をしている葉子。カメラが回り、だだっ広い湖畔に声を響かせ、ジャージに防水ズボンをはき、下半身まで水に浸かってレポートをしている。バラエティ番組のリポーターを務める彼女は、巨大な水溜まりに棲むという“幻の怪魚”を探すため、かつてシルクロードの中心地だったこの国を訪れていた。
だが、精いっぱい取り繕った笑顔とは裏腹に、お目当ての獲物は網にかかってくれない。現地の漁師は、魚は女の匂いが嫌いだから寄ってこないんだと訴えるが、差別の残った古い考えを日本人が受け入れられるわけがない。ベテランのカメラマン岩尾は淡々と仕事をこなすが、“撮れ高”が気になるディレクターの吉岡の苛立ちは募るばかりだ。ときに板挟みになりながらも、吉岡の要求を丁寧に通訳するコーディネーターのテムル。その間を気のいいADの佐々木が忙しく走り回っている。
万事おっとりした現地の人たちと取材クルーの悶着が続くなか、与えられた仕事を懸命にこなす葉子。人気の食堂の取材では、撮影の都合で仕方なく、ほとんど火が通っていない名物料理のプロフを美味しそうに食べるしかなかった。米が生のままだったのだ。もともと用心深い性格の彼女には、見知らぬ異郷の文化を受け入れ、楽しむ余裕がない。美しい風景も目に入らない。素の自分に戻れるのは唯一、ホテルに戻り、日本にいる恋人とスマホでやりとりする時間だけだ。
表面上は楽しそうな表情を出していても、葉子はウズベキスタンを受け入れることは無く、自分を崩さずにいた。そして歌手になりたいという夢を叶える事ばかりを考えていた。そんな彼女に、現地の人々は、君が話しを聞いてくれれば問題は起こらないと話しかけるのだったが・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、淡々と取材風景が描かれ、葉子のウズベキスタンでの生活を追っていくだけなのですが、結構、深いものが描かれていたんですよ。それが、最後の最後、前田さんのアップの表情を見た時に、それが理解出来るというか、それまで何やってんだろうって思っていたストーリーが、全てスッと受け入れられちゃうところが、なんか、凄いなぁと思いました。私は、気に入りました。
きっと、誰もが、若い頃って自分の殻に閉じこもり、あまり人の話を聞かずに自分の目標に向かって突き進むだけで、それまでの道のりは目標までの過程でしかないと思っていると思うんです。私も若い頃はそうだったけど、でもね、その過程が大切なんですよ。何の役にも立たないだろうと思っている事が、ちょっと周りを見回して、話を聞いてみるだけで、鮮やかな色彩を放ち始めるんです。その色彩が鮮やかなら鮮やかなほど、目標に辿り着ける確率って高くなるんですよねぇ。若い頃はそんな事に気が付かないのよ。
もちろん、一つの事に秀でていて、素晴らしいのは良いけど、人間って、やっぱり1つだけでは生きて行けないんです。色々なモノに触れて、沢山の感覚を手に入れて、色々な人々と出会ってという経験をすると、本当に豊かな生き方になるんです。たとえば、唄を歌うのは誰でも出来るけど、人に何かを伝える為に感情を込めて歌い、人の心を動かすのは誰にでも出来る事じゃないでしょ。同じ目標でも、到達点が違うんです。それにこの主人公の葉子は気が付いたんだと思うんですよ。
この葉子は、彼氏と離れてウズベキスタンという言葉も通じない地域に行き、そこでも自分のスタンスを変えないんです。どの街でも、ホテルからコンビニに行くように買い物に出かけ、食事を手に入れてくるんです。普通なら女性が一人で夜に出歩くなんて危ないでしょ。ホテルの人に買い物をする場所を教えて貰えば良い事なのに、ガイドブックだけを頼りに、誰にも何も聞かないんです。
大きな道路を横切って、事故に遭いそうになっても誰にも聞かないの。自分は用心深いから大丈夫と思っているんだと思うけど、あんなの男に襲われたら一発で終りだと思うんだけどね。でも、彼女は自分は間違ってないと思っているんです。この考え方はダメよねぇ。いつも自分はこれで良いんだろうかって考えながら行動しなくちゃ。分からない事は人に聞かないと。何のための口と手なのよ。言葉が通じなくても、身振り手振りで出来るでしょ。
分からないことは、いつでも誰にでも、聞いた方が良いですよ。自分が知らない事って、本当に沢山あるんです。時間短縮だし、人の知識を借りることは悪い事じゃないんです。コミュニケーションって、大切な事ですよ。最初は勇気がいるけど、一度でも勇気を出せば、世界は広がっていくんです。
この映画、私は感動しました。黒沢監督、上手いですよねぇ。前田さんが、本当に最後に一皮むけて、美しく脱皮したように見えるんですもん。そして周りのキャストも良かった。加瀬さん、染谷さん、柄本さん、そしてウズベキスタン出身のアディズさん、上手かった。もう、このキャスト観るだけでも、この映画が面白いというのが解るでしょ。日本のトップクラスの俳優さんですもん。アディズさんは、初めて見たけど、イケメンでした。ウズベキスタンの国民的俳優さんなんですって。
前田さん、”町田くんの世界”でも、独特な雰囲気で凄く良かったんだけど、今作の彼女もとても良いです。上手いとは思っていたけど、本当に凄く上手くなってきましたね。驚くほど良い役者になってきていて、驚きました。主役も出来るけど、バイプレーヤーにもなれる、素晴らしいです。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。こうやって、人に関わらずに自分だけで目標に辿り着こうともがいている若い人たちって、多いと思うんですよ。そんな人たちに観て欲しい。一人でもがいていても、何も見つからないんだよって。視野を広げて、人の力を借りることを恐れないように成長すべきですよって教えてくれているんです。うーん、本当に良い映画だったなぁ。でも、イマイチ、人に伝わりづらいのかしら。私は満点にしたいくらいだけど、誰もが、この良さを理解するのは難しいのかもねぇ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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