「幸福なラザロ」善良なラザロは美しすぎて、人々は彼を直視出来ないのかもしれない。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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「幸福なラザロ」を観てきました。Fan's Voiceさんの独占試写会で、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

20世紀後半、社会と隔絶したイタリア中部の小さな村で、純朴な青年ラザロと村人たちは領主の侯爵夫人から小作制度の廃止も知らされず、昔のままタダ働きをさせられていた。ところが夫人の息子タンクレディが起こした誘拐騒ぎを発端に、夫人の搾取の実態が村人たちに知られることとなる。これをきっかけに村人たちは外の世界へと出て行くのだが、ラザロだけは村に留まり・・・。

というお話です。

 

 

20世紀後半、あるイタリア中部・インヴィオラータ村の地域が天災の影響で外の世界と隔絶されていた。そこに昔から住んでいる領主の侯爵夫人は、隔絶されているのを良い事に、貧しい村人たちを小作人として使い、無料の労働力を手に入れていた。時代が変わり小作人制度が廃止され、全ての労働者には賃金を支払う事と法律で定められているのに、それを伝えず、小作人として、長い間何代にも渡り労働をさせているのだった。

 

ある日、侯爵家の一人息子タンクレディが町からやってくる。そして、違法行為をしている母親を笑いながらも、ちょっと違和感を感じているのだが、母親は、小作人たちはただ搾取されるだけじゃなく、自分たちが利用出来るラザロという少年を便利に使っていることを指摘し、人間は、いつも自分より弱い者から搾取をするのだと言う。

 

 

ラザロは優しくて、イヤとは言えない性格であり、そんなラザロを村人たちは軽んじて、辛い仕事をほとんどラザロに押し付け、正直者のラザロは、言われた通りに仕事を続けていた。そんなラザロをタンクレディは気に入り、”俺たちは兄弟だ”と言って自分の仲間に引き入れる。

 

タンクレディは母親に反抗するため、自分の誘拐騒ぎを引き起こす。ラザロが良くいる山の上の隠れ家に二人で隠れ、タンクレディは身代金を要求するのだが、母親は見抜いており無視を続けていた。しかし、タンクレディに思いを寄せるテレーザが心配して警察に電話をしてしまう。

 

 

警察が村に現れ、侯爵家が行っていた違法就労が公になる。村人たちは、昔ながらの貧しい生活をしており、警察のいう事が理解出来ない。驚いた警察は、仕方なく村人を保護することとなる。そんな中、ラザロだけは姿が見えない。実は、ラザロは突然に高熱を出して生死の境を彷徨い、それでもタンクレディの身を心配し、食事を届けようと山に登って行くのだが、途中で足を滑らせて谷底へ落ちてしまう。

 

警察に保護された村人たちは、現代社会の事を知り、新しい生活を始めていく。しかしラザロは現れない。それから何年か経ち、村人たちの前にラザロが現れる。何故か、昔と同じ姿で年も取っていない。そして・・・。あとは、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、良かったなぁ。まず、ラザロと言えば、新約聖書の”ヨハネによる福音書”11章に出てくる男性ですね。病気で亡くなって、洞穴に埋葬されたのですが、4日後にイエスが来て、「ラザロよ、出てきなさい」と言うと、甦って出てくるんです。ゾンビじゃないですよ。でも臭くなってるとか言われちゃってたな。で、その後、イエスの教えを伝えるようになります。

 

このラザロは、ずーっと善人なんです。聖人のようなんです。素直で、誰も疑わない。そんな人間を、ここぞとばかりに利用しまくる人々には呆れますが、そんな村人も、また、侯爵夫人に利用されているんです。どこまで行っても、人間の欲望が勝ち、汚さが溢れているのですが、末端には善人が居るんですよ。彼だけは、本当の聖人なんです。

 

 

もし、村人も侯爵夫人も善人なら、みんなで分け合って、幸せに暮らせていたと思うのに、そうでないから、事件となってしまい、警察が現れて、静かな生活は崩れてしまう。そしてラザロは置き去りになってしまいます。ラザロは、目を覚まして村人たちを探すんだけど、何故か、時間が凄く経っていて、彼だけタイムスリップしたようになっちゃうんです。

 

自分より年下だったアントニアが大人になっていて、もちろん、中身も大人になっていて、既に都会に馴染んでいるから、考え方も全然違ってしまっています。でも、アントニアはラザロの状況を理解して、色々と都会の事を教えていくんだけど、ラザロだけは、村にいた時と全く変わらないんです。

 

 

真摯で正直で疑わないラザロ。周りは罪で溢れていて、誰もが人を傷つけて平気で生きている世界で、只一人、尊い心を持っている。そんな彼を見たら、自分の汚さが嫌になると思うけど、ここに出てくる人々は、全くそれを思わないんです。尊いのはバカだと言わんばかりに、ラザロを傷つけるの。私は、もう少し人間を信じたいのに、映画の中の人々は酷かったなぁ。人間って、美しいものに惹かれながらも、美しいものを妬み、憎む、感情もありますよね。自分のものでは無い美しさを壊してしまいたくなる、そんな気持ちを、なんで神様は与えたのかしら。

 

このラザロは、お話の中に出てくる寓話の狼に重なるんです。その狼は仲間と群れないで生きているというお話で、狼は周りの人には見えないけど、いつもラザロの近くにいて、まるでイエスを見守る精霊のような感じに見えました。父=神が遣わした精霊だったのかも知れませんね。

 

 

伯爵夫人の息子・タンクレディというキャラクター好きでした。善人のラザロに惹かれながらも、周りの状況もあって彼を助けることは出来ず、母親がやっている詐欺を悪い事だと思っていても、それを笑い飛ばすしか出来ない、悲しい人物でした。本当は、とても心の綺麗な人なんじゃないかなと思います。だけど、言い出す勇気が無いんです。もし、どこかで勇気が出せていたら、詐欺で警察に逮捕される前に問題を解決して、良い方向に出来たかも知れないのに。当事者の一人でもあるのに、傍観者にしかなれなかった人。だからこそ、ラザロが彼に興味を持ったのかなと思いました。

 

この映画、本当に良かったんですけど、この良さは、万人に伝わるのが難しいかもなぁ。キリスト教が関係しているのと、ファンタジーっぽくなっているので、それを素直に受け入れて、考えてくれる人でないと、はぁ?で終わってしまいそうな心配があります。でも、このラザロの温かさと、周りの人間の汚さを分かって貰えれば、成功かなとも思います。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。私は好きでした。ラザロみたいな友達がいたら、何でもやってくれそうだから、反対に申し訳なくて何も頼めなくなってしまいそうです。でも、一緒にいたら、優しくなれそうな気がしました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

P.S : 洋画を観るなら、”聖書”は読んでおいた方が良いですよ。キリスト教になるとかではなく、ベストセラー本だと思って、読んでみて欲しいです。私はどの宗教も信じていませんが、海外のものを理解したいと思うと、どうしても”聖書”にぶち当たるので、読んでみました。

 

 

幸福なラザロ|映画情報のぴあ映画生活

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