「夜明け」人間の細かい精神描写が素晴らしいと思いました。ちょっとだけネタバレがあります。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「夜明け」を観てきました。

 

ストーリーは、

ある日、川辺を歩いていた初老の哲郎は、水際に倒れていた1人の青年を見つける。哲郎の自宅で介抱された青年は自ら「シンイチ」と名乗った。哲郎とシンイチは徐々に心を通わせ、哲郎は自身が経営する木工所でシンイチに技術を教え、周囲もシンイチを受け入れていった。しかし、シンイチは本名を明かすことができないある秘密を抱えており、哲郎もまた決して忘れることができない過去があった。

というお話です。

 

 

夕方、ある橋の上で花束を抱えてうずくまる男がいる。何か辛い事でもあったように見えた。朝、川釣りに行こうと歩いている哲郎は、川縁に倒れている青年を見つける。急いで駆け寄ると、まだ意識があるようだった。急いで自宅に連れ帰り、温めて寝かせる。

 

目を覚ました青年に哲郎が名前を訪ねると、吉田真一と答える。嘘っぽいようだったが、詮索せず、何を聞いても口ごもる真一に、言いたくないなら言わなくて良いといい、身体が回復するまで家にいれば良いと話す。哲郎が一人で住んでいる家にお世話になり、段々と回復した真一は、哲郎が経営している木工所で見習いとして働くようになる。

 

木工所には、2人の職人と事務の女性だけだった。哲郎は、事務の女性と付き合っており、もうすぐ結婚するらしい。真一は、多くを語らず、そこで仕事をし、夜は職人仲間と飲みに行くような日常を送るようになる。すると、ある飲み屋で、真一を見た事があるというホステスが現れる。その街の近くで、ファミレスが火事になり、現在はパチンコ屋になっていて、そのファミレスでバイトをしていた男が真一だというのだった。

 

 

哲郎は、真一に亡くなった息子の姿を重ねていて、段々と真一を息子の様に可愛がっていく。そして、真一の本当の名前を知っても、もう忘れて真一として生きれば良いと話し、そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

これ、良い映画だったなぁ。小林さんと柳楽くん、本当に上手くて、どうしようもなく求めて、依存してしまう姿を良く描いていました。

 

真一(光)は、ある事がきっかけで自分が嫌になり、勢いで自殺してしまったんだと思うんです。でも、哲郎に助けられたことで、もしかしたら、自分も生きる意味があるのかもという考えが出てきたのかもしれません。それで木工所で働き始めるのですが、そこでも人付き合いは苦手のようで、辛そうでした。

 

 

そんな不器用な真一を、自分の亡くなってしまった息子と重ね合わせて、気遣い、大切に思う哲郎。一緒に居れば居るほど、息子の代わりになってしまい、大切な存在になっていくんです。だけど、真一には、それが重荷になって行くんですよねぇ。哲郎の気持ちをありがたいと思いながらも、期待にそえない自分が辛くなっていくんです。そりゃ、そうですよ。本当の息子じゃないんですもん。

 

この哲郎と真一の距離感が、凄く良く描かれているんです。最初は、全くの知らない人間同士だから、真一は哲郎の家で世話になるんだけど、洗面所で顔を洗うと、そこのタオルを使わないんです。この描写、解かる~って思いました。勝手に使って良いのかと思う気持ちと、他人の家のタオルで顔を拭きたくないという気持ちの両方で、シャツで顔を拭くんです。うーん、上手いと思いました。知らない人の家に行って、いきなりこれ使えって言われて、使わなくても失礼だけど、使うのも、ちょっと気持ち悪いというか、敬遠してしまう。それってあるでしょ。病院とかのスリッパを履きたくないのと一緒なんです。綺麗なんだろうけど、気持ちがついて行かないのよ。

 

そんな二人が辿り着くのは、一体どこなのかが、この映画では描かれています。でね、全部はネタバレしないけど、一つだけ、どうしても書きたいネタバレがあるんです。この後書くので、もし、ネタバレ嫌だったら、ここで止めておいてください。

 

 

ラストに色々あって真一が出て行くんだけど、最期のカットで、真一の正面顔があるんです。そのバックに、木を叩く音が聞こえているので、私が思うに、きっと、真一は、光に戻って、光として木工所のドアを叩くのかなと思いました。うん、この場面、とっても感動的で、凄く良かったです。

 

その前に、哲郎が付き合っている女性の連れ子が寂しそうにしているのを見て、真一が、「元通りになるから大丈夫。」と声を掛けているんです。そこで、真一が光に戻らなくちゃと決断したんだと思うんです。きっと光に戻って、木工所に帰って、幸せな関係になれるんだろうなって思いました。未来が見えるラストで、本当に観ていて幸せになりました。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。これは良い映画でした。やっぱり柳楽さん上手いなぁ。ギャグも出来るけど、こういう感情溢れる演技も、とっても伝わってくるんです。顔も綺麗だしねぇ。柳楽さん、また舞台もやって欲しいな。”金閣寺”を演った時、素晴らしかったですもん。この映画、広瀬監督のデビュー作品なのですが、彼女は、是枝監督や西川監督の助手をしてきた方で、両監督の後押しを受けての初作品です。ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

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