【演劇】「豊穣の海」長い4作品を上手くまとめ上げ1本に。素晴らしく分かり易かったです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

舞台「豊穣の海」を観てきました。

 

ストーリーは、

 

「春の雪」

明治末から1914年早春まで。

松枝清顕は貴族の生まれ。綾倉聡子は彼の幼馴染。二人は姉弟のように育てられた特別な存在であったが、聡子はいつからか清顕を恋い慕うようになっていた。しかし清顕の心が得られず、洞院宮治典王殿下と婚約する。それによって、聡子への恋情に気づいた清顕は、勅許が発せられたにも関わらず、親友・本多繁邦の協力の元、聡子との逢瀬を遂げる。そして聡子は妊娠するが、清顕と聡子の関係が画家に知れ、聡子は清顕の子を堕胎する。聡子は一人で罪を被ろうと、門跡寺院「月修寺」で自ら髪を下ろし出家する。清顕は聡子に一目会おうと雪の降る中、月修寺に行くが門前払いをされ、肺炎をこじらせた清顕は本多に「また、会ふぜ。きっと会ふ。滝の下で」という言葉を残し、20歳の若さでこの世を去る。

 

「奔馬」

1932年5月から1933年年末まで。

清顕が死んで18年。本多は大阪控訴院判事になっていた。ある日、本多は大上神社の剣道試合で、飯沼勲という青年と出会う。本多は三輪山の三光の滝に勲に呼び出され、彼の脇腹に清顕と同じ3つの黒子がある事に気が付く。本多は死に際の清顕の言葉を思い出し慄然とする。本多は勲から、愛読しているという「神風連史話」を渡される。勲はその精神を以て、昭和の神風連を志し、この国を浄化しようと考え、蹶起を計画するが、実行前に逮捕されてしまう。本多は勲を救う決意をし、判事を辞して弁護士となり、勲の弁護を引き受け、本多の弁護により、勲は釈放される。しかし、その結果、自身の志を達成出来なかった勲は切腹自決を遂げる。

 

「暁の寺」

1941年から1967年まで。

弁護士となった本多は弁護の成功報酬で多額の金を得て、悠々自適に暮らし、久松慶子という有閑婦人の友人も得た。そんな折、以前にタイで出会ったジン・ジャン(月光姫)が日本に留学してくる。美しく官能的に成長した姫に本多は魅了され、年齢不相応の恋心を抱くが、ある夜、別荘に泊まった彼女の部屋を覗き穴から覗くと、そこに慶子と裸で抱き合うレズビアンの行為の最中の光景があった。そして、その脇腹に3つの黒子を見つける。ジン・ジャンは清顕、勲に続く転生者だと確信するが、本多は結局自分は傍観者に過ぎず、彼らとの間には超えられない何かを感じる。その後、ジン・ジャンとは音信が途絶えるが、20歳でコブラに噛まれて死んだことを知る。

 

「天人五衰」

1970年から1975年夏まで。

75歳となった本多は慶子と気ままに遊び暮らしていた。本多は天人伝説の伝わる三保の松原に行った折、ふと立ち寄った清水港の帝国信号通信所で働く16歳の少年・安達透と出会う。彼の左の脇腹に3つの黒子を見つけた本多は透を清顕の生まれ変わりではないかと考え、養子にする。そして英才教育や世間一般のマナーを施し、清顕や勲のような夭折者にならないように教育するのだが、透は本多に対し反抗的になっていく。そんなストレスから、本多は覗き見趣味が復活してしまう。20歳になった透は、自分が本多家の新しい当主として君臨しようと企み、本多への虐待は更に過酷なものとなっていく。見かねた慶子が透に3つの黒子にまつわる転生の話をし、あなたは真っ赤な贋物だとなじる。自尊心を激しく傷つけられた透は、清顕の夢日記を読んだ後、服毒自殺を図るが未遂に終わる。一方、本多は60年ぶりに奈良の月修寺へ尼僧門跡となった聡子を訪ねる。だが、門跡となった聡子は、清顕という人は知らないと本多に告げるのであった。

 

以上の三島由紀夫の「豊穣の海」4作品を上手く組合せ、入れ替えながら描いていく舞台でした。

 

 

私は、三島由紀夫ファンなので、原作はもちろん知っていたからなのか、今回の舞台、とても分かり易く描いてありました。「豊穣の海」ということで、4作品をどうやって組み合わせるのかと、ちょっと心配していたのですが、とっても上手く組み合わせて合って、その上、演出も分かり易かったので、最高でした。

 

普通、この作品は、1作づつ描くことが多いんですけど、こうやって組み合わせて作ってくださると、より、三島の言いたかったことが伝わってきて、良かったと思います。

 

「春の雪」は、以前、妻夫木さんと竹内さん主演で行定監督で作られました。主題歌が宇多田ヒカルさんだったので、良く覚えています。この映画も良かったんですけどね。

 

まず、脚本が素晴らしく上手かったと思います。だって、こんなに沢山の内容をとても分かり易くまとめて、転生という事を軸に、人間とはという事を描いていて、これは、脚本の上手さだなと感動しました。三島の作品が、こんな風に上手く一つになるとは、嬉しい限りです。実は、三島ファンなので、この4作品をどんなふうに2時間半ほどにまとめるのかと、ちょっと心配していたんです。原作を読んでいないと、全く分からないようなまとめ方だったら辛いなぁと思っていたのですが、分かり易くて、要点をギュッとしてくれていたので、感動でした。この脚本なら、映画化も夢じゃありませんね。これは、出来ますよ。うん、映画化して欲しいです。

 

 

人間の存在とは、何なのだろう。今そこにいたと思ったら、ふと見ると、もういなくなっている。本当に居たのか、それとも幻か。それは見る人の心々なんですよ。そこに在ったと思えば在ったし、無いと思えば無いんです。それこそ”コギトエルゴスム”、”われ思う故に我あり”なんです。

 

だからね、人に左右されず、自分の思いで良いんですよ。たとえ清顕が居なかったと言われようと、自分にとっての清顕は目の前にいたんです。美しい彼の存在は間違えようがない。彼は、目の前で輝いていたのだと思えば、誰が何を言おうと、関係無いんです。この世は虚ろで惑いやすいけど、この本多の中には、美しい清顕が今も居るんです。

もう、本当に三島の作品らしいです。この人が人や物に対して持つ”憧れ”のような強い思いを、良く描いていると思いました。

 

私、東出さんの舞台、初めて観たのですが、まだ、そんなに慣れていないかなとは思いましたが、美しい清顕がそこに居たので、良かったと思います。本当に、昔から比べると、上手くなりましたねぇ。朴訥として、つらつらとセリフをしゃべる様な演技だったのですが、今は、感情と思いが顔と仕草に入っているので、舞台も良かったです。実は、私、見直しました。東出さん、良かったと思います。

 

周りに、神野さんや首藤さん、笈田さんと、今の演劇界を引っ張る方々がいらっしゃいましたし、若手も上手かったです。私、本当に、今回の三島作品の舞台、大好きです。リピーターチケットを買ってもイイかなくらい思ったけど、もう、今月は1日置き位に、舞台鑑賞が入っていて、その上、映画も観ていて、仕事が大変な事になってるので、もう増やせません。残念です。

 

 

私は、この舞台、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは、三島好きの私には、堪らない作品でした。「金閣寺」も、また観たいけど、これも良かったよぉ。ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「豊穣の海」 https://t.pia.jp/pia/events/mishima/