舞台「贋作 桜の森の満開の下」を観てきました。
ストーリーは、
深い深い桜の森。時は天智天皇が収める時代。ヒダの王家の王の下に、3人のヒダの匠名人が集められる。耳男、マナコ、オオアマ。実は、この3人、本当の匠では無い。耳男は、赤名人と呼ばれる匠と共に歩いていたが、赤名人が亡くなり、その男と間違われて匠として連れて来られてしまった。マナコは、盗賊であり、青名人を襲い殺してしまった為に、その男に間違われて匠として連れて来られた。オオアマは、どういう経路だかは判らないが、匠では無い男だ。
ヒダの王は、3人に娘である夜長姫と早寝姫を守る仏像の彫刻を競い合わせる事を命じる。偽物の3人は、彫刻など彫れるはずもないのだが、3年間で彫れと言われてしまい、何となく、誤魔化しながら過ごしていた。そして3年の年月が経ち、3人の彫刻が出来上がる。
実は、オオアマは大海人皇子であり、兄の天智天皇が亡くなる時期を見計らい、クーデターを起こす為にこの地へ忍んできていたらしい。ヒダの地から鬼を引き連れ、クーデターを起こし、天皇となったオオアマは天武天皇となり、ヒダ王の娘である夜長姫を娶り、地を治め始めるのだが・・・。
後は、舞台を観て下さいね。
考えさせられる内容の舞台でした。野田さんの舞台は、いつも考えさせられちゃうんですけどね。坂口安吾の「桜の森満開の下」をベースに、「夜長姫と耳男」「安吾新日本地理」を混ぜたお話になっています。
人間誰もが欲を持っているんだけど、それが膨らめば膨らむほど、沢山の鬼の力を必要として、それにより大きな力を持つことになれば、その分、不安も膨らんで敵を作ってしまうという、何処までも欲を追求していけば、良い方向にはいかないということを描いていたような気がしました。
大海人皇子の時代、いや、どんな時代でも、力のある者が言うことが真実になってしまい、弱い者は、只、踏みつぶされて、桜の花のように散って消えてしまう。大海=天武天皇が書かせた日本書記だって、何だって、その時代に力を持っていた人間が正義として描かれていて、真実など何も無くなってしまった。素晴らしい仏像を彫っても、それが本当の彫り師の作品では無くても、そんな事は関係無い。名人が作ったものとされて書かれてしまえば、それが真実となってしまう。全てが力で決まってしまう時代の物語でした。
そして、踏みつぶされた人々は、桜の満開の下で消えていくんです。何も残らず、誰の記憶にも残らず、ただ、消えゆくだけ。ヒダという国も、大きな権力の下に消えてしまいます。このパワーゲームに負けた人々の悲しさが、良く描かれていました。
オオアマ役を天海さんが演じていて、誰をも、その力の下に抑えつけていく、強い支配者を表現していました。彼女のオーラは、本当に王のようでした。そして、その周りに沢山の鬼が戯れ、力に群がり、楽しく遊び回る夜長姫は、「桜の森~」の盗賊の妻となった鬼女のようでした。
このお話は、美しくて哀しくて、恐ろしいお話でした。桜の花びらの上に、真っ赤な血が広がって行くイメージが頭の中に広がって行き、人間が何処までも戦争を辞められない性質を持っているのだと言われているようで、とても悲しかったです。
妻夫木さん、深津さん、天海さん、古田さん、秋山さん、大倉さん、藤井さん、村岡さん、門脇さん、池田さん、銀さん、野田さんと、NODAマップの常連さんが演じていて、素晴らしかったです。とても満足出来る作品でした。
私は、この演劇、超!超!お薦めしたいと思います。これは素晴らしかったな。本当に楽しめました。これ程に人間の本質をえぐる様なお話
を、上手くまとめてあるなぁと感動でした。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「贋作 桜の森満開の下」
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