【TIFF2018】「半世界」残酷な人生に向き合って生きていく人々の姿を良く描いていました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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東京国際映画祭2018 19作目は、コンペティション「半世界」です。

 

ストーリーは、

山中の炭焼き窯で備長炭を製炭し生計を立てている紘は、突然帰ってきた、中学からの旧友で元自衛官の瑛介にそう驚かれる。なんとなく父から継いで、ただやり過ごすだけだったこの仕事。けれど仕事を理由に家のことは妻・初乃に任せっぱなし。それが仲間の帰還と、もう一人の同級生・光彦の「おまえ、明に関心もってないだろ。それがあいつにもバレてんだよ」という鋭い言葉で、仕事だけでなく、反抗期の息子・明にも無関心だったことに気づかされる。やがて、瑛介の抱える過去を知った紘は、仕事や家族と真剣に向き合う決意をするが…。

というお話です。

 

 

三重の山中に炭焼き窯を持ち、備長炭を製炭している紘は、妻と中学生の息子がいる。毎日一人、炭焼き小屋に入り、黙々と炭を焼く日々を過ごしていた。ある日、家に入ろうとすると、目の前に小中学校の同級生の瑛介が立っていた。瑛介は自衛隊に入り、忙しく世界中を動いていたはずだが、帰って来たらしい。

 

話を聞くと、自衛隊を辞め、北海道にいる妻と娘と別れ、一人で故郷に帰って来たと言う。紘は、その時は問い詰めず、その内、話しを聞くからなと言って、その日は自分の家に泊め、次の日から、瑛介の実家の補修をするために、もう一人の幼馴染の光彦と一緒に動き始める。

 

家の補修も終り、住めるようになると、瑛介は家に籠ってしまい、全く外に出てこない日々が続き、心配した二人が瑛介を外に連れ出す。瑛介は多くを語らないが、以前とは変わり、やはり何かあったのだろうと二人は感じていた。そして紘は、何もすることが無いなら、炭焼きを手伝って欲しいと頼み、二人で炭焼きの仕事を始める。

 

炭焼きの仕事が凄く大変な事を知り、瑛介は驚き、紘を見る目が変わる。そして紘の息子の明が虐めにあっているという噂を聞き、瑛介は相手と闘う為のコツを明に指導していく。何となく、シックリ行き始めた瑛介を交えた生活だったが、ある日、光彦の中古車販売店にガラの悪い男たちがやって来て文句を言いながら光彦に暴力を振るい、それを見た瑛介は、カッとなり彼らをボコボコにしてしまう。その凶暴な目付きに皆驚き、瑛介は彼らの前から姿を消してしまう。

 

 

瑛介を心配した紘は、瑛介を探し出し、話しをすると、自衛隊での過酷なストレスが彼を蝕んでいて、紘に向かって、お前たちは世界を知らないと言い放つが、紘は、お前の居た世界も世界だし、俺たちがいるこちら側も世界なんだと言う。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

ネタバレしないように解説するのって、大変だわ。

 

どんな世界に生きていても、それがその人の世界なのだし、どこが安全で、誰の人生が楽だなんて言う事は無いんです。誰にでも、残酷な運命は訪れるし、抗っても逃げられない。だからこそ、今出来る事を精一杯やるべきなんじゃないかと思う映画でした。

 

紘は、仕事一筋でやっていたけど妻や息子にも向き合うべきだし、息子の明は無骨で生きるのが下手なオヤジを理解するべきなんです。そんな紘と明を助けているのが、瑛介と光彦でした。幼馴染って、本当に大切にしないとね。

 

この映画、最期まで観てから、もう一度、頭の中でリプレイすると、隠された韻のようなものが沢山あるんです。戸を閉める部分とか、葬儀屋の先輩とか、それは監督がおっしゃっていたのですが、それ以外にも、考えさせられる部分がいくつもありました。

 

紘は、何故一人っ子らしいのに、父親が既に亡くなっているのか。瑛介は母親だけだったらしいのですが、光彦には父親が居て、元気なんです。父親が居るからこそ、彼はいつまでも息子のつもりで、結婚する気も無いんですよね。紘は、早く父親を亡くしたから、結婚、子供も早かったのかなと思いました。早くに一人立ちして、炭焼きを継いだ紘ですが、その仕事は過酷なんですよ。炭を買ってくれる先も減って行き、一人ですべてをやらなければならない紘の仕事は、瑛介の過酷だった自衛隊の仕事に対して、やはり半世界だと思いました。同じか、それ以上に大変なんです。そんな愚痴を家族にも誰にも話さず、黙々と炭小屋で仕事をする紘は、そりゃ、大変ですよ。

 

 

それぞれの運命が、それぞれに降りかかり、それでも生きて行かなければならない。木の枝が折れれば、次の枝が下から出てきて、また木を構成していくんです。そんな移り変わりも、良く描いていました。

 

それにしても、キャストが良かったなぁ。紘役の稲垣さん、父親役なんて難しかっただろうに、こういう父親いるよなぁって思えました。いつも妻任せで怒られて、子供と会話をしようとするんだけど、どーもぎこちなくて、息子に反発されちゃって、シュンってするの。解かる~って思っちゃいました。あるあるですよ。だけど、興味が無い訳じゃなかったと思うのよ。気が回らなかっただけだと思うの。それが、良く表現されていました。

 

瑛介役の長谷川さんは、カッコ良かったなぁ。狂ったように戦っちゃうシーンは、凄かったです。目付きがとんでもなくて、監督も追い詰めたからねって言っていましたが、素晴らしかったです。そして光彦役の渋川さん、大好きです。彼が居るおかげで、調和がとれるんです。まさに二等辺三角形の頂点ですね。本当に上手い役者さんです。そんな彼らを見つめる紘の妻役の池脇さんは、もう言わずもがな、上手いです。監督もおっしゃっていましたが、彼女は生活感を出してくれるので、その場に家族が出来上がるんですよね。

 

肝心な部分が書けないから、どーも消化不良だけど、私の頭の中では完結しているから、公開されたら、ネタバレ入りで再度、書いちゃおうかな。本当に、これ、全体を理解出来ると、なんかこう、じわじわ感動が上がってくるんです。人生って本当に残酷で、何故って思うような事も起こるんだけど、それでも人生は続いて行き、新しい芽を吹いて行くんです。そして、誰もが、それを受け入れて行かなければならない。その場所で止まってなんてしていられないんです。どんな世界に生きていても、戦うのは一緒なんです。そんな事を訴えてくる映画でした。

 

ちょっと、「運命は踊る」という映画と似ているかな。戦場と家族の住む街。もちろん街の方が安全かと思うんだけど、そうでも無いんですよね。そんな事をグッと突き付けてくる感じが、ちょっと似ていました。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。深い映画なので、表面的に見ていると、ふーん、で終わってしまいますが、ちょっと踏み込んでみると、それはもう、深い内容で、とても考えさせられました。公開されたら、ぜひ、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

東京国際映画祭2018 「半世界」

https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP02

 

 

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