【TIFF2018】「氷の季節」生きて行く為に必要なものと不要なものを天秤に賭けた結果・・・。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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東京国際映画祭2018 15作目は、コンペティション「氷の季節」です。

 

ストーリーは、

19世紀半ばのデンマークの田舎に暮らす、ある農家の物語。
厳しい自然環境の中、さらに過酷な冬を迎えるにあたり、農民イェンスは耐え難い選択を迫られる。一家が冬を越すためには、近所の裕福な農家との取り引きに応じるしかない。それは、家族のより良い暮らしと引き換えに、彼自身のモラルと最も大切な存在を犠牲にすることを意味していた。

というお話です。

 

 

19世紀半ばのデンマークの田舎に暮らしているイェンス。イェンスは、自分の娘と、面倒を見ている少年と青年の4人家族だ。厳しい自然環境の中、作物は上手く育たず、今年は不作であり、このままでは冬が越せないかもしれない。ある日、教会に行くと、今までは大地主として前の方に座っていたイェンスだったが、不作が続き、収入も減って、後ろの方の席に追いやられてしまう。

 

プライドを傷つけられたイェンスだったが、席を譲ってくれた隣に住む地主の弟と自分の娘が、目で合図を送るのを見て、隣人との縁談を考え始めると、隣人も同じように思ったようで、後日、娘へ求婚に来る。持参金は無いが手土産と牛一頭を連れて来た隣人に、イェンスは納得はしなかったが、娘が微笑んでいる姿を見て、その求婚を受ける事にする。

 

しかし、後日、フィンランドから移ってきた金持ちの男が、土地の一部を買いたいと言ってくる。その男は、妻を亡くしており、独身だった事に目を付け、土地の一部では無く、全てを買い取って欲しいと話し、娘と結婚すれば、家の保険金も入るから、今、不作な土地でも、利益はあるはずだと持ち掛ける。イェンスの娘は、田舎の娘だが、とても美しかったので、その男も了承し、イェンスの娘と結婚することになる。

 

 

既に、娘と結婚すると約束していた隣人を裏切り、娘を嫁がせたイェンス。批判を浴びるが、金持ちの男に土地も家も引き受けて貰えれば、面倒を見ていた少年と青年も施設に送らなくて済む。それに自分も引退して、安穏な暮らしが出来ると思い、その選択をしたのだった。

 

周りとの協調よりも、家族の幸せを選んだイェンスだったが、段々と、その選択が間違っていたのではという状況に陥って行く。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

この映画、面白かったです。一家の主である父親が、家族の為にと思って選択した道が、ことごとく裏切られて行くという、何とも皮肉で何とも辛いお話でした。観ていて思ったのですが、やっぱり欲なんです。きっと、誰もがこの映画を観れば思うと思うけど、最初に約束をした隣人と結婚していれば、もしかしたら幸せになれていたかもって思うのよね。でも、それも考えもので、この肥沃な土地で、隣人も貧しい状態で、貧しい同士が結婚して上手く行くのかという問題になってくる。気候が良く、毎年、豊作なら良いけど、確約されている訳では無いでしょ。毎年、今年は大丈夫かと心配しながら生きて行かなければならない。

 

 

イェンスは、隣人を裏切り批判される事は解っていても、娘だけじゃなく、家族4人ともが幸せになれる方法を探して、選んだのだと思うんです。娘が好きな男と行ってしまえば、残った自分は引退出来るが、少年たちは養えないので施設に入れるしかない。それを回避する為に、考えて考えて、娘を犠牲にしたと思うんです。でも、娘だって、貧しい生活を続けるよりも、年の差のある男性の後妻に入って、最初は嫌かもしれないけど、相手が良い人なら幸せになれる可能性があるからと思っての事だったとは思うんです。

 

だけど、イェンスの考えは浅くて、結婚相手の母親が、まるでゴッドマザーの様に全てを仕切っていて、イェンスは、全部、彼女の手の内で転がされてしまったように見えました。彼女は、一切動かないんだけど、きっと、裏で考えて手を回していたのは、この女性だったと思うのですが、まぁ、手際が良かったです。あっという間に、その地域の土地を手に入れて、邪魔な人間を排除してしまう。それは、もう、これこそラスボスみたいな感じで、一族の為なら、息子の為ならという強さが感じられました。

 

だから、イェンスの家族を思う気持ちよりも、断然強かったんですよね。この母親、結婚する前は、この土地に住んでいたらしく、フィンランドに嫁いで、そして、息子と一緒に帰って来たようなんです。だから、イェンスの娘と同じように、貧しい家から嫁いで、強く生きてきたんじゃないかなと思いました。

 

 

考えれば考えるほど、深い映画で、私は、この映画、お薦めしたいと思います。本当は、超!としたいところなんだけど、日本公開が決まっていないので、書けません。公開して欲しいなぁ。この作品、良く出来ていたし、面白かったんですもん。サスペンス要素もあり、楽しめる作品なんだけどなぁ。公開してくれる事を祈っています。ぜひ、機会があったら、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんでくださいね。カメ

 

 

東京国際映画祭2018 「氷の季節」

https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP03