【TIFF2018】「ザ・リバー」父親の考え方は社会から逃げているとしか思えませんでした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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東京国際映画祭2018 8作目は、コンペティション「ザ・リバー」です。

 

ストーリーは、

カザフスタンの田舎の村に一家には5人の息子がいる。東洋の伝統に従い、長男のアスラン(13)が父親の世継ぎとして全ての仕事を任され、権限を与えられている。ある日、アスランは弟たちを連れて川に泳ぎに行く。幸せなひととき。だがそこから人生は一変する。いとこだと名のる男カナトが突然現れ、一家の安定した暮らしが大きく崩れ始める。

というお話です。

 

 
乾いた広大な土地にぽつんと建つ家。そこには夫婦と5人の息子が住んでいます。父親は全てに対して実権を握っており、5人の息子は、父に言いつけられた仕事を毎日こなして過ごしていました。父親は、近代化は毒だと思っており、息子たちを守る為に人里離れた土地に家を作り、外から隔絶したのでした。
 
ある日、仕事に疲れた息子たちは、家から少し離れた所まで探検してみると、大きな川がある事に気が付きます。彼らは、時間が空くと川に行き、遊ぶようになります。
 
そんな毎日に満足していた息子たちでしたが、ある日、彼らの従兄弟にあたるカナトが訪ねて来た事から変わって行きます。カナトは、近代化の申し子のように、おしゃれな格好をし、タブレットでゲームを楽しみ、仕事などやりません。そんなカナトに新しい世界を教えられ、それまでの自分たちの生活に疑問を、持ち始める息子たち。
 
長男のアスランは、父親に長男なんだからと弟たちの管理を任されているのですが、段々と反抗し始める弟たちに手を焼き始めます。そんな不協和音がし始めた頃、川へ遊びに行った息子たちとカナト。カナトが向こう岸まで泳ぐと言う声を聞いてしばらくして、カナトがいない事に気が付きます。消えてしまったカナトは、流されて死んだのか、それとも…。従兄弟を見殺しにしたと思った息子たちは、段々と精神的に不安定になり…。後は、映画を観て下さいね。
 
 
美しい自然の中で、近代化というものを全く知らず、土を捏ねてレンガを作り、水を汲んできて手洗いの桶に入れと、まるで時間が止まったような場所で暮らしていた13歳の長男アスランを筆頭に、子供たちは無垢なまま育ってきたのですが、いきなり、スマホとかタブレットなどを手にして、それを何に利用するのかもわからず、驚くばかり。カナトが来たことで、TVのアンテナも調整してもらい、TVを見ると、画面の中には別世界が写っている。どんなに驚いだろうと思います。
 
そんな彼らでしたが、善と悪という事は良く解っており、悪い事をしたら怒られることを知っていたので、カナトが居なくなった事も言えず、でも、どうしたら良いのかわからず、どんどん苦しくなって行きます。罪の意識に苛まれ、その苦しみから逃れようと、もがいて、兄弟同士でぶつかり合います。その姿が、何とも可哀想で、助けてあげたくなりました。
 
こんな事になったら、もっと親が話を聞いてやる必要があると思うのですが、この親、息子の為にと言ってこんな風に隔離しているくせに、全然、子供の事を解っていないんです。何がしたくて、こんな隔離するようなことをしていたのか、親を問い詰めたくなります。まぁ、観ている感じでは、貧しくて、父親に5人を養う十分な働きが無かったからではないかとは思いましたが、カナトの服装や様子を見る限り、都会に出て働けば、十分に稼げたんじゃないかなぁと思えて、という事は、父親は都会で何かに疲れて、この荒廃した土地に流れてきたのかなと思いました。
 
 
それにしても、息子たち、可哀想だった。長男がいて、次男三男は双子なんです。そして、その下に小学校低学年くらいの子と、幼稚園くらいの子がいるんです。でね、その双子の子たちが、あまりのストレスだったのか、カナトが居なくなって、具合が悪くなり、背中に湿疹まで出てきているのが表現されていて、ちょっと驚きました。そんなに怖かったんだね。可哀想に。
 
カナトという男の子も、凄く変な子で、文化の象徴のような存在ではあったと思うのですが、性格も悪いんですよ。彼の悪戯のせいで、みんな苦しむことになっちゃって、ムカ付きました。

 

でもね、私は、近代化から隔絶すれば危険はないという父親の考え方には共感出来ませんでした。危なくないように、近代化している部分もある訳だし、上手く取り入れていくのが人間の進化だと思うし、知識だと思うんです。ただ、拒絶するのは、逃げているだけのように思えて、この父親、ダメじゃんと思ったのは私だけかしら。何事も共存するべきでしょ。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。全体的に、とても良く出来ていたと思いました。この監督の作品の3部作があり、この映画は、その3作目だそうで、前の2作品が観たくなりました。美しい映像と、細やかな心情の描き方は、素晴らしいと思いました。日本公開は、どうかなぁ。難しいかも知れませんが、また映画祭などで観れそうな良い映画でした。ぜひ、機会があったら、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんでくださいね。カメ

 

 

東京国際映画祭2018 「ザ・リバー」

https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP11