舞台「出口なし」を観てきました。
ストーリーは、
とある部屋に、ボーイに案内されて3人の男女がやって来た。ここには窓も無く、鏡も無い。
何の接点もない3人は、それぞれの素性や過去をぽつりぽつりと語り出す。
ただひとりの男はガルサン。反戦主義を掲げる新聞社のジャーナリストだ。戦争が始まると徴兵を拒否して逃亡した。
郵便局員のイネスは、他人を苦しめずには生きられないと話す。恋愛のもつれから、愛する人にガス栓を開けられた。
年の離れた裕福な夫をもつエステルには、若い恋人がいた。だが彼女の許されざる行動は、恋人を絶望へと突き落とす。
どうやら三者三様の凄惨な過去が、彼らをこの部屋へと導いたようだ。互いに理解し合う気もなく、むしろ傷つけ合うような鋭い言葉が飛び交う。出口のない密室から逃れようもない今、自分という存在を確認する術は、互いを苦しめ合うことでしかないのか。
だが、そもそも自分が何者であるかを知る必要などあるのだろうか。
文字通りの「地獄」で彼らが見出だすものとは・・・。
というお話です。
この舞台、とても面白くて楽しめました。密室劇で、3人の会話だけで進んで行くのですが、最初は、何故、ここに、こんなに関係の無い人々が集まっているのか、全く訳が分からないんです。それぞれに口を開き、何故か、自分が今までに体験してきたことを話して、文句を言うばかり。その話を聞いていると、あれ?殺された?どういうこと?となって行くんです。良く良く、話を聞いてみると、死にたくなかったのに、殺されてしまった人々が、ここに集まっている事に気が付きます。そう、死人が集まっている部屋だったんです。
彼らは、それぞれに言い分があって、確かに、自分にも悪い所はあったかもしれないけど、でも、何で、こんな部屋に来て文句を言い合わなきゃいけないのか分からず、何なのかしらとそれに対しても、文句を言っている。不思議な光景でした。
私が思うに、作者は、きっと理不尽な死に方をした人達って、きっと言いたいことがあったんだろうなぁと思って、それを言わせてあげる為に、この部屋という設定を作って、その部屋に、死んだ人々を入れてみたんだろうなぁと思いました。サルトルって、面白いこと考えますよね。哲学者であり、小説や戯曲も書いた方だから、本当に切り口が面白く、他の方の考える事とは違っていて、考えさせられるものが多いです。
今回は、大竹しのぶさん、多部未華子さん、段田安則さんが演じていて、上手いのは判っているのですが、それでも唸ってしまうほど惹きつけられて、やっぱりイイなぁと思ってしまいました。演出は小川絵梨子さんで、私はとても正統派の美しい演出をされる方なので大好きな演出家の一人です。小川さんの演出は、観ていて、気持ちが安定するんです。
この作品は、観て頂かないと良さが伝わらないかも知れませんが、この題材は、良く舞台化されるので、一度、観てみる事をお薦めいたします。この公演は、既に終わってしまいましたが、来年の1月末から、横浜芸術劇場で、白井さんの演出で、同じ題目が上演されます。私は、そちらも観に行く事にしました。同じ題目で、出演者、演出家が変わると、どうなるのか、とても楽しみです。良く、シェークスピア劇は、色々な方が演られるので、観れると思うのですが、サルトルの戯曲で2タイプ観れるのは、あまり無いので、楽しみです。もし、気になったら、ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「出口なし」新国立劇場 http://www.siscompany.com/deguchi/gai.htm
「出口なし」神奈川芸術劇場
http://www.kaat.jp/detail?url=huisclos2019
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