「きみの鳥はうたえる」を観てきました
ストーリーは、
函館郊外の書店で働く“僕”と、一緒に暮らす失業中の静雄、“僕”の同僚である佐知子の3人は、夜通し酒を飲み、踊り、笑い合う。微妙なバランスの中で成り立つ彼らの幸福な日々は、いつも終わりの予感とともにあった。
というお話です。
函館郊外の町で暮らす”僕”。家賃を安くする為にルームシェアをしていた。相手の名前は静雄。彼は失業中で、そろそろ失業保険も切れるようだ。僕は、書店でアルバイトをしているが、イマイチ、ヤル気が出ずに、無断欠勤をしてしまったりする。クビになりそうだが、店長が良い人で、続けられている。
その書店の同僚で佐和子という女性と知り合い、段々と仲良くなって行くのだが、彼女は、どうも店長と付き合っているっぽい。好意を持ちながらも、今一歩踏み込まずに、友達として交流し、静雄と暮す部屋にも招くようになる。
酒を飲んだ後、つい、佐和子とSEXをしてしまうが、付き合うという事では無く、何となくだった。そんな僕と佐和子の関係を気にしない様子で、僕と佐和子と静雄の関係は微妙なバランスで続いていた。性格的には、佐和子とは静雄の方が合っているように見えていた。
友達だと思いながらも、佐和子への思いが膨らんで行き、何かモヤモヤしてしまう僕だったが、もし彼女へ告白したら、今の関係が崩れてしまう気がして、どうしても言い出せない。そんなある日、静雄の母親の具合が悪いらしく、連絡が入り、静雄は母親の病院へ行くことになる。残った僕と佐和子だったのだが・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、微妙な人間の心理が、とても良く表現されていて、観ていて、「くぉ~、上手いなぁ~」と唸ってしまいそうになりました。ぼんやり観ていると、別に、何と言う事も無く、普通にダラダラと生活している男と女の姿だけなんです。でもね、人の動きとか目線を見ていると、何とも微妙な心理を表していて、悔しいほど上手いんです。
仲間として知り合って、この人イイなぁと思っても、それが恋だと気が付かない時期ってあるでしょ。そして、それが続いて行くと、何となくアイツの事が好きなのかもって感じ始めると思うんだけど、やっと気が付いた時には、その気になっていた彼女の方は既に他に目が移っていて、あれ?って事になっていたりするのよね。そんな時、気持ちを打ち明けるべきか、タイミングを逃しちゃったなぁと思って諦めるのか、色々な考え方があると思うけど、そんな微妙な時間と人の心の動きを、この映画は良く描いているんですよ。
好きなんだけど、それを言葉に表す事が出来ない事って、多いと思うんです。だって、相手にその気が無いかも知れないし、もし上手く行っても、その後、どうしたら良いか分からないし、恋愛って難しいよね。特に、友達だった関係から恋人になろうとすると、とっても勇気がいると思うんです。だって、もし上手く行かなかったら、それまでの友達の関係も壊れてしまいますもんね。
主人公の僕は、イイ年なんだと思うけど、どうしても関係を壊す事を恐れて、行動に移せないんですよ。この雰囲気、とっても解かるから、うーん、辛いよねぇって思っちゃいました。でも、この状況って、現実にも、よくある事だと思うんですよね。誰もが、こういう事って、悩むことだと思うんです。その状況が、とっても良かったなぁ。
僕役の柄本さん、やっぱり上手いですねぇ。彼の状況も分かるし、彼が”ああ~!!”って言って切れる場面も凄く良く分かりました。うん、そうなるよねぇ。アルバイト先の書店で、ある同僚が、自分は正しい事をしているんだという感じでチクったり、噂話をこれ見よがしに話す場面があって、それに僕がキレて、男性を殴る場面があるんです。マジで、こういう奴っていますよね。自分は良い子で、上司にも好かれていて、周りと上手くやってます的な感じで、カッコつけて要領良くやっているつもりの奴、本当にムカつくのよ。はぁ?てめぇが何様なんだよって、きっと私も言ってしまうだろうと思いました。
静雄役の染谷くんと、佐和子役の石橋さんも、上手かったです。この、3人が一本のシーソーに乗っているようなバランスが、何とも言えずに、良いなぁと思いました。うん、良かったです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。本当は、超を付けたいけど、賛否が分かれると思うんですよ。この微妙なバランスを良いと思うか、観た後、何だか全く分からないという方も出てきそうな気がして、何とも言えません。私は、この人間の雰囲気が大好きでした。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。![]()
![]() |
きみの鳥はうたえる (河出文庫)
702円
Amazon |
![]() |
海炭市叙景 (小学館文庫)
669円
Amazon |








