「愛と哀しみの果て」を観ました。何度目かしら。でも、久しぶりです。ロバート・レッドフォードさんが引退を宣言されたというニュースを聞き、今一度、これを観なくちゃと思ったんです。
ストーリーは、
デンマークの資産家の娘カレンはスウェーデンの貴族と結婚し、ケニアへ渡る。コーヒー農園を経営することになったカレンは様々な困難にみまわれる。彼女はいつしか英国の冒険家と愛し合うようになり・・・。
というお話です。
小説家となったカレン・ブリクセンは、自分のアフリカでの生活を書きながら、懐かしい日々を思い出していた。
1913年、デンマークで裕福な家に生まれたカレン・ディネーセンは貴族では無かったのでその地位を求め、友人のブロア・ブリクセンは男爵家に生まれたが資産が尽きて貧困だったため、お互いの利益を考え、「便宜上の結婚」をする事にする。そして二人はアフリカに移住し、酪農場を始めることを計画する。
イギリス領東アフリカへ着いたカレンは、先に付いていたブロアと合流し、酪農場を始める土地へ向かうと、そこにはコーヒー農場が広がっていた。ブロアは酪農場では無く、コーヒー農場を勝手に買ってしまったのだ。当初の計画と違ってしまい、思うような経営が出来ない上、ブロアは興味を示さず、家にも寄り付かない。便宜上の結婚とはいえ、カレンはブロアを夫と思っており、ブロアが他の女性の所に行く事に悩み、その上、他の女性からもらった梅毒を、カレンにうつしてしまう。
第一次世界大戦中だった為、戦地への物資輸送をブロアがカレンに依頼するが、そんな危ない仕事を引き受ける人間はおらず、カレン自ら戦地に物資を運ぶことになってしまう。戦地にカレンと原住民で物資を運び、感謝されることになるが、夫のブロアは感心を示さない。その後、家に戻ると、カレンは梅毒が悪化し重病になってしまう。デンマークに戻るしかなくなり、農場はブロアに任せる事となる。
カレンは梅毒が回復し、アフリカに戻ってくる。戦争は終わり、情勢は安定していたが、カレンとブロアの結婚は破綻しており、カレンはブロアに出ていって欲しいと話す。そして、カレンは、アフリカに来てから知り合い、友人として付き合っていたデニスとの仲が深まり、恋人となっていく。しかし、デニスは誰かに縛られることを嫌い、自由に生きる事を好む男性だった。カレンは、デニスを思いながらも、自分は自分のやるべきことをすると決め、コーヒー農場を経営し、彼女の土地近くに住んでいたキクユ族の子供たちに学校を作って読み書きを教え始める。コーヒーも実を付け始め、充実した生活を送れるようになれると思うのだが・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、1986年に日本公開されたそうで、アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚色賞等々、沢山の賞を貰った作品です。主役のカレンをメリル・ストリープ、デニスをロバート・レッドフォードが演じていて、彼らが、まだ若いんです。メリルなんて30代前半だと思うのですが、輝くようなんですよ。
このお話、凄く良いんです。今観ると、凄く良く分かると思うのですが、当時は、あまり日本では理解されなかったんじゃないかな。女性が男性と対等の立場を望む部分が多々あるんです。そして、何処までも”女のくせに”って言われるんですよ。それでもカレンは引かずに、前に出て行って、対等に扱って貰えるように頑張るんです。男の何倍も働いて、頭を使ってと、動いていくんです。どう見ても、彼女の方が男たちよりも能力があり、経営だって、行動力だって、負けていないんです。そんな彼女を正面から見ているのがデニスで、彼には解っているんです。
デニスは自由に生きる事を望む男性で、自分と対等に生きれる女性であるカレンを愛するのですが、やっぱりカレンは女性なので、デニスと一緒に居たいと思うんです。だから、どうしても相容れる事が出来なくなってしまう。すっごく解かるなぁと思いました。女の愛と男の愛と違うんですよね。
そしてこの映画のテーマは、人間は平等であるという事。キクユ族が出てくるのですが、原住民の奴隷と思われていて、白人は、彼らの住むところも取り上げ、労働する奴隷としか見ていないんです。でも、カレンは、原住民の彼らと一緒に働き、生活をして行くんです。最初は、彼女も、黒い彼らを汚いモノのように扱い、手袋をさせてから家の中の物を触らせるのですが、その意識が変わって行くんです。
カレンは、アフリカに来た時は、デンマークの金持ちのお嬢様なので、上流階級の人間としての目しか持っていないのですが、アフリカでの生活で、沢山の人間や、沢山の事を目にして、段々と生きる事知って行くんです。
自分は貴族の称号を持っていなかったので、それさえ手に入れれば、名誉も地位もお金も手に入ったことになるので、幸せな生き方が出来ると思って新天地に来たのに、そこでは、男女差別で思うように動けず、名義上の夫は浮気していても誰にも咎められず、何かを訴えようと思うと”女が来るところじゃない。”と言われてしまう。そんな彼女を優しく助けるのは、原住民のキクユ族の人々で、彼らは奴隷の様に扱われているのにとても優しい。同じ人間なのに、何故、こんなにも違うのかと言うことが、この映画では、良く描かれています。
そんな時代の中で、強く生きて、差別に抗い、一人で立ち上がって前に進む女性がカレンです。話の中で、カレンとデニスは、深く愛し合っているんです。二人でアフリカの大地を周り、動物たちを観察し、寛いでいるのですが、その中で、カレンの髪を、デニスが洗ってあげる場面があるんです。それがね、凄く素敵なんですよ。これは、一度で良いから夫にして貰いたいと思っている事なのですが、家のお風呂やベランダではやって貰ったけど、やっぱり違うのよねぇ。草原とかでやって欲しいのよ。せめて、広い庭でやって欲しい。どこかで出来る所、無いかなぁ。
この映画、今こそ、観るべき作品なんじゃないかなと思うんです。やっと社会に女性が認められ始めて、男と同じ土俵で戦えるようになってきた今、昔は、こんな風に必死で女性は戦っていたんだぞと思いだす、良い作品だと思うんです。そして、実は、この作品を観ていてLGBT問題もあるかなと思いました。デニスの友人の男性(名前を忘れちゃった)なのですが、彼はきっとデニスが好きだったんだと思うんですよ。でも、この時代だから、良き友人としてずっと彼の横に居たのかなと思えるんです。そして人種差別問題ですね。色の違いで差別をするなんて、今の時代、在ってはいけない事だと思います。そんな問題も良く描かれているんです。
この映画を、只の恋愛映画だと、当時は宣伝していたのかな。これは恋愛映画じゃないと思います。表向きは恋愛を描きながらも、社会問題に切り込んでいる、素晴らしい作品なんですよ。本当は、性病の問題、戦争の問題、自然破壊の問題とかもあるのですが、そちらまで切り込んでいると、ちょっと長くなるので、ここら辺で止めておきますが、こんなにまとまっていて、沢山の問題を描いている作品って、今時無いでしょ。これがアカデミー賞を貰うのは当たり前だったと思うのですが、きっと、その問題の半分くらいしか理解されていないんだろうなぁ。残念です。
きっと男性には、”女のくせに。”とか”女なんだから。”と言われてきた女性の気持ちは解らないだろうなぁ。私、建築業界で目一杯言われてきたので、このカレンの気持ち解かるんです。ホント、何度歯ぎしりした事か。殴りたくても力は男の方が強いからどうしようもないんですよね。今は、どんなに文句を言われようと、自分の意見を言えるほどメンタルを強くしたので楽になりましたけど、まだまだ女性は前に出れませんよね。頑張りましょ。
私は、この映画、超!超!超!お薦めです。でも、古い作品なので、映画館では観れません。でもね、これ、本当は大画面で観たかった。実は、私、大画面では観ていないんです。TVで観て、DVDを購入して観ているので、大画面で観たらステキだろうなぁ。空から見たアフリカの大地や、動物たち、セスナ機が滑空する青空など、本当は、大画面で観たかった。その内、VRで観れるようになったら、目の前一杯に草原が広がるようになるかしら。楽しみです。ぜひ、一度、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんでくださいね。
![]() |
愛と哀しみの果て [Blu-ray]
1,391円
Amazon |