「ウインド・リバー」を観てきました。
ストーリーは、
ネイティブアメリカンが追いやられたワイオミング州の雪深い土地、ウィンド・リバーで、女性の遺体が発見された。FBIの新人捜査官ジェーン・バナーが現地に派遣されるが、不安定な気候や慣れない雪山に捜査は難航。遺体の第一発見者である地元のベテランハンター、コリー・ランバートに協力を求め、共に事件の真相を追うが・・・。
というお話です。
アメリカ中西部ワイオミング州のネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。深い雪に閉ざされた山岳地帯で、ネイティブアメリカンの少女の死体が見つかった。第一発見者の野生生物局のハンター、コリー・ランバートは、血を吐いた状態で凍り付いた少女が自分の娘エミリーの親友であるナタリーだと知り、心を痛める。
コリーは、部族警察長ベンと共にFBIの到着を待ち、大幅に遅れてやってきた新米女性捜査官ジェーン・バナーを迎える。FBIから派遣されたのはたった1人。死体現場に案内されたジェーンは、その不可解な状況に驚く。現場から5キロ圏内には民家がひとつもなく、ナタリーは薄着で裸足だった。前夜の気温は約-30度。肺が凍って破裂するほどの極限の冷気を吸い込みながら、何故ナタリーは雪原を走って死んだのか。
監察医の検死結果により、ナタリーが何者かにレイプされ、雪原の中を逃げて死亡したのは明白だった。しかし、直接的な死因は肺出血であり、法医学的には他殺とは認定出来ない。殺人事件としての立件が出来ず、捜査が行き詰まる中、コリーに捜査の協力を依頼する。殺人事件としての捜査は出来ないが、このままほおっておく訳にはいかない。
当日、ナタリーは恋人と会っていたことを聞き出し、その恋人が採掘場の警備員・マットだった事を知る。捜査途中で、雪山の中に不自然なスノーモービルの跡を見つけたコリーは、その跡を追って行くと、そこには無残に横たわるマットの遺体が鳥に啄ばまれていた。マットの勤務先の同僚の話を聞かなければと、コリーとジェーン、ベン他、保安官4人を引き連れて山中の勤務先の宿泊用トレーラーへ行き、話をするのだが、同僚の話は不自然で信用が出来ない。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、凄く深い映画でした。良かったです。でも、賛否が分かれるかも知れません。深い部分が理解出来る人と出来ない人とがいると思うからです。映画の表面的な内容は、少女がレイプされて死に、その犯人を探して行くというサスペンスなのですが、それは表面的な事件の話なんです。この映画が描きたかったのは、その地域の特性とアメリカの先住民ネイティブアメリカンがどういう状況に置かれているかという問題なんです。
アメリカ先住民のネイティブアメリカンは、ワイオミング州の山岳地帯に、アメリカ政府により無理矢理押し込められたんです。アメリカ政府はハッキリ言って移民たちですよね。今、トランプ大統領が移民は許さないと言っていますが、自分たちが本当は移民なんです。そして先住民を狭くて酷い状況の地域に押し込めた。酷い事ですよね。寒くて何も無く、そんな地域なので発展もしないんです。誰もが不満と閉塞感により、段々と自爆蜂起的な感じになり、堕落して行く者、酷い犯罪に走る者が出てきてしまいます。そんな中で、未来を夢見ている少女たちが犯罪の犠牲になってしまうんです。
そんな状況の中で暮らしている彼らのそれぞれの気持ちが、映画の中で描かれているのですが、一体、誰が悪いのか。もちろん罪を犯す人が悪いのですが、そういう状況に追い詰めてしまっているのは誰のせいなのか。それを、事件を追って行く捜査官とハンターの姿の裏に見せているんです。その裏の深い部分を考えると、辛くて、悲しくて、でも、どうしてあげようもない状況に悔しくなりました。だってね、ネイティブアメリカンの人達は、真摯に生きているんです。そんな酷い所に、無理矢理住まわされても、それでも子供を産んで、育てて、その地域から無事に巣立ってくれることを願っているんです。でも、巣立つ前に落とされてしまう。酷い事です。
ハンターのコニーは、白人ですが、ネイティブアメリカンの女性と結婚し、子供を二人持ったのですが、上の娘が3年前に、このナタリーと同じような感じで亡くなっており、犯人も解らずじまい。直接の死因はナタリーと同じなので、殺人では無いんです。それが原因で妻と別れて、一人で暮らしているのですが、いつまでも娘の事が忘れられないんです。そりゃそうですよ。憎む相手がいれば、何とか耐えられるかもしれないけど、全く判らず、事故と処理されてしまうのでは、どうしようもないですよね。コニーも、とても可哀想な人でした。コニーを演じているのは、私の大好きなジェレミー・レナーさん。「ハート・ロッカー」で大好きになったのですが、やっぱりカッコいいですね。ホーク・アイの彼も好きだけど、今回の白い防寒服を着て、獲物を仕留める姿はステキでした。
FBI捜査官のジェーンをエリザベス・オルセンが演じていて、アベンジャーズコンビだわって思って、嬉しくなりました。スカーレット・ウィッチとホーク・アイ、久しぶりに観たなぁ。うん、嬉しいっす。でも、今回は、一緒に捜査をする捜査官とハンターでした。このネイティブアメリカンの居留地には、FBIも力を入れていないんでしょうね。来るのも一苦労だし、酷い扱いだなと思いました。実際にそうなんだと思いますよ。同じアメリカ人なのに、酷いと思いませんか。きっと先住民の彼らが文句を言っても聞き入れないんでしょうね。
アメリカのいつまでも解決出来ない問題を、鋭く深く描いていたこの作品、本当に良かったです。観た後にも、ずーっと考えてしまって、どうにかならないのかしらと思ってしまいました。日本は、先住民という形の人達は居ないけど、北海道のアイヌの方々は、北海道の先住民ですよね。今、純粋なアイヌの方っていらっしゃるのかしら。悲しい事です。「ゴールデン・カムイ」のアニメや原作漫画を見ていて、ちょっと、このネイティブアメリカンの方々と重ねてしまいました。
そうそう、一つ、書き忘れました。最後の方で銃撃戦があり、凄い撃ち合いで、コニーもハンターとして、カッコ良く活躍するのですが、この銃撃戦、最近では観ないような、凄い戦いでした。良かったなぁ。気持ち良かったです。近距離での撃ち合いなので、もう、凄いんですよ。それも、人数が多いので、楽しめました。この部分、凄く良かったです。お楽しみにね。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。但し、普通のサスペンス映画として事件の捜査だけを観るのでしたら、それ程、感動は無いと思います。でも、現代のネイティブアメリカンの現状を見て、その歴史を考えてくださるのでしたら、とても考えさせられる作品だと思います。観る人を選ぶ映画ですので、もし、理解したいと思ったら、ネイティブアメリカンの歴史を少しでも読んでから行かれることをお薦めいたします。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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