【演劇】「消えていくなら朝」家族でも、言ってはいけないこともある。全てが許される訳では無い。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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舞台「消えていくなら朝」を観てきました。

 

ストーリーは、

 

家族と疎遠の作家である定男は、五年ぶりに帰省する。作家として成功をおさめている定男であったが、誰もその話に触れようとしない。むしろその話を避けている。家族は定男の仕事に良い印象を持っていないのだ。定男は切り出す。

「......今度の新作は、この家族をありのままに描いてみようと思うんだ」

家族とは、仕事とは、表現とは、人生とは、愛とは、幸福とは、親とは、子とは、様々な議論の火ぶたが切って落とされた。

 

実は、定男が5年ぶりに帰ってきて、18年ぶりに家族全員が揃ったのには訳があった。父親が母親と離婚すると言い出したのだ。この家には、昔から、色々な問題が山積していた。母親が、ある宗教を信仰しており、長男や次男を連れ回ったりして、家族の中には、言いたくても言えないという、沢山の問題があった。末っ子の長女は、父親に可愛がられており、満足しているかと思われたが、父の愛を一身に受け、窮屈だったらしい。そんな思いが、今、解き放たれ、それぞれの思いが交錯してしまう。

 

 

父親は離婚すると言うが、母親は宗教の教えで離婚は出来ないという。母親が不倫をしていると訴えるが、母親は、一緒に居るだけで触れた事は無いと言い張っている。長男は、母親に連れられ、宗教の中で結婚し、宗教にどっぷりハマっていたのだが、不倫をしてしまい、離婚をし、宗教を破門になっていた。

 

長女は、父親にベッタリで、良い年齢になっても彼氏も持ったことが無く、友人も少ないようだ。旅行へ行くにも父親と一緒で、それが苦痛にもなっているようだった。

 

定男は、ある事がきっかけで、少し家族と距離を置くようになり、家を出て作家となり、現在はバツイチで恋人と仲良くやっている。しかし、どうしても家族との事が心に引っかかっているようだった。

 

そんな家族が久しぶりに集まり、本音をぶつけあった先、その家族に何が起こるのか。何が残るのか。

 

というお話です。

 

 

ん~、シビアなお話でした。これ、兄弟がいる人には、凄く解るんだろうなぁ。私、一人っ子なので、誰とも比べる事も無く、小さい頃は祖父母の所に預けられていたので、この舞台の中で起こる、家族間の嫉妬や妬みなど、理解は出来ますが、それほど、親身にならなかったんです。でも、これ、当事者だったら、辛かっただろうなぁ。

 

嫌いだけど家族だし、憎いけど家族だし、捨てたいけど捨てられないし、この微妙な距離感が、何とも上手いなぁと思いました。定男は、子供の頃から、自分だけ両親から必要とされていないと感じ、それが心にシコリとなって残っていて、それでも我慢しているんです。言ってしまったらおしまいだと思って、黙っているんです。でもね、話し合っている内に、段々と、兄妹もそれぞれ心に溜まっていたものを吐き出し始め、父親も母親も、言い始めてしまう。

 

良く”雨降って地固まる”って言うけど、大雨降らせちゃったら、崖崩れが起きて、元に戻らなくなるんです。だから、それだけは、いくら家族でも言っちゃダメだよって事ってあるんです。辛いのも解るし、解って欲しいと思うのも解るけど、でも、それだけは言わないで欲しいって事があるんです。

 

 

お母さんが宗教にハマっているのがとっても恐いんだけど、小さい子供を連れて、色々な家を訪問して、本とかを売っていたらしいんです。あの「も〇みの塔」みたいな事だと思うんだけど、それを大人になって、”イヤだった。”って言うんですけど、それは言うべきだよね。だって、あんな子供をダシにして物を売りつけるなんて、酷い押し売りだと思いませんか。子供にしてみれば、迷惑だし、恥ずかしいよね。次の日に学校で虐められたと訴えていて、可哀想でした。

 

それにしても兄妹って、難しいんですね。ひとりっ子からしてみれば、頼る人が居たらきっと心強いだろうし、一緒にどこかに出かけたり、楽しそうだなぁと思っていたけど、それだけでは無いみたいですね。うん、考えさせられました。確かに、同じ人間から生まれているかも知れないけど、同じ人間では無いんですもんね。それぞれに違うんだから、難しいのは当たり前なのかも知れません。

 

鈴木浩介さんが主役の定男だったんですが、彼はやっぱり上手いよなぁ。どんな役でもこなしてしまうから、驚きます。良い人も悪い人も、イケメンもブザイクも演じてしまうから、本当に笑ってしまいます。私、「ガラスの動物園」で彼の舞台を始めてみて、それから大好きになりました。彼は舞台でとっても雰囲気があるんです。彼のセリフで空気がピタッと止まることがあって、そのタイミングといい、話し方といい、んにゃ~、上手いなぁ~って思ってしまう。

 

今回は、高橋長英さん、梅沢昌代さん、山中崇さん、高野志穂さん、吉野実紗さん、が出演されていて、皆さん、もう、ごりっごりの舞台俳優さんなので、観ていて楽しかったです。この舞台、面白かったなぁ。

 

 

私は、この舞台、お薦めしたいと思います。凄く楽しいという舞台ではありませんが、とっても考えさせられる、問題作だったと思います。それに、役者さんたちがベテランの方ばかりなので、安心して観ていられます。そう言えば、観に行った日に、”山田洋二監督”がいらしていました。上品なおじいちゃんだなぁと思って見たら、山田監督で、ビックリ!ステキでした。この舞台、ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

消えていくなら朝http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_009662.html