フランス映画祭「To the Ends of the World」を観てきました。
ストーリーは、
1945年、インドシナ半島。若い兵士、ロベール・タッセンは、前線で兄が目の前で無残に虐殺されるが、本人は何とか生き延びていた。
復讐に燃えるロベールは、暗殺者たちを探す極秘任務に一人で出発する。しかし、若いインドシナの女性マイに出会い、全てが変わっていく・・・。
というお話です。
インドシナ領、第二次世界大戦末期、1945年3月、フランス軍と日本軍が共同警備の形で治安を維持していたが、日本軍が明号作戦と銘打ったクーデターを起こし、インドシナ領を日本軍の支配下に治めた。そしてフランス領だったインドシナは、植民地支配を終結し、ベトナム、カンボジア、ラオスという国が誕生する。それから直ぐに終戦となり、日本軍は降伏。フランスは、再度、インドシナ領を支配下に治める為に戦いに出るが、ゲリラに対して戦うフランス軍が足りなかったため、本国から軍が到着するまで日本軍が代わりに治安維持に務めた。ベトナム解放軍がヴォー・グエン・ザップ将軍により結成され、大規模な戦争となっていく。
フランス軍のロベールは、家族をこのゲリラたちに惨殺される。兄は首を切り落とされ、義姉は腹を割いて胎児を出されその退治を身体に縫い付けられるという蛮行を目の前で見せられ、命からがら、死体の中に身を隠して逃げ延びた。ボロボロのロベールを地元農民たちが助け出し、看病をしてくれる。回復したロベールは、軍に戻り、ゲリラたちに復讐すべく、捜索を始める。
仲間と共に森の中を散策し、ゲリラを仕掛けて来るインドシナ人と戦いながら、その首領である人物を殺そうと尋問を繰り返すが、彼らは、自分たちの自由の象徴である彼を売ることはない。
探しても見つからない毎日のなか、ロベールは、インドシナ人の優しいマイという女性に惹かれ始める。売春婦の彼女に自分だけのものになって欲しいと告白するが、私は自由だから出来ないと断わられてしまう。そんなある日、首領が仲間のナイフで刺されて死んだという情報が入ってくるのだが・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、私、こういう難しい歴史を何も知らずに観てしまいまして、知っていたらもっと楽しめたと、ちょっと後悔しております。また観に行こうかな。この映画は、フランスでも今まで描かれなかった”フランスの恥部”という部分らしいです。日本でも、あまりこのベトナム戦争の前置きのような戦争、知らないですよね。でも、日本は凄く関わっている事なんです。日本人が知らなくてどーすんのって言うような思いに駆られました。
まず、インドシナ領=ベトナム、カンボジア、ラオスの地域ですが、元々はフランスの植民地だったんですね。そこを日本軍が解放して自由宣言してしまった後に、またもフランスが支配下に治めようと戦闘を始めるのですが、既にゲリラ熱が上がっていて、敵も強いんです。で、この戦争が泥沼化して行くと言う事なんです。だからベトナム戦争は、アメリカ始まりでは無く、フランス始まりだったんだけど、結局、フランスは撤退することになり、アメリカが戦うことになってしまったと言う事なんです。
そんなゲリラたちの英雄を捕まえる為に、ロベールは森の中に分け入って、ゲリラを捕まえて尋問するけど、誰も首領がどこにいるか言わないのよ。自由の象徴である彼を絶対に売らないんです。ベトナム人のマリも同じです。彼女の存在は、ベトナムと同じなんです。自由でいる為に誰かのものにはならない、自分で生きて行くという事なんですね。
そしてロベールは、途方に暮れてしまいます。自分は、兄の復讐の為に戦ってきたのに、段々と、その考えが揺らいで来てしまいます。だって、彼らの主張の方が、真っ当なんですもん。もちろん、兄を殺した人は悪いと思うけど、でもね、それ程に自由が欲しかったんです。だけど、フランスには、彼らほどの必死さはありませんよね。だって、元々、人の土地を占領しているんだから。自分の家を取られた訳じゃないんです。そこら辺の必死さの違いが、良く表現されていました。
この映画、素晴らしい内容なのですが、とっても解りづらいんです。その歴史を知っているものと思って描いているので、年代を書くだけで、その時に何が起こっていたのかと言う事の説明が一切無いんです。だから、凄く歴史に興味がある人でないと、この映画を観ただけでは、良く分かりません。だって、この辺りの歴史って、日本の学校では教えないでしょ。日本の小説でも、ドラマなどでも描かれたことが無いので、無理だと思います。
一応、ざっとこの時代の歴史を書いておきましたが粗いので、詳しく知りたいようでしたら、調べてから、映画を観て下さい。とりあえず、私が書いたこと位を知っていれば、最初に日本人が出てきた理由も、ゲリラと戦いになった理由も、ある程度は解かると思います。
主演にギャスパー・ウリエルで、ジェラール・ドパルデューも出演しています。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。これは、日本人が知っておくべき歴史なんじゃないかと思ったのですが、この映画だけだと、ちょっと難しいので、少し調べてから観る事をお薦めいたします。でも、私、この映画で初めて、ベトナム戦争がこういう始まり方をしていて、日本も関わっていたんだと言う事を知りました。驚きました。ぜひ、観に行ってみて下さい。2019年に公開予定です。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
To the Ends of the World
http://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=219716.html
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