「万引き家族」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
東京の下町。高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。そして、ある事件をきっかけに仲の良かった家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく。
というお話です。
東京の下町。高層マンションが立ち並ぶ隙間に、取り残されたような木造一軒家の平屋が残っている。その家の家主は、年老いた女性・初枝で、年金暮らし。既に夫は亡くなっているようだ。一緒に住んでいるのは息子夫婦に見える治と信代。そしてその息子の祥太。信代の妹らしき亜紀が暮らしていた。
一応、治も信代も亜紀も働いているようだが、初枝の年金をアテにして、それでも足りない部分は、治が万引きをしているようだった。治は、万引きや車上荒らし、何でもやるようで、息子の祥太に万引きを手伝わせていた。一見、仲の良さそうな普通の親子に見えるのだが、実は万引きをしているのだ。
そんな二人が家に帰る途中、あるアパートの1階のベランダに出されている女の子を見つける。毎日、出されていて、お腹が空いているようだった。可哀想なので、治が家に連れて帰る事にする。家族には、誘拐だからと言われるが、ロクな食事も与えられていなかったらしく、その上、身体を見るとDVの後がいくつも見られた。
女の子を帰そうとするが、アパートの中から夫婦が言い合って暴力を振るう音が聞こえ、信代は女の子を帰す事が出来なくなり、そのまま自分たちが育てる事にする。新しい名前を「りん」として、一緒に暮らし始める女の子。家族6人で、それなりに幸せそうに暮らしているが、初枝は年を取っているし、子供たちも成長する。
そして、ある日、ある出来事が起こり、家族は段々と崩壊し始める。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
最初にハッキリ言いましょう。これ、カンヌのパルムドール、取るよね。本当に良い映画だし、カンヌが大好きそうな内容、作り方でした。映画祭とかで賞に輝く作品って、映画の訴える内容を決して説明していないんです。映像と俳優の演技で、その内容を伝える映画が貰えるんですよ。だから、頭を使わないで観ていると、何を訴えているのか良く解らない人も出てきちゃうの。前作の「三度目の殺人」も訴える事を描かずに解らせる映画だったけど、今回の方が上回りましたね。
やっぱり、安藤さん、樹木さんの演技と、子供たちかな。これを見せられちゃうと、もう、子供すげー!ってなっちゃう。特に、祥太を演じていた城くん。柄本さんが演じる雑貨店の店主に「妹にやらせんなよ。」って言われた時の表情、もう、何とも言えませんでした。この一言で、彼は罪を知るんです。それまで、お父さんが教えてくれるんだから、やっていい事なんだと思っていたんだけど、段々と成長して、何となく悪い事なんじゃないかなぁって思い始めているんだけど、この一言で罪に目覚めるというか、自我に目覚めると言っていい様な心の変化をしたと思うんです。上手かったよねぇ。
安藤さんも、さすがです。ずーっと応援して来たけど、もう、大御所の域でしょ。次世代を引っ張って行くのは彼女だと言って良いほど、重い演技が出来る方です。園子音監督の「愛のむきだし」で観た時、スゲーなと思ったけど、マジで来ましたね。あの映画の満島さんと安藤さん、演技でいったら、今はトップクラスです。崇めちゃいますよ。
それにしても、この映画、本当の事が、最期の方でバタバタっとバラされて行くんだけど、凄い展開でした。実は、最初の方は、モタモタしていて、うーん、眠いなぁと言うような感じなのですが、いきなり、ジェットコースターのように動き出して、止まらなくなるんです。凄いですよ。
ここからは、内容に関してネタバレしないように書いているので、理解出来なかったら、覚えておいて観た時に感じて下さい。
あのね、信代がある場面で「産めなかったから欲しかったんじゃないの?」って言われる部分があるんです。これ、本当にキツかった。ハッキリ言って、子供を産んでいない女性に対して、酷い言い方でしょ。でもね、現実にこんな事を平気で言う人、いると思うんです。女は子供を産むのが当たり前で、子供を産まなかったなら、人のが欲しくなるだろうって、バカな人間は思うのでしょう。
この信代は、もちろん子供を産みたかったかも知れないけど、産んでないからって、人の子供が欲しかった訳じゃない。産まれて来て、親から愛されず、捨てられている子供を見捨てられなかっただけ。きっと、彼女も愛されなかったんだろうと思います。だからこそ、少しでも愛を与えてあげたかったのだろうと思いました。
それにしても、何で愛せない子供を産むの?愛せないなら産まなきゃいいでしょ。気持ちイイ事して出来ちゃったから産むというなら、育てるのにお金がかかるんだから、直ぐに降ろしなさい。少子化と騒ぐなら、社会情勢が不安だから産まないと言っている、頭の良い女性が産めるような社会にすべきでしょ。親が子供を愛さない社会なんて、良くなる訳が無い。根本が間違っている事に気が付かない訳じゃなくて、気が付かない振りをしてるだけでしょ。
本当に、この映画、感想を書きだしたら止まらないくらい、凄い深い内容です。まだまだ、書き足りないけど、既に、少しネタバレになっちゃってるから、これ以上書くと、目一杯、ネタバレになるので、書けません。でもね、本当に凄い映画でした。
もひとつ、「万引き」という題名で、犯罪をする家族を描くなんてダメでしょというコメントがあったように思いますが、この映画、万引きは悪い事だとちゃんと言っています。悪い事をしてはいけないからこそ、この家族は崩壊して行くんです。これは悪い事を正す映画です。
最期に、ちょっとした役でも、凄いキャストが揃っていました。え、池松くん?高良くん?山田くん?って驚くような端役ですが、揃っています。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。素晴らしい映画でした。でもね、頭と心を使って観ないと、え?どういう事っていう感じで終わってしまうかも知れません。最後、モヤモヤしちゃうかもしれないんです。でもね、観た後に良く考えてみて下さい。彼ら家族が、どうしてここに集まっていたのか。どうして一緒に暮らさなければならなかったのか。全てに理由があるんです。それが理解出来た時、何とも深い感動が盛り上がってくる作品でした。私は、また観に行きたいと思います。DVDでゆっくりも観たいなぁ。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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