「デトロイト」の試写会に行ってきました。東洋経済オンラインのご招待でした。
ストーリーは、
67年、夏のミシガン州デトロイト。権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、暴動が発生。3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から銃声が響く。デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、宿泊客たちを脅迫。誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく。
というお話です。
1967年7月、ミシガン州デトロイト。人種差別がまだ根強く残っており、黒人が集まる無免許の時間外の酒場に警察が手入れを行いました。警察の目論見では数人の黒人客がいるだけだと思っていたのですが、80人ほどの黒人で溢れていて、ベトナム戦争からの帰還兵のお祝いをしていたんです。全ての黒人を逮捕し、連れ帰ろうとする警察に町の黒人たちが怒り、今までの不満を爆発させ、略奪、破壊など、大きな暴動に発展し、その後5日間も暴動は続きます。
このデトロイトは、20世紀初頭から黒人が流入し、車産業活性化などの関係もあって、中心地に白人、外周に黒人というドーナツ現象が起きていました。黒人からも上流階級の者が生まれ、人種融合の地域として国からも多額の補助金が出ていたのですが、まだまだ人種差別は収まっておらず、黒人たちは不満を貯めていたんです。反対に、白人たちは裕福になって行く黒人を良く思っておらず、白人の警察官は、黒人に酷い仕打ちを普段からしていました。
そんな暴動の直後、あるモーテルで銃声が響きます。暴動の鎮圧後のため、沢山の警察官が町を警備しており、直ぐにデトロイト市警、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊が駆けつけ、ホテルに踏み込みます。警察は、ホテルに居た人間全てを集め、壁際に立たせて、銃を撃ったのは誰か、銃は何処にあるのかを尋問して行きます。しかし誰もその質問に答えられず、尋問は酷さを増していきます。そして・・・。
後は、映画を観て下さいね。
キャスリン・ビグロー監督の最新作です。またも凄い映画がやってきました。ハッキリ言って、面白いという内容ではありません。恐ろしくて、不安で、ハラハラしてしまい、心臓が痛くなるほどでした。こんな事件が、その昔にあったんですね。デトロイトで暴動があったらしいことくらいは、歴史として知っていましたが、その暴動がこれ程に酷く、その後にも影響を及ぼしていたとは知りませんでした。
白人が黒人を奴隷として扱っていた時代もあった訳だから、そう簡単に平等になるのは難しいだろうことは理解出来ます。そりゃ、違和感がありますよね。今まで、見下していた人間が、自分と同じ場所に並ぶんですから。でも、同じ人間として、今までの常識を排除して、平等に扱えるように努力をしなければと思うんです。そうなると白人ばかりが無理をしなければいけないから、黒人の方々も、暫くは我慢しながら嫌な事も流すようにして何とか上手く行く様に様子見をしていたんじゃないかな。でも、お互いの無理が溜まって、この暴動が起きたんだと思うんですよね。
その爆発した暴動の延長で、このホテルでの事件もあり、まだまだ差別が無くなっていないことが、ここで暴露されたような形になったのだと思います。これ、やっぱり黒人を同じ人間として、この警察官たちは認識出来ていなかったのではないかと思いました。やっぱり、親の教育や、社会の情勢などから、こんな風に育ってきてしまったのでしょうね。酷い事をしても、別に悪いとは思わないし、黒人は悪い奴だという根本的な刷り込みが、暴動の後だったので、脳に入っていたのだと思いました。
そんな警察と被害者(ホテルに居た人々)の間に立つというか、見ていた地元の警備隊の一人ディスミュークスは、町を守る警備隊であり、黒人であるので、警察にも被害者にも、偏る事は無く、公平に見ることが出来る人物なんです。そんな彼の目線で見せる状況も上手いなぁと思いました。でも、不思議なんですよ。このディスミュークスも、何故か、関係者として拘束されることになるんです。おかしいでしょ。
1960年代の事件だけど、ハッキリ言って、今でもアメリカでは、白人警官が黒人を暴行したとか殺したとか、そんな話が出てきますよね。もう50年も経っているのに、なんで変わらないんだろう。根本的に、家庭での教育が変わっていないからなんじゃないかしら。やっぱり、親が嫌いなモノって、嫌なモノだと子供も刷り込まれるでしょ。成長していけば、自分で理解して考えを変えて行けるけど、でも、根本的に刷り込まれているモノは残っていると思うんです。その根元に残っている刷り込みを拒否出来る人が教育を行って行くべきじゃないかな。アメリカは、特に宗教が盛んなんだから、人間的に成長した聖職者と教育者が、国と連携して考え方を改めるように教育をすべきですよね。何の為の、毎週の教会なの?何のための学校なの?
日本も、その昔は、高校を出て仕事が無かったらバカでも警察官にはなれるからみたいな考え方があって、族にいた奴とか、俗に言う不良たちが警察官になっていたよなぁと思うと、日本もロクな教育を受けていない奴が警察に入っているから、警察内部での事件などが起きて、それをキャリアたちが揉み消しているのかなと思うと、アメリカとそんなに変わんないのかなって思ったりしてます。同じような事がこの映画の中でも描かれていますから、解かると思いますよ。
この映画、素晴らしいです。私は、超!超!お薦めしたいと思います。でもね、政治的な事とか、社会問題に興味が無い方が観ても、眠くなるばかりかも知れません。でも、ニュースを見て、ちょっと時代考証などを読んでから行くと、凄く楽しめると思いますよ。この事件が、どんな結末だったのか、ぜひ、その目に焼き付けてきてください。驚きます。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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