「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」を観てきました。
ドキュメンタリー映画なので、内容は、
中世に活動し、1516年に亡くなったオランダの画家ヒエロニムス・ボス。生年月日、人物像の詳細も不明で、現存する作品は25点のみ。プラド美術館が所蔵する三連祭壇画「快楽の園」は彼の最高傑作とうたわれ、天国と地獄が所狭しと描かれたエロチックでグロテスクな奇想天外な作品は世界美術史においても異彩を放っている。本作はプラド美術館全面協力のもと、美術、宗教など各方面の識者が「悪魔のクリエイター」と呼ばれたボスの思考や人物像に迫っていく。
というお話です。
ドキュメンタリー映画でして、ヒエロニムス・ボスさんの絵の解説がほとんどの映画でした。彼は、1450年頃に生まれ1516年に亡くなっていて、作者のボスさんについては、あまり明確な情報が解っていないようで、彼自身の解説はほとんどなくて、彼が描いた絵の解説ばかりなのですが、その解説を聞いていくと、どう考えても、このボスさんが、古い時代に生きていたにも関わらず、現代に通じるものを持っていたのではないかと思えるものばかりなんです。
現代だと、極普通にSFなどが描かれていますが、彼が生きていた時代には、この感覚は、とても珍しかったのではないかと思われます。シュールレアリスムの先端の先端を行っているような作品であり、全体を見ると、それほど違和感は無いものの、描かれているものを一つ一つ見てみると、とてもグロテスクに見えて、何となく、漫画の「ベルセルク」を思わせる様な絵画ばかりなんです。
キリスト教友愛団体の「聖母マリア兄弟会」に所属しており、そのための宗教画をいくつか描いていたようなのですが、16世紀の宗教改革運動で偶像崇拝である作品を破壊されてしまい、作品は30点ほどしか残っていないそうです。
宗教がの基本を押さえながらも、とても残酷かつグロテスクとも取れる様な表現の絵画が多く、ちょっと驚きました。だって、鳥頭や魚頭の人間などが描かれていたり、キリストとマグダラのマリアらしき絵画も骸骨だったり、卵の中に人間の目があったり、恐ろしいんです。
私は、このタイプの絵画は、とても好きなのですが、やはり宗教画としては、問題があるのではないかと思いました。だって、この絵を見て、神を崇めようという気持ちになるかというと、ちょっと考えちゃうでしょ。それに、今、観ると、とても現代っぽいんですよね。ルネサンス期の画家なのに、現代にウケそうな不思議な絵画で、見れば見るほど、一枚の絵の中に、奥深い内容が描かれているような感じがして、その絵の中で、沢山のストーリーが流れているようなんです。
とにかく、1枚の絵の中で、「未体験ゾーンの映画たち」が何作も体験出来るような感覚なんです。それが、とっても面白いんですよ。
ルネサンス期のネーデルランドというと、ブリューゲルが有名だと思うのですが、彼も独特な絵画を描いていましたが、ボスほど極端では無かったような気がします。それに、この時代、メディチ家が勢力を伸ばしていて、有名画家のバックアップをしていたと思うんですよね。ダヴィンチやボッティチェリ、ミケランジェロやラファエロも同じ時代だから、才能が溢れている時代であり、そんな中で異彩を放っていたのがボスなのかなと思いました。
ボスの絵を細かく解説をしてくれて、とても楽しめる内容でした。私は、お薦めしたいと思います。但し、美術鑑賞などが好きではない人には苦痛かもしれません。ストーリーはありませんし、とことん絵画の説明が続きますので、それに興味が無い方には退屈かもなぁ。興味がある方は、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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