「あゝ、荒野 後篇」愛を求めて闘う二人の姿は、切ないほど熱くて哀しく見えました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「あゝ、荒野 後篇」を観てきました。

 

ストーリーは、

ボクシングのプロデビュー戦を終え、トレーニングに励む毎日を送る新次とバリカン。宿敵である裕二との対戦に闘志を燃やす新次は、自分の父親の死にまつわるバリカンとの宿命を知ってしまう。一方、バリカンは図書館で出会った京子に初めての恋をするが、彼の孤独が満たされることはない。やがてバリカンは自身の殻を打ち破るべく、兄弟のように過ごしてきた新次との日常を捨てることを決意。戦うことでしか繋がることのできない2人の死闘の日々がはじまる

というお話です。

 

 

前篇でプロボクサーになった”新宿新次”と”バリカン建二”。新次は、自分と立花をボコボコにした裕二と戦う為にいくつもの試合を勝ち抜き、やっと裕二との戦いが現実となる。一方、建二は、力があるのに心が優しすぎて、相手を憎み戦うことが苦しくなっていた。そして、どんどん強くなり、先を走って行く新次に劣等感を抱き始める。

 

裕二との試合に挑む新次は、それまでの裕二と自分、そして立花との事を思い出しながら、憎しみを大きくし戦い始める。そして死闘の末、裕二のセコンドがタオルを投げ入れた為、新次の勝利となる。勝った新次は、長年の復讐を果たしたので、気分が良くなると思っていたのだが、終わってみると、全く嬉しいという気もちが湧いてこない。あんなに待ち望んだ試合だったのに、終わってみると虚しさだけが残ってしまう。

 

 

そして、新次が裕二との試合に挑む前、建二も自分の気持ちに区切りを付けるべく、ジムを止めて、他のジムへ移り、新次と対戦が出来るように交渉をする。そして、新次との試合が決まり、練習に明け暮れるのだが・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

この映画、本当に良かったです。U-NEXTのドラマで見るとか、DVDを購入するとか、色々なメディアで楽しむことが出来るので、あまり映画館で公開されていませんが、観れると思います。本当に面白いですよ。前篇の時も書いたのですが、2022年のお話なのに、凄く昭和の匂いがする作品なんです。ま、寺山さんの作品なので、当たり前なんですけどね。それにしても、感動作だったなぁ。

 

 

この新次も建二も、孤独で、誰かに愛されたくて、だけど、それを直接ぶつけられないという不器用な人間なんです。新次は、自分が慕っていた先輩の立花に再会して、一緒に自分たちをボコボコにした裕二を倒してくれるかと思っていたら、既に裕二を許してしまっていて、仲まで良くなっていて、とても疎外感を持つんです。そして昔の立花を取り戻すべく、裕二を敵として戦うのですが、結局、先輩は自分の所には戻らず、母親と再会しても、自分を愛してくれることは無い。何処まで行っても、自分を愛してくれる人はおらず、建二さえも離れて行ってしまう。

 

 

そして建二は、母親が亡くなって、無理矢理、父親に日本に連れて来られ、ずーっと辛い毎日を送っていたんです。父親は全く愛してくれることは無く、ボクシングを始めて、仲間が出来て、幸せになれたと思ったのに、プロになって戦い始めると、新次は敵の事ばかりで自分の方を向いてくれない。トレーナーもコーチも新次の方を見ているように見えてしまう。建二は、とても強いボクサーなのに、相手を殴るのが辛いんです。だって、子供の頃から父親に虐待されて殴られてきているので、殴られても殴るのが苦手でなんです。だけど、どうしても新次に振り向いて欲しくて、自分に正面から向かって来て欲しくて、試合がしたいと申し出るんです。究極の愛を求めていると思いませんか。凄いですよね。でも、こういうことを描くのが寺山修司なんですよ。うーん、素晴らしい。

 

 

そんな二人の闘いは壮絶でした。そして、それを見ている周りの人々も、その二人の思いに引き込まれて行く。新次の母親は、自分の夫を死に追いやった男の息子が建二だと知っていて、息子の新次がその復讐をしてくれているように見えて”殺せ!”と言ったように見えました。ここでやっと息子への愛を表したように見えました。そしてラブホの社長も、それまでの自分の生き方を見直して、只、金を追っていた自分に見切りをつけたかなと思いました。他の人々も、その愛を求めて死闘をしている二人を観て、それまでの自分を顧みていたように思えます。

 

 

最後は、小説と同じでした。ネタバレはしませんが、やっぱり、”あしたのジョー”が大好きな寺山さんらしい終わり方だなと思います。この作品、今、映画化されて、良かったなぁ。昭和っぽいけど、この昭和っぽい感じは、今の時代に最も必要な事の様な気がしました。何か事件が起きても、助けるより先にスマホで動画を撮っている人間に、愛は無いですよね。それこそ見殺しにしている張本人って事でしょ。まず、助ける事が先だと思うけど、助けている様子を周りでスマホで撮影している奴がいて、驚きます。そいつらも同罪でしょ。恐ろしいです。愛の無い世界に、何も進歩は無いと思うけど。

 

ああー、寺山さんの作品、リメイクとか、舞台でやってくれないかなぁ。いくつかあるようだけど、今、ほとんど観れないでしょ。とっても残念です。古い作品を、今回のように、現代に置き換えてやれば面白いんじゃないかな。今作は、凄く成功したと思います。またやって欲しい。

 

 

私は、この作品、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは観るべきでしょ。TVで観れるなら、そんなに良い事は無いと思いますよ。DVDで出ているんだから、レンタルでも配信でも観て欲しい。こんなスゴイ作品を、沢山の人が観ないなんて残念です。民法テレビも、こういうのを買って、放送すれば視聴率上がるんじゃないの?6話でしょ。宣伝すれば、きっとスゴイと思うけどなぁ。皆さん、ぜひ、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんでくださいね。カメ

 

 

あゝ、荒野 後篇|映画情報のぴあ映画生活

 

 

 

 

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