第30回東京国際映画祭の26作目、「シリアにて」を観てきました。
ストーリーは、
3児の母であるオームは、自らのマンションをシェルターとして家族と隣人を市街戦の脅威から守っている。外の広場はスナイパーに狙われ、爆撃が建物を振動させ、さらに強盗が押し入ろうとする。果たしていつまで持ちこたえられるだろうか・・・。
というお話です。
シリアの市街地のマンションに住むオーム。今だ内戦が収まらず、アサド政権と反体制派&ISの対立が続いていたが、2015年のロシアの軍事介入により、アサド政権が力を回復してきているようだ。そんな中、オームは、家族と共にマンションの一室にこもり、家族を守っていた。同じマンションに住んでいたハリマ家族も匿い、何とか生活を続けている。
ある日、ハリマの夫がそこから逃げるルートを見つけ、今夜逃げようと話をしている。そして、夫は手配をする為にマンションを出て行くのだが、外に出て走っているところをスナイパーに撃たれてしまい、駐車場に転がっている。メイドのデルハニが一部始終を見ていたので、ハリマに告げようとするが、オームはハリマに告げるのを押しとどめる。彼女が日中に彼を助けに出てしまうと、彼女も狙われてしまうからだ。ハリマにはまだ生まれたばかりの子供がおり、彼女まで死んでしまったらと思ったのだ。
昼になり、マンションに強盗が押し入ってくる。キッチンに隠れるが、ハリマだけ赤ちゃんを部屋に置いてきてしまい、キッチンに入れない。強盗は他の人間は何処に居るとハリマに問い詰めるが、ハリマは何も話さず、子供を人質に取られレイプされてしまう。
強盗は去っていき、キッチンから出てきたオームに、自分だけ入れてくれなかったと話すハリマに、生き残る為だと話し、ハリマの夫がスナイパーに撃たれて駐車場に倒れていることを話す。ハリマは夫を連れに行くと、彼はまだ生きており、直ぐに、病院に連れて行って貰えるように話を付けるのだった。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
マンションの1室で描かれるのですが、銃撃の音とか、爆撃の音が聞こえ、恐ろしい世界に居るのに、部屋の中では、日常生活を突き通す彼らの姿が、何とも不思議だけど、辛そうで、怖いと思いました。いつ爆撃されるかわからないのに、そこに居続けるオームと家族は、そのまま生活を続けるつもりだったのか、それとも一時しのぎなのか、良く判りませんでした。
時折見せる、非情ともいえる判断が、彼女が今まで無事に生きてくることが出来た要因なんだと思わせました。普通、壁一枚となりで女性がレイプされていたら、助けに行きたくなると思うけど、子供を抱えているオームは、それをしないんです。酷いでしょ。でも、自分たちが生きる為なら仕方ないと思っていたのだと思います。
それにしても、何の武器も持たずに、そのマンションにとどまっていると言うのは、どう考えても、続かないんじゃないかなぁと思いました。無理でしょ。早く、安全な地域に移動するのが一番ですよね。家族が生き残るのが一番ですもん。
それにしても、この内戦、何とかならないんですかね。随分、ISは撲滅したみたいだけど、まだまだ、紛争は続いているようで、テロも色々なところで起きているから、何とかならないのかしらと思いました。
私は、この映画、とってもお薦めしたいと思います。密室劇なのですが、それぞれの思いと、外の戦争の空気、そして生き残る為にする判断が、その必死さを描き出し、映画として、素晴らしい効果を出していると思いました。この雰囲気は、普通の映画では描き出せないですよ。凄いと思いました。日本公開は決まっていないようですが、この映画は、ぜひ公開して欲しい。そしてシリアではこんなことが起こっていると言う事を日本人も知るべきだと思いました。ぜひ、観てみて下さいね。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「シリアにて」
http://2017.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=113
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