【TIFF2017】「殺人の権利」(アジアの未来部門)殺す権利なんて誰にも無いはず。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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第30回東京国際映画祭の12作目、「殺人の権利」を観てきました。

 

ストーリーは、

ミンダナオの奥地で狩りと漁で暮らすダーウィンとオブナイの夫婦と子どもたち。反政府ゲリラを追ってきた軍隊によって平和な生活は終わりを告げる。

というお話です。

 

 

フィリピン、ミンダナオに住むダーウィンとオブナイ夫婦と3人の子供たち。彼らは原住民のマノボ族です。自然と共に生き、自然の中で生活をしているので、ある日、末の息子が熱を出してしまった時、手の施しようが無く、そのまま、亡くなってしまいます。薬も病院も無いので、ただ、起きる事を受け入れるしかないのですが、それでも生活を変える事はありません。

 

 

ある日、食糧が足りなくなったダーウィンは、オブナイを置いて、その地域の族長の家に食糧を分けてもらいに行きます。食糧を受け取ったダーウィンは、家に帰ろうとしますが、帰り道で国軍の兵士に出くわしてしまいます。兵士は、ゲリラの居る場所を教えろとダーウィンに迫り、拘束し、案内させる為に連れて行きます。一方、オブナイも兵士に捕まり、同じようにゲリラの場所に案内しろと言われ、連れて行かれます。

 

 

兵士の合流場所でダーウィンとオブナイは再会しますが、兵士たちに屈辱的な扱いを受けます。ゲリラのいる場所に案内しなければ解放してもらえない2人は、ゲリラが開いている学校まで連れて行かれ、教師や子供、母親たちと共に、縛られます。オブナイは、兵士たちの食事を作る際に毒を入れお腹を壊させ、夜の内に、母親と子供たち、教師を逃がし、自分たちも逃げますが、無理やり毒見をさせられていたダーウィンはお腹を壊していて早く動けません。またも拘束されてしまったダーウィンとオブナイは怒った兵士たちに・・・。後は映画を観て下さいね。

 

 

題名の「殺人の権利」ですが、映画の中では、国軍の兵士は、国民を守っているのだから、国を脅かす者は殺しても良いという考えを振りかざして、マノボ族などをいたぶります。でも、監督がおっしゃっていたのは、それだけではありませんでした。まず、マノボ族は、その地域で暮らしているので、その地域で生活をする為に、動物を殺して食べるのは当たり前だと思って、動物を殺しています。そして、同じように、兵士たちも国を守るのだから、害となる者は殺すという自分たちの理屈を掲げています。そして、ちょっとネタバレになってしまうのですが、オブナイは復讐する為に殺すのは間違っていないと考えて行動します。

 

 

何処までも、その人の立場での考え方で、相手にも生活がある、相手にも家族がいるなんてことは頭にないんです。動物だって、むやみやたらに殺して食べて良いなんて理屈は通りませんよね。そういう事が、すべて、巡り巡って、生きる事は罪を重ねる事なのかなと考えさせられました。だって、生きる為には食事をしなくちゃいけないでしょ。誰もがベジタリアンではいられないし、植物に意志が無いなんて誰も立証していないですから、もしかしたら、植物だって怒っているかもしれない。生きる為に、命を搾取していく私たちは、いつも罪を犯しているんだなって思いました。

 

 

だからって、別に、卑下する必要はありません。その分、自分が生きればいいんです。だけどね、国の為とか、そんな大義名分を掲げて、偉そうに人を殺して良い訳がありません。やっぱり、フィリピンはこの問題に正面から向き合う必要があると思いました。

 

 

そんな事を色々考えさせられたこの作品、私は、とってもお薦めしたいと思います。作品としては大きなものではありませんし、ベテラン監督作品とは、申し訳ないけど言えないけど、でも、熱意は凄く伝わってくるし、監督ご自身で脚本も撮影も音楽もやっているんですね。そんな意欲作、日本で、ぜひ沢山の人に見て貰って、日本の若い映画監督にも、こんな風に頑張って欲しいと思いました。ぜひ、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「殺人の権利」http://2017.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=43