舞台「クヒオ大佐の妻」を観てきました。
ストーリーは、
築45年のとあるアパートの一室で、一日中ミシンを踏む女(宮沢りえ)。
仕立て直し、丈直し、縫い物など、若いころに身につけた洋裁の腕を頼りにし、生活を成り立たせている。その部屋に荷物を定期的に届ける、宅配便屋の男(岩井秀人)。彼は、クヒオ大佐の妻の故郷の学校の同級生であり、実は作家志望で、処女作のための取材活動をするうち、女の夫が“クヒオ大佐”だという噂を耳にしていました。同級生という事で彼女に近づき、取材をしようと目論んでいました。
この近所でツケを踏み倒しまくり、そのたびに綺麗な奥さんがあちこちの店を謝ってまわっている、と。だが、女が語るクヒオは結婚詐欺師ではなく、あくまでもアメリカ空軍のジェット機を操縦するパイロットでアフガン、イラク、ソマリア、ハイチで戦い続けているために忙しくてなかなか帰宅ができないのだという。
もはや既に狂気にとらわれてしまっているのか、はたまた単に嘘をついているだけなのか…? 女の話を聞いているうちに、作家志望の男の言動も徐々に変化していく。そこへさらに、新たな訪問者が現れる。
かつてクヒオに騙されてすべてを捧げた女。彼女は、クヒオ大佐の妻である女に挑みかかる。妻は驚き、睡眠薬入りのお茶を出して彼女を眠らせ、縄で縛って押入の中へ。そんな女を宅配便やであり、同級生の男が見つけ、彼女の縄を解いて逃がそうとするのですが、そこへクヒオの妻が帰ってきて…。
というお話です。
この舞台、凄く面白くて、ああーと気が付かされる深い内容だったのですが、これ、元々の”クヒオ大佐”という人を知らないと、成り立たないよなぁと思いました。堺雅人さん主演でクヒオ大佐の映画が2年くらい前に公開されまして、それを観てから、この舞台を観ると、凄く良く解かると思います。
早川夏子は、クヒオ大佐と名乗っていた男と結婚し、今は一人、彼の帰りを待っているのですが、彼が酷い男だという事は、彼女も解っているんです。だから、色々な人に頭を下げて謝って周っているんです。でもね、彼が詐欺師だとは、何故か思っていないんです。アメリカの空軍大佐であり、今は中東に派遣されていると、本気で思っているというか、本気で信じようとしているのだと思いました。自分が騙されたという事を信じたくないんだと思うんです。
観ていて、とても恐ろしくなってきちゃいました。だって、嘘だって周りが言っても、一切受け付けず、話しも聞かないんですもん。まるで宗教に洗脳されたようにクヒオを信じているんです。ここで、彼女が優等生で、頭が良かったという所が効いて来るんです。そう、頭が良くて美しいと、自分が間違うハズが無い、騙されるハズが無いと思っているから、自分の過ちを許せないんです。何処までも、自分は正しいのだと突き進んでしまう。だから、こんな風になっちゃうんだろうなと思います。このタイプの典型的な形ですよね。
だからいつも言うんですけど、失敗して、最下位に落ちてから這い上がって来た奴じゃないとトップには立てないよって。自分も相手も疑えない人間は、正しい答えが出せないんですよ。
それと、この舞台でショックを受けたのは、日本がアメリカの殻から抜け出ることが出来てないという考え方です。私も、ずーっとそう思っていたから、やっぱり同じように思う人っていたんだって思って、嬉しくなりました。最後の方で、日本の国旗が出てくるのですが、それが透けると、アメリカの国旗の中に日の丸が飲み込まれているんです。
今もまだ、戦後の植民地意識が抜けていない日本人は、何故か自分ではそれに気が付いていない。憲法だって、ずーっとアメリカが決めたままで、平気なんですもん。恥ずかしいと一つも思っていないなんて、信じられません。9条がどーのと言うよりも、日本人が決めた憲法を制定するという事が大切なのに、いつまで植民地でいるつもりなんでしょうか。そんなにアメリカが好きですか?今のところ、日本はアメリカの51番目の州ですね。みっともないと思わないのかしら。
この舞台を見て、アメリカの属国だというのを良く思っていない人が居てくれて嬉しいなって思いました。
私は、この舞台、超!超!お薦めしたいと思います。これは面白い舞台でした。人間の深層心理と、そう思わせる存在がある事、そして、壊れてしまった人間は、簡単には治らないという事、色々考えさせられました。面白かったです。宮沢さん、観る度に美しくて大好きです。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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