舞台「城塞」を観てきました。
ストーリーは、
とある家の広間。爆音が響く。電燈が尾を引いて消える。どうやら戦時下のようである。「和彦」と呼ばれる男とその父親が言い争っていた。父は、「和彦」と共に内地に脱出しようとするのだが、「和彦」は母と妹を見捨てるのか、と父を詰る。しかし、それは「和彦」と呼ばれる男が、父に対して仕掛けた、ある”ごっこ”だった…。
というお話です。
人間って、いつも自分は正しくて、正常だと思っているけど、もしかしたら、自分が狂っていて、相手が正常なのかもしれない。そんな逆転する世界を考えさせられる内容でした。
戦時下のように見えるけど、既に戦争ではない時代に、ある男が、戦争の記憶を引きずったままの自分の父親の前で、戦時下の状況を演じているんです。全てを父親に合わせて、戦闘機の音や、遠くに聞こえる爆発の音なんかを聞かせているの。
そんな事しても意味が無いんだから、早く病院にでも入れれば良いのにと思うんだけど、その家系は、お父さんが戦時下で色々な物を持ち出したおかげなのか、とってもお金持ちみたいで、そのお金で息子が軍事産業(武器商人)でも始めたのかな。話を聞いていると、すごく儲かっているように見えるんだけど、でも、精神的には壊れているの。
お父さんのおかげで今の自分たちがいると思っているのか、お父さんの事を大切に思っているからこその、この芝居なんだと思うけど、でも、いつかは辞めなくちゃいけないと思っているんです。そんなところに、ある役を頼む為に娼婦を頼んじゃったから、ちょっとおかしな事になっていき、父親も何か違うと気が付き始め、崩壊に進んでいくんです。
父親は、戦争中に自分がしてしまった過ちを悔いていて、その責任を凄く感じているので、その時代に止まってしまっているんだと思うんです。それを息子が責め立てるの。どこまでも救われないんだけど、そんな息子を、息子の妻は、苛め始めるんですよ。何処までも責めて責められての続きで、見ているこちらも苦しくなってくるんです。
この精神面の変わり方が、とっても面白くて、惹き付けられて楽しめました。安部公房さんの戯曲って、こんな雰囲気なんですね。とっても独特で、泥沼に嵌った感じがして、何とも言えない気持ち悪さと息苦しさがあって、私は好きかも・・・。
私は、この舞台、お薦めしたいと思います。でも、もう終わっているので、もし、再演があったら、ぜひ観てみてください。
ぜひ、楽しんでくださいね。
城塞 http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007980.html
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