「マンチェスター・バイ・ザ・シー」人は時間はかかるけど、きっと立ち直れるんです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の試写会に行ってきました。


ストーリーは、

アメリカ、ボストン郊外で便利屋として生計を立てるリーは、兄ジョーの訃報を受けて故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻る。遺言でジョーの16歳の息子パトリックの後見人を任されたリーだったが、故郷の町に留まることはリーにとって忘れられない過去の悲劇と向き合うことでもあった。

というお話です。




アメリカのボストンで、便利屋としてアパートに住み込んで仕事をするリー。うるさい住人もいるが、おおむね淡々と作業をしていれば、食べるのに困る事は無い。そんなリーの所に、兄・ジョーが亡くなったという電話が入ってくる。ジョーは、心臓を患っており、以前から、余命宣告を受けていたのですが、その時が来てみると、動揺してしまうリー。急いで仕事を切り上げ、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シー(ボストンから1時間半くらいの場所)に向かいます。



病院に着くと、既にジョーの検死は終わっていて、霊安室に入っていました。悲しい対面をし、これからの事を決める為にジョーの息子のパトリックを連れて、弁護士の所へ行くと、ジョーの遺言書に、パトリックの後見人をリーとすることが書かれていました。パトリックは、転校をしたくないから、この地を離れたくないと言い、故郷の街に留まる事を選択するのですが、リーは、どうしてもこの町に居たくない理由があるんです。


リーは、昔、この街で妻と二人の娘と幸せに暮らしていました。ある夜、リーは自宅で友人を招いて騒いでいました。妻はさすがに怒り、お開きとなって、それぞれに帰り、リーは、ちょっと酔いを醒ます為に買物に出て行きます。家に帰ると、自宅が火事になっており、子供たちが犠牲となってしまいます。リーの暖炉の不始末が原因と見られ、リーは愛していた娘たちを失い、妻とも別れ、あまりの苦しさに、この街から出て行ったのでした。



過去がリーをこの街から遠ざけていたのですが、ジョーの死により、過去と向き合わなければならなくなり、別れた妻にも再会し、罪の意識に苛まれるリーは、酒場で暴れたり、物を壊したりと、荒れてしまいますが、そんな事では何も解決しない事も解っています。しかし・・・。後は、映画を観てくださいね。

この映画、とても静かでありながら、出てくる人物の息遣いが聞こえてくるほど、細かい心理描写がされていて、何とも言えず、素晴らしい作品でした。とてもセリフは少ないし、色々な人物の過去や状況などの説明は一切無いんです。それでも、彼らの表情や、一言一言により、きっと、こんな事があったんだろうとか、こう思っているのだろうとかという事が、観ているこちらに、全部伝わってくるんです。



この映画の良さを伝えるのは、凄く難しいけど、でも、本当に素晴らしい映画でした。映像の中に、行間があると言うのが、一番、しっくり来るかな。小説でも、行間を取って、そこで読んでいる人に考えさせるでしょ。この映画も、色々な出来事の間に休ませてくれる空間があって、そこで、映画の中の人物たちも考えているんだろうし、観ているこちらも考えるんです。それが丁度良くて、ラストに向かっての内容に、効いて来るんです。ああー、ネタバレ出来無いから、説明が難しいよぉ~!



愛する人を亡くしたら、それも自分が原因だったら、生きてはいられないだろうと思います。でも、死なせても貰えなかったら、もう、生きながら死んでいる状態になってしまうのは当たり前だと思いました。だから、このリーも、生きてはいるけど、心は死んでしまっている状態なんです。そんなリーが、兄・ジョーの死に対面し、その息子・パトリックとの交流を経て、変わって行く様子が描かれています。



この映画の中で、パトリックは”時間”なんです。彼だけ、子供から成長し、高校生になり、青春を謳歌し、今を生きているの。最新ゲームをして、バンドを組んで、彼女を作って、これからの未来を見ている。そして、とても感情表現が豊かなんです。そんな”時間”と一緒に過ごしている内に、リーは、自分があの”時”から全く動いていない事に直面し、傷と向き合う事になり、苦しむんです。観ていて、心臓が痛くなるほど可哀想でした。



心の傷は、簡単には癒せないし、他人がどうこう出来る事では無いけど、でも、長い時間をかけて、ゆっくり癒していけば、きっと回復出来るはずで、もちろん、完璧に忘れる事なんて出来る訳は無いけど、でも、きっと、その傷と一緒に前に進む事は出来るようになると思うんです。きっと、リーも、それに気が付いてくれたと思いたい。

色々あって、最後の場面で、パトリックとリーがボールで遊んでいるのですが、きっとリーは、”時間”と共に歩いて行こうという気持ちを持ったんじゃないかと思いました。まだまだ、傷は癒えておらず、正面から向き合う事は難しいけど、でも、少しづつ、前に進みたいという、彼の気持ちが現れていました。



私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。観る人によって、解釈は違うだろうと思うし、賛否両論出てくるとは思うけど、私は、この映画が好きです。傷ついた人間を無理に動かすのではなく、見守って、待つ映画なので、とても優しい映画なんです。私は、アカデミー賞、作品賞、こちらにあげたいと思ったくらいです。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ



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