舞台「白蟻の巣」を観てきました。
ストーリーは、
ブラジル、リンスにある珈琲農園。経営者である刈屋義郎と妙子夫妻、その運転手の百島健次と啓子夫妻。4人は奇妙な三角関係にあった。啓子の結婚以前に、妙子と健次が心中未遂事件を起こしていたからである。
それを承知で健次と結婚した啓子ではあったが、徐々に嫉妬にかられるようになり、夫と妙子が決定的に引き離される方法はないかと思案する。一方、心中事件を起こした妻と使用人をそのまま邸に置き続ける義郎の「寛大さ」に縛られ、身動きの取れない妙子。
義郎の寛大さがすべての邪魔をしていると思った啓子は、邸から遠く離れた地へ義郎を送り出す。
義郎の留守の間に健次と妙子が再び関係を結び、それが露呈することで自分たち夫婦が邸から追い出されることを目論んだのだ。
白蟻の巣のように、それぞれの思いが絡み合い、いつしか4人の関係が変化していく…。
というお話です。
三島由紀夫の得意とする、人間の欲が存分に描かれていて、これでもかって言うくらい、オオーイってツッコミを入れたくなるほどの厭らしさが満載でした。誰もが、自分は優しくて寛大で素晴らしい人間だと思っているけど、良く見れば、自己中で、強欲で、自分よりも得をする人間を許せないと言う事が描かれていて、本当に、人間って嫌だなぁと思ってしまうような内容です。それでも、どこか、その厭らしさが愛おしく感じるような、それが三島の本なんですよねぇ。ああー、ダメだ。三島熱が高まっている。
運転手の健次と農園主の妻・妙子は、心中未遂をした事があり、その後、健次は結婚をし、妙子は普通の農園主の妻として生活をしているんです。でも、やっぱり違和感があり、暮らしにくそうなんですよ。当たり前ですよね。普通は、自分の妻と不倫して心中未遂をしたような男を、そのまま雇っておくような主人は居ないし、普通なら、その男だって、出て行くでしょ。なのに、そのまま生活してるって、まるで地獄だよね。
この刈屋義郎っていう農園主ですが、凄く寛大な男で、妻を許したんだっていうんだけど、私は、反対に凄く責めているのだと思いました。だって、健次を雇っている限り、いつまでも妙子は罪を思い出すし、その償いの為に、義郎のところから出て行けないと思うんです。別れたくても別れられない。ただ、妻への制裁のように思えたんです。
そんな時に、健次の妻である啓子が、思い出したように、妙子との心中未遂が許せないって言いだすんですけど、全て判って嫁に来たんだろ~って事でしょ。今さら思い出したように言いだすって、どんな女なんだよ。で、その復讐の為に、義郎と寝て、今度は、農園を乗っ取ろうとしている辺りが、もう、女の厭らしさがムンムン漂って来ていて、気持ち悪かったです。こういう女って居るよな。身の程知らずっつーか、自分を鏡で見てみなさいって。その厭らしさが表に出てしまっていて、誰もアンタが妻になっても従ってこないっつーの。人の上に立つ器じゃないって。
人間は、その立場立場で、表面にまとう雰囲気が全然違ってくるというのが、良く判りました。そして、どんなに良い人の仮面をかぶっていても、汚さは溢れてきてしまうと言う事も。酷い牢獄の中に囚われた、妻・妙子と、運転手・健次が、一番の被害者であったけれど、もしかして、これからは、それも変わって行くのかも・・・。というところで終わっていて、面白かったです。
やっぱり、三島の作品は、面白いなぁ。本当に大好きです。これからも、三島の作品を、演劇や映画、色々なメディアで見たいのに、あまり出てこないのが寂しいです。
今後を期待しています。
この作品、地方公演がまだあるけど、都心では終わってしまいました。また、公演する事があったら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんでくださいね。
白蟻の巣 http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007979.html
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三島由紀夫選集〈第17〉白蟻の巣 (1959年)
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