「たかが世界の終わり」死を前にして、死よりも辛い地獄から逃げられたルイは幸せになれたのか。

「たかが世界の終わり」を観てきました。

ストーリーは、

自らの死が間際に迫ったルイは、疎遠にしていた実家を12年ぶりに訪れる。余命僅かと伝えようとする彼だが、自己中心的な兄のアントワーヌやマイペースな母を前になかなか切り出すことができない。やがてルイは、アントワーヌから昔の恋人の死を告げられ……

というお話です。

ガン（キャンサー）という診断を受けたルイは、12年前に飛び出した実家を訪ねて、自分の余命を伝えようと訪れます。実家には、長男と妹と母親が住んでいて、その町は彼にとって、とても息苦しい場所でした。でも、最後の時を家族に言わない訳に行かないと思い、実家を訪ねて来たんです。

実家には、母親と長男と長男の嫁と、妹が住んでいました。この小さな町には何も無くて、長男は街の仕事、妻は子育てと家事でいっぱいで、妹は、ゴロゴロしているだけ。何の楽しみも無く、話としたら、町内の噂話だけ。

母親・マルティーヌは、待ちに待ったルイが帰って来てくれたことを大喜びして、訳も解らずにおしゃれをしたり、料理を作ったりしています。妹のシュザンヌは、小さい時に兄のルイが出て行ってしまい、ほとんどルイの事を覚えていません。だけど、彼女も、まるでハリウッド俳優を迎えるほどに喜んでいて、ルイにまとわりつきます。

アントワーヌの妻のカトリーヌは、初めてルイと会い、親し気に話すのですが、アントワーヌは機嫌が悪く、ルイに直ぐに帰れと言い放ちます。家族のギクシャクした会話にいたたまれなくなるシュザンヌは部屋に戻り、ルイはアントワーヌに誘われ、タバコを買いに行こうと車で家を出ます。

ルイは自分の身体の事を話したいのですが、アントワーヌはそれを聞かず、何度も直ぐに帰れと言うばかり。そして、ルイの昔の恋人がガンで死んだことをアントワーヌは告げます。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

この映画、感想だけで映画の良さを伝えるのは難しいです。全く帰っていなかった実家に久しぶりに帰省したルイですが、彼はガンを患っていて、余命を家族に告げに来たのですが、アントワーヌは告げさせてくれないんです。それは何故かというのが、映画が進むにつれて解って行くのですが、その理解が、言葉などでハッキリ告げられる訳では無く、家族の雰囲気と、アントワーヌの表情で読み取れて行くんです。

実家のある地域は、とても田舎で閉鎖された世界であり、その息苦しさが嫌で、ルイはこの家を出て行ったんです。だけど、余命が少ないからと思って、家族に告げに来たのですが、家は変わっておらず、ルイを縛り付けるような家族はそのままなんです。それを判っているアントワーヌは、冷たい言い方でルイを遠ざけようと頑張っちゃうんですよ。本当は、誰よりもルイの事を思っていて、こんな場所に戻ってくるなと暗に言っているんです。

もし、ルイが病気の事を告げていたら、家族は家にルイを縛り付け、もう二度と外には出られないようにしてしまうと思うんですよ。閉鎖された世界で死ぬことになる。だからこそ、アントワーヌは弟を解放してやらなければと思ったのだと思います。家族の犠牲になるのは、自分だけで十分なのだと言う事なのだと思います。

アントワーヌの苦しい表情が、何とも、観ているこちらの心を絞めつけて、たまらなくなるんですよ。もう、ヴァンサン・カッセルが上手い！本当に上手いんです。それを見つめる妻のカトリーヌも、最初は、何故、夫がそんなにも冷たく言い放つのかと不思議に思っているのですが、段々とそれが理解出来て行ったのではないかという姿も、マリオン・コティヤールの哀し気な顔で解ります。マジで役者が上手くて、ぐぐーっと心に響いてくるんです。

私は、この映画、超！超！お薦めしたいと思いますが、あまり万人に理解出来る映画では無いかも知れません。全ては、最後の場面の鳩時計から出てきたスズメに集約されているんです。その閉じ込められる息苦しさって、締め付けている方の人間からしてみたら、全く分からないんだと思うんです。きっと、どんなに説明しようと、貴方の為にやってあげているのにって言うのだろうと思います。それって、言われる方は本当にシンドイんですよ。いい迷惑なんです。それを伝えられない辛さが、この映画に集約されていて、解る方には解ると思います。ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。

・たかが世界の終わり|映画情報のぴあ映画生活

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