舞台「はたらくおとこ」を観てきました。阿佐ヶ谷スパイダース20th記念です。
ストーリーは、
北の小さな村に建つ、小さな潰れた工場。そこに未だ出入りする工員たちがいた。理想を求め脱サラして挑んだりんご栽培に失敗し、さらにりんごを包むスチロール、いわゆるりんごパッキン工場にも失敗した工員たち。しかし未だ諦め切れず、何をしていいかもわからず、彼らはずうっとそこにいた。
そんな時、アルバイトの男の妹が駆込んできて、どうしたのか聞こうとすると、何故か工場に向けて投石がされ始める。その兄妹の実家では禁止農薬を使って農業を営んでおり、村の農業組合から辞めるように散々言われていたのに辞めなかったため、喧嘩になってしまったんです。そんなところに今度は2人の長兄が現れ、その手には沢山の違法農薬が。その農薬をどうするのか揉めているところに、スゴイ音がします。
工場にトラックが突っ込んできます。そのトラックは、工員の弟が運転していて、飲酒をしながら運転をしていた様子。そのトラックの積荷をどこかに捨てるだけで大金が手に入る仕事を受けたらしいのですが、積荷には思いも寄らない代物が積まれていて…。 社会的に最低かつ人間的にも余りにもちっぽけ男たちが送る職業スペクタクル。果たして奴らは最後に何を手にするのか。
というお話です。
突然、リンゴ農家で、渋いリンゴを作る事を目標としているというので、あれ、この話は、映画にもなった「奇跡のリンゴ」の話をモチーフにしているのかな、なんて、ほのぼの考えていたら、段々と、話が怖い方に転がっていき、農薬?産廃?犯罪?なんてことが出てきたりして、どうなってしまうんだろうというお話でした。
最初に、世界でここだけのリンゴを作るんだ!みたいなことを言っていれば、ほのぼの農村系の話かなと思うじゃないですか。それが、全く違う話になっていくから驚きました。でね、その穏やかと思われる農村で、禁止された農薬を使っている農家があって、その農家が農協から農薬を廃棄しろと追われているんです。で、この工場に逃げ込んで、そこに農協が攻撃を仕掛けてくるんですが、なんか、トンデモナイでしょ。攻撃って!日本の農協だよ!もぉ~、ダメでしょ。
でもね、禁止農薬を使ってたら人体に害が出るはずだし、怖ろしい事になるからダメなのに、平気で使ってるのよねぇ。その上、産廃を積んだトラックが突っ込んで来たりして、そんなダメダメな事ばっかり襲ってきて、大騒ぎなのよ。
禁止されていることを、お金の為に平気でやってしまう人間って多いけど、あまり批判が出来ません。だって、その人達だって生活があるだろうし、多かれ少なかれ、悪い事って、誰でもやっているでしょ。小さい事で言えば、赤信号で渡るとか、ゴミを捨てちゃうとか、お金を拾っても届けなかったりとか。人間って、良い事の積み重ねが人生じゃなくて、悪い事を積み重ねて人生だと思うんです。良い事は当たり前、罪を重ねるからこそ、無垢な乳児から人間へと成長するんじゃないのかな。だから、神様っていう罪を逃れる為の概念が生まれて来たと思うと、人間って、上手く出来ているなぁと感心してしまう。動物には、そういう考え方は無いもんね。
人間、生きていれば当たり前のように罪を重ねてしまいます。それを、悔いてばかりじゃ仕方が無い。それでも強く生きて行こうっていう感じのお話でした。考えれば考えるほど、深くて良いお話でした。
私は、この舞台、超!お薦めしたいけど、既に東京は終わっていると思います。地方公演が観れるようなら、ぜひ。私が、観て直ぐに感想を書けば良いのだけど、色々、書くものが多くて、忙しくてスミマセン。再演があったら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「はたらくおとこ」 http://asagayaspiders.net/modules/tinyd0/index.php?id=66