東京国際映画祭 2016 の18作目は、「ミスター・ノー・プロブレム」(コンペティション)を観てきました。
ストーリーは、
重慶のシューファー農場は、生産性は高いが利益につながらない。雇われ番頭のディンは、収入を増やすために自称芸術家のチンに空き部屋を貸すことにする。ディンと従業員たちの癒着に不満を抱いた農場所有者は、ディンをクビにしようとするが、便宜を受けているチンが反対する。それでも所有者一家は近代的発想を持つ新しい経営者を雇用することにし、騒ぎは大きくなっていく。
というお話です。
農場の支配人として雇われているディンは、どんな事にも嫌な顔せずにイエスと言って、言う事を聞く人物です。何人かの共同出資により成り立っている農場は、ディンの前の支配人の時から赤字であり、ディンになっても、赤字の解消は出来ていません。
経営者たちはディンをクビにして、良い教育を受けたインテリ支配人を雇用して、赤字解消をして利益を上げさせようと考え始めます。ディンは、そんな事は知らず、赤字を解消させる為に、自称芸術家のチンに空き部屋を貸して、少しでも利益を増やそうとしますが、いい加減なチンは、部屋代を一切払わず、全く農場の利益にはなりません。
農場で雇っている従業員たちは、農場の収穫から自分たちの食事分を持って来てしまい、当たり前のように食べています。収穫は農場の生産物なので、勝手に食べたりしてはイケないのですが、そんな事はお構いなし。ディンも、従業員たちと問題を起こすのを嫌がり、何も言いません。
そんな状態の農場に、経営者たちは新しい支配人を派遣してきます。ディンは、支配人の下で働くこととなり、新しい経営が始まりますが、農場の生産物を横領する事は禁止され、居候していたチンは追い出す事とし、従業員も4人ほど解雇する事にした新しい支配人ですが、従業員からの反発に合い、困難を抱えることに。そしてディンは・・・。後は、映画を観てくださいね。
主人公のディンは、超八方美人的な性格なんです。だから、誰にでも良い顔をしてしまい、全く進展が無いんです。良くなって行かないの。農場の経営だって、もちろん、犠牲になる従業員たちはいるかもしれないけど、でも、どこかで線引きをしないと、良くならないでしょ。大体、農場の生産物を食べちゃうって、ダメでしょ。捨てる部分とかを食べるならまだしも、朝から卵を取ってきちゃって、一番美味しいところを自分たちで食べちゃったら、そりゃ、赤字になるわなぁ。
従業員は、ちょっと時間が空けば、賭けマージャンをしたりして、それじゃ、農場の生産は上がりません。せっかく、新しい支配人が、しっかり規律を作ってやって行こうとしても、みんなで束になって反抗されちゃうのでは、どうしようもないですよね。
経営者たちも、自分の都合の良いように農場を回したいみたいで、経営者同士でも、派閥みたいのがありそうで、こんな事をやっていたら、上手く行く経営も、ダメになるよなぁと思ってしまいました。
とにかく、誰にでも良い顔をする八方美人はダメでしょ。周りをどんどん悪い方向へ持って行ってしまう、悪の現況なんだけど、良い顔をしているから、良い人と思われて、誰にも責められないし、誰も彼を排除しようとは思わないんですけど、彼を排除すれば、丸く収まるハズなんです。こういう人って、問題ですよね。そんな困った人を描いている映画でした。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。本当に良い人に見えてしまう八方美人を良く描いていて、面白かったですよ。良い人が一番悪い人だって事に気が付かない人間たちも、良く描けていて楽しめるし、全編、モノクロで描かれていて、それも、この映画の雰囲気を盛り上げます。これは、きっと日本公開すると思うので、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
ミスター・ノー・プロブレム http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=17