東京国際映画祭 2016 の14作目は、「アクエリアス」(ワールド・フォーカス)を観てきました。
ストーリーは、
ブラジル北東部の港湾都市レシフェ。65歳のクララは夫に先立たれ、1940年代に建てられた海辺の高級マンションで平穏に暮らしていた。しかし、地域の再開発が進み、マンションは地上げの対象となった。住人は次々と退去していくが、クララは自分の人生が詰まっている部屋を売り渡す気はない。クララは業者に抵抗し、そして自分の過去と未来とも対峙する…。
というお話です。
ブラジル北東部のレシフェ。パッと見、カリフォルニアのような雰囲気のリゾート風な住宅地です。65歳のクララは夫に先立たれ、1940年代に建てられたマンションにひとり暮らしています。1940年代に開発された地域なので、既に60~70年は経っている建物であり、劣化も見えてきています。再開発の計画が進み、クララの住んでいるマンションも再開発計画が立てられ、建設会社が買収を始めて、後はクララの部屋を買取るのみ。
建築会社のプロジェクトリーダーである経営者の孫息子が、クララに近づき、良い契約内容を渡すのですが、クララは見もせずに捨ててしまいます。建設会社は、クララを追い出さない限り計画を薦められない為、クララに嫌がらせを始めます。クララの上の部屋で夜中にパーティーをしたり、階段に排泄物を撒いたり、駐車場のど真ん中に車を駐車させたりして、クララを困らせます。
クララの知り合いのライフセーバーも、建物にクララ一人で住んでいるので心配をして、何かあったらすぐに電話をするように言ってくれます。嫌がらせは度を越してきて、クララも恐くなり、対処を考え始めます。
クララが、何故、このアパートにこだわっているかと言うと、彼女が大好きだった叔母の思い出と共に、自分が生きて来た歴史が刻まれているアパートであり、彼女がガンを克服した思い出もそこに在るんです。簡単には割り切れず、そこに住み続けているのでした。
建設会社の嫌がらせは続き、あまりの酷さに嫌がらせを請負っていた男たちが、クララを心配して、注意を促しに来てくれます。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
あのね、これ、私は、地上げをする方の立場の人間なので、クララが悪い人では無く、そこに住み続けたいだろう理由も知ったうえで、書かせてもらいますが、共同住宅なので、こういう風に、一人残られてしまうと、マジで困るんですよね。
きっと、建設会社は、住民達を買収する契約内に、新しい建物が建ったら、今よりも広い部屋を供与すると言う事と、建つまでの仮住まい費用と手数料くらいを約束していると思うんです。だから、クララ以外の人は、新しい建物が建つまで、どこかを借りているハズであり、建設が長引くと、仮住まいに長く住む事になっちゃって、辛い生活を強いられることになってしまうんですよね。映画の中でも、元住民がクララに文句を言う場面があるのですが、本当に、他の住民からすると迷惑なんです。
クララからすれば、自分は出て行きたくないっていう意志表示をしているだけなんだろうけど、他の住民からすれば、協調性を持って欲しいという考えになるよね。映画の中では、クララは、超カッコいいオバサンとして描かれているんだけど、カッコ良くても人に迷惑をかけるのはあまりイタダケナイよなぁと思いました。
そのアパート、3~4階建なんだけど、木造みたいなのよね。確かに、海外では木造の4階建共同住宅も沢山あるんだけど、それを70年っていうのは、さすがに無理だろうなぁと思った私でした。まして、海辺でしょ。塩害で躯体がボロボロだろうなぁ。
ま、立ち退きの事はそれくらいにして、このクララという女性、ステキなんです。一本、筋が通っているというか、まるでヤクザの姉さんっぽい感じで、年を取ったら、こんな風になりたいなと思うような女性でした。ガンで片方の乳房を無くし、夫も無くし、子供達も既に巣立ってしまい、自分一人で強く生きている姿は、理想の女性像でした。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。これも2時間半くらいの長さで、単館系の映画なので、眠くなるとは思うけど、強い憧れる女性像が描かれていて、女性にお薦めしたいかな。こんな風に年を取りたいと思うと思います。だって65歳になっても、彼氏を作ったり、ダンスに行ったり、マジで元気なんです。理想ですね。公開は解らないけど、もし、公開されたら、ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
アクエリアス http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=123