【TIFF 2016】「シエラネバダ」3時間なのに何故か楽しく観れる、ステキな群像劇。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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東京国際映画祭 2016 の11作目は、「シエラネバダ」(ワールド・フォーカス)を観てきました。

 

ストーリーは、

亡くなった一家の主の法要で、親族がアパートに集まってくる。細かいトラブルが重なり物事は予定通りに進まない。歴史を巡る口論、厄介な叔父との押し問答、一向に到着しない神父、そして料理は冷めていく…。
というお話です。

 

 

大家族が、亡くなった父親の法要で実家に集まります。長男・ラリは、妻を連れて実家に向かおうと家を出ると、妻・サンドラが大騒ぎをしています。ラリは元は医者で、今は医療系の仕事をしており、裕福な家庭を持っていて、サンドラはセレブ妻って感じ。娘の学芸会の衣装を白雪姫じゃなくオーロラ姫のものを買ってきた夫に怒っており、騒いでいるのですが、それを聞き流し、実家に向かいます。

 

実家に着くと、既に親族が集まっており、最近はどうなのと、話が始まります。それぞれの近況を話ながら、神父が来るのを待っているのですが、いつまで経っても神父が来ません。きっと渋滞に巻き込まれたんだろうとか話していると、やっと現れ、”神よ許したまえ。”と言いながら詫び、法要を始めます。

 

 

神父らが帰ると、叔母が泣いています。慰めている母親に聞いてみると、夫が大家の妻と浮気をしたと騒いでいるんです。そこへ、叔母の夫が現れ、帰れやらなんやら大騒ぎ。叔母の息子、娘もショックを隠しきれず、父親へ暴言を吐き、ラリは、仲裁をしながら、なだめていると、今度は妻のサンドラから電話があり、カフールへ買い物に行った帰りにトラブルになっているので来て欲しいとの事。

 

ラリは、今日は一体どうなっているんだと思いながら、サンドラの元へ行き、事を収め、また帰ってきて家族親族の話を聞き、既に夕方になってしまったのだが、食べそびれた昼食を口に運びながら、弟と2人で笑いが込み上げて来て、大笑いしてしまう。というお話です。

 

 

これ、あらすじを読んでも意味が解らないでしょ。でもね、素晴らしく良い映画でした。映画のジャンルで言えば、日本の監督の”小津安二郎”系の映画だと思いました。私は、小津さんの映画はほとんど観た事が無く、それをまねたと言う山田洋次監督の「東京家族」などしか観ていないのですが、そういう家族間の話が続いていき、とっても人間的な作品が仕上がって行くというものと同じなんです。これ、3時間もあるのに、眠くならないんですよ。あまりに色々な事が起り、それぞれに良く有りがちなことで、とっても面白いんです。

 

 

この映画は、最後にラリと弟の二人きりが食卓に着き、吹き出すように笑いだす姿が、この映画の全てを物語っているのです。在り来たりな普通の会話がどんどん進んでいき、時には政治の話、時には9.11テロ事件の話、時には近所の迷惑な話、時には夫の浮気の話など、誰もが凄く頭を使っていそうで、全く使っていなくて、口から出るままに話していて、それでも、本人たちにとっては、凄く大変な事だったりして、でも、直ぐ忘れちゃったりして、人間って、なんて愛らしいんだろうって思えてくるんです。

 

妻のサンドラは、セレブ妻なのよって感じで、とっても鼻に付くような女なんだけど、でも、道端で大騒ぎして喧嘩をするんです。みっともないでしょ。子供の頃からお金があった訳じゃないから、自分が裕福になって、勘違いしちゃっているのが見え見えなんです。元々の裕福な家庭に育っていれば、マナーなども身についているはずなのに、それが一切、身についていなくて、その事をラリも解っているんですけど、それを妻に言う事も出来ないんです。笑えるでしょ。

 

 

そういう人間の側面が良く描かれていて、とっても面白いんです。この作品、カンヌ映画祭のコンペ作品だったそうですが、どうして日本ではコンペにしなかったんだろう。3時間という長さが問題だったのかしら。凄くコンペ向きの作品だったと思います。この内容は、映画玄人の人になら解ってもらえるんじゃないかなぁ。小津監督とか知っている人に観ていただきたい作品ですよね。私みたいな、薄っぺらな人間が観るよりも、良く解っている人に観て貰って、解説して欲しかったな。

 

 

普通の家族の中に、こんなにたくさん話す事があるって、幸せですよね。会話の無い家族が増えている昨今、家族で話が出来て、叫んだり、泣いたり、心配したり、そんなステキな家族の姿が、この映画の中に描かれています。3時間の映画で、最後の最後で、こんなにもしあわせな気持ちになった作品、珍しいです。2人が笑いだした時、私も笑いましたもん。だって、沢山の問題がありながらも、重要な問題じゃなくて、みんな無事で、元気に暮らせていたんだねって安心出来て、下らない話を真剣に話している自分たちが、どんなに幸せなのか、2人が噛みしめている姿は、何とも温かい雰囲気でした。

 

 

私は、この作品、超!超!お薦めしたいのですが、3時間の作品なので、公開は難しいのかなぁ。でも、単館系で良いので、ぜひ公開して欲しいなぁ。このしあわせ感を沢山の人に味わって欲しい。返す返すも、この作品がコンペに入らなかったのが残念です。

もし、公開されたら、ぜひ、観に行ってみて下さい。映画好きならぜひ行くべきです。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

シエラネバダ    http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=143