舞台「マハゴニー市の興亡」を観てきました。
ストーリーは、
荒野の真ん中で1台のトラックが故障して動かなくなった。中には売春斡旋と詐欺の容疑で指名手配中の逃亡犯、ベグビック(中尾ミエ)、ファッティ(古谷一行)、モーゼ(上條恒彦)が乗っていた。3人はトラックがもうこれ以上動かないと分かると、この地に「マハゴニー」という楽園の街を作り、やって来る男たちから金を巻き上げようと考えた。
アラスカで樵(きこり)をしていたジム(山本耕史)、ジャック、ビル、ジョーの4人の男たちは、貯めたお金を持ってマハゴニーへ行こうと旅支度をする。この先に待っている酒や女やギャンブルといった、素晴らしい世界を思い浮かべながら。
4人の樵たちがマハゴニーの港に着くと、ベグビックが売春婦のジェニー(マルシア)と6人の女たちを連れてやって来た。べグビックは早速娘たちを売り込むが、しかし結局はジムがその売春婦ジェニーを買った。そして男たちはべグビックたちに連れられマハゴニーの街へ向かう・・・。
というお話です。
この舞台、日本で上演されるのは珍しいそうです。劇作家ベルトルト・ブレヒトと作曲家クルト・ヴァイルのコンビで作られた、最大の問題作だそうです。
題名を見て分かる通り、マハゴニーという町が作られ、滅んでいく様子が描かれているのですが、それが、とても激しい、まるで人間の人生のように見えて、面白いんです。
指名手配犯の3人が、警察から逃れ、金儲けをする為に、逃げる途中で立ち寄った荒れた土地にマハゴニー市という町を作って、そこで、売春宿や飲み屋を開き、町を発展させていきます。発展させるには、ある程度のルールが必要で、そのルールの中でも楽しく遊べるように、設定するんです。そして、様々な土地から、たくさんの男や女たちが、快楽を求めて、集まってくるようになります。
メチャクチャに見えるんだけど、一応、ルールがあって、それを守っていれば、安全に楽しく遊べるというようになっているんです。さすが犯罪者が考える事だって感じで、町は、安全に保たれて、どんどん大きくなって行くんです。でも、もちろん、ルールがあるから、ある程度の不満は溜まって行きます。まるで、海の底のヘドロのようにね。
そして、ドロドロしたヘドロの町にタイフーンが襲ってくるというニュースが流れ、パニックに陥る彼らでしたが、結局、タイフーンは訪れず、町は無事に残ります。そこに巣くっていた人々は、いつ何が起きるのか分からない町で、ルールを無視してやりたい放題を始めてしまい、町が無法状態になってしまっていきます。
自由って、ある程度のルールがあるからこそのものであって、何もかもが自由と思ってやりたいことをやってしまったら、それは、もう、自由じゃなくなってしまうんですよね。ただの犯罪者の集団になってしまうんです。良く、自由なんだから、何やってもいいじゃんとかって言う人いるけど、それ、間違っているからね。
この町にやってきたジムは、自由じゃんって言って、やりたいことやっちゃうのよ。その仲間も、やりたい放題で、先の事を一切考えずにやってしまうの。もちろん、その時は楽しいだろうけど、人間としては最低だよね。ハメを外したい気持ちも分かるけど、程度の問題ってあるじゃないですか。
大体、元々、犯罪者が作った町だから、システム的に問題がアリアリなのは当たり前なんですけどね。それにしても、ただ、金儲けの為だけの町では、長く続く訳が無いんです。やっぱり、町そのものに、意思があり、血が流れ、生きていないとダメなんだと思いました。それでも、出来てすぐの頃は、活き活きしていて、活気の溢れる町だったんですけどね。
町の生き死には、人間の生き死にと同じなんです。そんなことを思わせてくれる作品でした。私は、この舞台、難しいけど、楽しめたと思います。ちょっと、言いたいことを理解出来たのかどうかわかりませんでしたが、私は、楽しめました。すごい迫力だったし、出演者の声の張りがすごくて、圧倒されるばかりでした。もう、この舞台は終わってしまったと思うのですが、また、再演があるようでしたら、ぜひ、観てみてください。
ぜひ、楽しんでください。
マハゴニー市の興亡 http://www.mahagonny.jp/
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