「エル・クラン」を観てきました。
ストーリーは、
1983年アルゼンチン。裕福なプッチオ家は父と母、5人の子どもたちと幸せに暮らしていた。ある日、二男が通う学校の友達が誘拐され、姿を消す。以降、金持ちだけを狙った身代金事件が多発し、近所の住民たちが不安な毎日を送っていた。そんな中、プッチオ家の主のアルキメデスは、妻の作った夕食をなぜか2階にある鍵のかけられた部屋に運ぶという不審な動きをしていた。
というお話です。
マルビーナス戦争が終結して直ぐの1983年アルゼンチン。イギリスとの戦争に負けたアルゼンチンでは、国民からの軍への批判が高まり、軍側だったガルティエリは失脚し、人民側のアルフォンシン政権が発足する。アルフォンシン大統領は、軍事政権の負の遺産というべき、秘密警察的な組織の粛清を始め、それまで、国民を相手に好き勝手をしていた政府内の軍人は失業してしまいます。
それまでプッチオ家は、父親・アルキメデスが秘密警察で良い位置に属していた為、とても裕福に暮らしていましたが、アルフォンシン大統領の改革により、アルキメデスは仕事を失くしてしまいます。民間企業は軍事政権側で働いていたアルキメデスを雇うハズも無く、途方に暮れてしまいます。
アルキメデスは、仕方なく、以前、仕事でやっていたのと同じように、裕福な家庭の人物を誘拐し、身代金を頂くという仕事を始めます。軍事政権下では、政権に反対する人間を誘拐し、脅す事が仕事だったため、同じ事をやっているだけなんです。そんな訳で、彼に罪悪感は無く、大胆に公道で誘拐し、その人を隠して、身代金を要求すると言う事を重ねていました。
友人たちとその仕事をしていたのですが、友人が失敗したりして減ってしまい、アルキメデスは、家族に協力を頼み、息子が手伝うようになっていきます。人質も自宅に隠すようになって行き、家族全員が手を貸しているような状態になって行きます。
そんな父親を軽蔑し出て行く息子や、どうしても反発出来ずにズルズル手伝わされてしまう息子など、アルキメデスのせいで、家族は崩壊の道を歩み始めます。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、実話というのがあまりに驚きました。マジで酷いなって思いました。だって、そこら辺の住宅地で、人を誘拐しているんですよ。それも、知り合いを誘拐したりと、とんでもないんです。これ、ナチスに近いと思ったんだけど、一度、強い力に守られて、やりたい放題してしまうと、何でも許されると思ってしまうんでしょうね。そして、普通ならそんな残酷な事って思うような事も、全然、普通に思えてしまうみたいでした。
そんな父親の元で成長していく息子たちは、現実と父親の考え方のギャップに苦しみます。そりゃ、そうですよね。自分たちは、学校で常識を学び、現政権の正しさを教わっているのに、それと全く反対の事を父親がしているんですから。だけど、その父親が手に入れたお金で自分たちは生活しているというジレンマが、彼らを追い詰めて行きます。可哀想でしょ。
不思議だったのは、アルゼンチンでは、女性は、まだ地位が低いのかしら。母親や娘は、ただ従うだけで、何も意見も出来ず、説明もされていないように思えました。女性は、男性の庇護の下に居るべきと考えられていたのかな。それとも、映画の中だけかしら。
でもね、アルキメデスも可哀想といえば可哀想なんです。だって、それまでは、それが正しいと言われて、仕事をして、成績を上げていた訳でしょ。政権が変わったら、今までやっていたことが酷い事だって、糾弾されてしまうんです。彼からしてみれば、オレがあんなに働いてやったから、今のアルゼンチンはあるんだと思ったのではないかと思います。こういう時代に生まれてしまうと、本当に辛いですよね。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。国が安定していない時代は、こんな事があったんだという実話なので、知るべきことかなって思います。日本だって、こんな時代があったんですから、その恐さをアルゼンチンの歴史で追体験するのも面白いと思いますよ。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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