中国現代映画特集で「少年バビロン」を観てきました。去年の東京国際映画祭の「アジアの未来」で上映された作品です。
ストーリーは、
1990年代の載城。技術学校を卒業したルー・シャオルーは、化学工場に勤めるが、無鉄砲な人間で、将来や生活の目標も分からずにいた。工場では”牛魔王”という親方と毎日をいい加減に暮らし、技術も中途半端で、作業班ではネジを巻く以外は何も出来ず、電気班では電球を替えることくらいしか出来ずにいた。仕事以外ではゲーム、喧嘩が好きで、工場の塀を軽々と飛び越え、当然、女の子も追っかけた。ある日、彼はバイ・ランという名の工場医に愛情を抱くが、バイ・ランは大学院生として上海に行く事になってしまう。
というお話です。

小さな町で生まれて、外に出る事無く死んでいく人々の中で、もがいて、外に飛び出そうとした青年、ルー・シャオルーの姿を描いたお話でした。
ルー・シャオルーの生まれた町は、誰もが、その町から出る事無く、学校へ行き、卒業するとその町にある大きな工場に勤めて、退職し、死んでいくという人生を歩むと決まっているような町です。親の後を継ぎ、同じ仕事をして、工場に不満を漏らす事も出来ず、言われるがままの人生です。
ルー・シャオルーは、そんな決められた人生に納得出来ずにいるのですが、その町から出た事が無く、外の世界を知らないので、出て行く勇気がありません。そんな時に、上海から来た工場の医者であるバイ・ランに恋をします。
井の中の蛙であるルー・シャオルーにとって、バイ・ランは、外から入ってきた美しい蝶に見えたのかも知れません。彼女に付いて周って、自分に振り向いてくれるように、色々な事をするのですが、可愛いとは思ってくれても、恋人と思ってくれるような事は無くて、どーも、空回りしているように見えてしまいます。
ルー・シャオルーの父親は、リストラにあって、その町では、その工場以外に働くところが無いので、もう、ずーっと家に居る事になるんです。そんな父親の姿を見て、ルーは、やっぱり間違っていると考え始めるんです。最初の頃は、この町で、この工場で働いていくのは仕方のない事だと思って、そんな中でも楽しんで行こうと抗うのですが、父親の姿を見て、やっぱり、この町で沈んでいくのはダメだと考え始めるんです。

そんな時に、バイ・ランが上海の大学院に入る為に町を出て行くことになります。バイ・ランがいなくなった町で、ルーは、自分のこれからの人生を考え直したんだと思うんですよね。こんな決められたレールを走っている人生なんて、自分には合わないと、解ったんだと思うんです。
自分が暮らしている、温かくて居心地の良い場所から出て行くのは、とても辛い事だと思うんです。でもね、そこから出て行かないと、何も変わらないし、文句ばかり言っていても、誰も聞いてくれないんです。何が待っているか分からないけど、恐いけど、でも、一歩踏み出さない限り、何も変わらないし、悪くなる事はあっても、良い事は、人生に起こらないんです。
それってね、町から出て行くだけの事じゃなくて、親元を離れることだって、離婚する事だって、学校を辞める事だって、会社を辞める事だって、なんだって、同じ事なんですよ。もし、今の自分に不満が少しでもあるなら、一歩踏み出す事も大切だと思うんです。但し、自分が責任を持たなければいけない家族が居たり、そこから出たら自分には何も無いと解っているなら、出て行かない事。出るまでに、自分に力を付ける為の努力をして、家族が生活出来るような基盤を与えてやって、それから出て行ってくださいね。大人には、責任が伴いますから。

この映画、私は、まぁ、お薦めしても良いかな。それほど、超面白いと言える映画ではありませんが、そこそこ、良い事を訴えているし、笑える場面も多かったので、楽しめると思います。でも、この映画、日本公開はしないかも知れません。DVDで観て下さい。
ぜひ、楽しんでくださいね。
