【演劇】「日の本一の大悪党」優しくて妻想いの伊右衛門と心に暗を持つ岩の新しい四谷怪談 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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舞台「日の本一の大悪党」を観てきました。


ストーリーは、


四谷怪談がベースのお話です。


伊右衛門と岩は、仲の良い夫婦。岩は、子供が流れてしまってから身体を壊して、寝込む事が多くなり、伊右衛門は献身的に介護をしながら、仕事を探していました。伊右衛門は、ある事件で武家から解雇され、浪人となったんです。その武家も、その後、お取り潰しになり、友人も浪人になってしまい、一緒に職を探しているのですが。

友人と一緒に職を探していると、町で男に絡まれている女性を見かけます。ほおっては置けず、伊右衛門は助けてしまいます。その女性は大きな料理屋の娘の梅と言い、父親亡き後を継いだ義兄と一緒に実家の店を切り盛りしているのですが、梅の方が経営に向いており、梅は嫁ぎもせずに店の為に働いていました。そんな梅を心配した義兄は、町で出会った伊右衛門とイイ感じになっているのを知り、ぜひ、梅と結婚してやって欲しいと願います。


しかし、伊右衛門は岩と結婚しており、とても岩を愛しているので、その話は受けられませんと断ります。そんな所に、岩に横恋慕をしている宅悦という坊主が梅の義兄に手を貸しましょうと話し、宅悦は、岩に毒を盛って顔を醜くし、伊右衛門にその顔で寄り添うのかと言って岩を襲います。そこへ、帰ってきた伊右衛門は怒り、宅悦を殺してしまいます。人を殺したら捕まってしまうので、醜い顔をして身体が悪い自分は、伊右衛門の足手まといになってしまうと思い、伊右衛門に、「不貞を働いた現場で、2人を切り殺した事にしてください。」と言って、岩は自分を殺させます。


岩を失ってしまったショックで、少し錯乱状態にある伊右衛門は、放心状態のまま、梅の義兄に連れられて、梅と結婚する事になります。そして婚礼の日に・・・。


後は、舞台を観て下さいね。


日の本一

既に、良く知っている四谷怪談の解釈を変えた内容で、とても楽しめました。確かに、もしかしたら、伊右衛門は、とっても良い人であり、良い人であるが故に、事件が大きくなってしまったのかも知れないですよね。昔のお話だし、解釈を変えれば、いくらでもバージョンが出来ていくのは当たり前なのですが、今回の話は、何となく、とても納得が出来ました。結構、誰もが、普通の人なんです。普通に良い人であり、欲もあるけど、遠慮も知っていて、奥さんがいる男性を取っちゃおうとか、毒を盛って殺そうとか、そんな人は居ないんです。


ほんのちょっとした妬みや憎しみが、自分の好きな人を苦しめて、最終的に言う四谷怪談のエンディングに突っ走ってしまうんですよ。恐ろしいでしょ。悪くやっても、良くやっても、結局、同じなのかいっていう感じになるんですけど、でも、同じ最後でも、岩と伊右衛門の気持ちは繋がっていたのかなと思って、少し、良かったなって思えました。


今回、初めて小泉さんが演出をされたそうで、楽しみに観させていただきました。女性ならではの、美しさがあり、舞台を横方向だけに使うのではなく、上方向にも使っていて、面白いなと思いました。舞台上を、真ん中辺りで分けて、右は伊右衛門と友人、左は岩の家というような場面があり、ライトの当て方で、切り替えて見せるという演出場面もありました。暗転して舞台を何度も変えるより、とてもスムーズではあったのですが、イマイチ、向こう側に岩さんがいるなぁと感じてしまって気になったので、薄いレースのような物で少し隠していただけたら、気にならなかったかなと思いました。


伊右衛門の友人=渡部くんが、キーになっていたのかなと思ったのですが、彼の存在は、面白かったですね。今までに無い設定で、伊右衛門という人間が、どれほど魅力的な人物だったのかということが、彼の存在で浮き上がってくる感じがしました。このお話の中では、伊右衛門は、素晴らしい人物なんです。


岩の設定も、面白かったです。今までの四谷怪談だと、本当に儚げで、人に抗う事がないような女性で、殺されて初めて反撃する感じがあるのですが、今回の岩は、ちゃんと、自分の中にドロドロした欲望を持っていて、ちゃんと自分の道を自分で切り開いて来ているんです。だから、今、伊右衛門と一緒に暮らしていられるんですね。だからこそ、恨んで祟るとか言う事は無いんです。死んでも、伊右衛門を愛しているし、彼の幸せを願っていたと思うんです。でも、伊右衛門も岩を愛していて、彼女を失った悲しみから、狂乱してしまう。こんなに相思相愛だったのに、周りの人間の欲望に振り回されて、可哀想でした。


日の本一


同じ四谷怪談でも、解釈の違いで、こんなにも楽しめるのだと言う事が、良く解って、とても楽しめました。とうとう小泉さんも演出家ですか。うーん、凄いです。最近は、女性がパワフルになっていて、とても嬉しいです。男性が気が付かないような心の動きを、女性が表現出来る事もあると思うので、これからも、色々な事にチャレンジして欲しいです。


私が観に行った時、福田監督や、他にも俳優さん方がいらしていました。安田さんが主演でしたしね。


私は、この舞台、超お薦めでしたが、既に、公演は終わってしまいました。DVDが発売されると良いけどね。再演があったら、ぜひ、観てみて下さい。




日の本一の大悪党  http://www.nelke.co.jp/stage/asatte_vol1/


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