舞台「コペンハーゲン」を観てきました。
ストーリーは、
1941年秋、ナチス占領下のデンマーク・コペンハーゲン。ドイツ人の物理学者ハイゼンベルク(段田安則)は、かつて師とも慕っていたユダヤ系物理学者ボーア(浅野和之)とその妻マルグレーテ(宮沢りえ)を訪ねた。共に同じ研究の道を歩んできたはずが、今や敵対する国家に生きる2人の科学者。
あの日、2人は何を語り合い、妻は何を見つめたのか…?
のちの核開発競争を左右したという、史実にも残るあの謎の1日に大胆に迫る。
というお話です。

これ、面白かったなぁ。きっと、この内容が面白いと思う人と、全く分からない人と、完璧に二通りに分かれるでしょうね。
この舞台の内容がスゴイんです。簡単に言うと原爆を作っちゃった人達が、作り上げちゃう前に、何故か、無理をして逢っていたという話なんです。何故、何の為に、逢う必要があったのか。そこで、何らかの会話の動きがあれば、もしかしたら、原爆は作られなかったのではないかという話なんです。まぁ、後の祭り、今さら知った所で仕方ないだろうと思われるかも知れませんが、あながち、そうでも無いんじゃないかなって思うんじゃないかな。
この3人の会話の中には、人間の良心や恐れ、おごりや劣等感など、色々なものが含まれていて、そういう人間だからこそ、原爆を作る事になってしまったのかも知れないと思えました。人間は、これはやってはいけないような気がすると言う事が、どうしてもやりたくなってしまう生き物なんです。だって、「押すな」って書いてあったら、押したくなるでしょ。そういう生き物なのよ。

ハイゼンベルクもボーアも天才物理学者であり、彼らが打ち立てた力学により、電子や原子という小さな世界の動きによって、レーザーや半導体、先にはネット社会が構築されたんです。だから、素晴らしい学者の方々なんですが、ただ一つ、原爆を作ってしまった事が、彼らの心残りだったのではないかとおもいました。
広島と長崎に落とされた原爆は種類が違ったのですが、きっと、試験がしたかったんでしょうね。まず、広島に落とされたのは、リトルボーイだったかしら。こちらは、ウラン235番を使っていて、ウラン235は、自然界に少ししか無くて、これを使って原爆を作るのは大変なんです。長崎に落とされたのは、ファットマンでしたっけ。こちらは、プルトニウムを使っているのですが、プルトニウムは、ウラン238番という、自然界に沢山あるウランに中性子を当てるとプルトニウムが出来るのでこちらは、比較的沢山作れて作り易いんですって。
その研究成果を考えてみると、素晴らしい研究なので、止められなかったのは当たり前だと思うんです。でもね、最初は、きっと、何かの役に立つと思って始めていたと思うんです。それが、核分裂という現象を見つけ、それによって、世界が良い方にも動くけど、でも、世界を壊す方向にも動き出してしまうと言う事に、気が付いてしまったんだろうと思います。それを理解した時、この2人の学者とその妻の3人が、止めど無く、最初の一歩のところで引き返せなかったんだろうと考え、話し合うんです。それは、もう、穏やかに、まるで他人事のように話しながらも、自分の心の内を明かしていくんです。

彼らが止めなかったせいで、沢山の人間が死ぬことになったという事実が、彼らに、色々な事を考えさせ始めたんだろうと思います。その心の動きが、細かく描かれていて、この静かな中に、彼らの苦しい思いが潜められていて、本当に面白かったです。この3人の役は、ベテランでないと難しかったでしょうね。これ、下っ端の人には無理だもん。じっくり語る事が出来て、その中に含まれた怒りや哀しみを表現出来たのは、この3人だったからだと思います。
私は、この舞台、超!超!お薦めしたいと思います。まだ上演されています。でも、面白いからチケットが無いかなぁ。もし、チケットが手に入るようなら、ぜひ、観るべき舞台だと思います。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
コペンハーゲン (世田谷 シアタートラム)
https://setagaya-pt.jp/performances/20160604copenhagen.html
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