舞台「エターナル チカマツ」を観てきました。
ストーリーは、
ほんのちょっと、15分だけの恋のはずだった。
止むに止まれぬ事情から、売春婦になったハル。割り切って始めた商売だが、 足繁く通うジロウ(妻子持ち・現在失業中)と命懸けの恋に落ちる。周囲の反対を押し切ってこの恋を全うすることが出来ないと諦め、ハルはジロウに愛想尽かしをしたふりをして心ならずもジロウと別れる。自暴自棄になって街をさまよっていたハルは、かつて遊女の涙で溢れたという蜆川(曽根崎川)のあった場所で、ハルと同じ境遇にある、妻も子供もいる紙屋治兵衛と命懸けの恋をしている遊女小春と出会い、近松門左衛門の江戸の世界、古い古い恋の物語に引きこまれていく。
というお話です。
「心中天網島」というと、悲しい心中の話なのですが、今回は、その話が、現代の世界と繋がって、変わって行くという感じなんです。
深津さん演じるハルは、借金を返す為に売春婦として働いています。そんな彼女に入れ上げた妻子持ちのジロウは、家族を捨てて彼女と生きる事を望んでいます。ジロウの兄は、弟が家庭を壊すのを止めるために、ハルの所に来て、ジロウと別れて欲しいと手切れ金を渡します。ハルは、家庭を壊すような事はいけないと、金の為にジロウに恋をした振りをしていただけだと話し、手切れ金を受け取って、ジロウと別れます。
ハルは、自分の人生を悲しみ、死んでもいいやという捨て鉢な気持ちで、蜆川のあった場所を歩いていると、そこに、ハルと同じ悲しみを背負った、遊女小春が現れます。小春は遠い遠い過去の、自分の話をし始めます。好きで好きで、いけないことだと解っていながら、一緒に居たいと思い、心中に至ってしまった経緯をハルに語っていきます。
小春を演じるのは七之助さん。それは、もう、あまりにも美しくて、ため息が出るほどでした。私、歌舞伎などを観た事が無いので、七之助さんが、こんなにも美しいのだと始めて知りました。映画やTVなどで、男役は観ていたのですが、女形って、こんなにもスゴイんですね。女よりも女らしくて、これは並びたくないなぁと思うような女性でした。
深津さんは、強くて、ある部分ではもろい現代女性を演じていて、また、違った意味で、ステキでした。意地を張って、頑張って生きているんだけど、やっぱり、本当は、愛する人に一緒に居て欲しかったし、寂しいし、だけど、それを人には話せないんです。でも、人間、誰しもがそうですよね。本当は寂しいけど、でも、それを口に出してしまったら、自分を保っていられない。頑張れなくなってしまう。だから、言わないんです。そんな気持ちが、良く表現されていました。
舞台の美術が素晴らしく美しかったです。現代は、下品ぽい裏の風俗店というのを、ごってごてに表現していて、ネオンがビカビカしているような感じなんですけど、過去に行くと、紅い格子が遊郭という雰囲気を表していて、それは、美しいんです。赤という色を、とても印象的に使っていて、川を表す為に、橋と橋の欄干に赤を使って、そこが過去と繋がっているという印象を与えたり、上手いなぁと思いました。
近松門左衛門の世界って、TVや映画で表現されている割には、あんまり今まで印象に無くて、ただ、心中の話でしょっていうくらいの気持ちだったんですけど、今回、改めて触れてみると、結構、深い話なんですね。まして、今回の演出はデヴィッド・ルヴォーさんと言う方で、日本人では無いんです。外国の方の方が、近松を理解しているのかも知れないと思ったら、ちょっと恥ずかしくなりました。まだまだ、勉強が足りませんね。
もう、この舞台は終わりましたが、もし、再演とか、DVDなどで観る機会がありましたら、触れてみると良いのではと思います。本当に、美しいというため息が出てくる作品です。私は、最後、希望みたいのが見えて、感動して、涙が出てしまいました。良い舞台でした。
ぜひ、観てみて下さいね。
「エターナル チカマツ」 http://www.umegei.com/schedule/514/
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