「シェル・コレクター」自分の殻に閉じこもった貝類学者は人間と向き合う事が出来るのか。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

「シェル・コレクター」を観てきました。


ストーリーは、

貝の美しさと謎に魅了され、盲目ながらも貝類学の世界で成功を収めた学者は、妻子と離れ、沖縄の孤島で貝を収集しながら静かに生活していた。そんな彼の前に、ある日、奇病を患った女性画家いづみが現れる。学者は貝の毒を用いていづみの奇病を治すことに成功するが、それを知った人々が貝毒による奇跡的な治療法を求めて島に押し寄せ、静かだった学者の日々は次第に狂い始めていく。

というお話です。


シェルコレクター

子供の頃に盲目となった男は、貝類学者となり、その貝への執着が強くなり、沖縄の離島で一人、貝を集めて生活をしていました。毎日、海岸を歩いて、生体の貝を探して拾い、中身をキレイに掻き出して、標本や見本として売って、生活をしていました。

その時期、世界では、身体が麻痺していってしまう奇病がまん延していて、騒ぎになっていました。貝学者の先生は、そんな世界情勢を気にせず、仕事を続けていたのですが、ある日、海岸を歩いていると、貝では無く、女性を拾います。その女性は、奇病を患っていて、人生に絶望をしていました。


シェルコレクター

女性を助けて、一緒に生活を始めたある日、海岸で、彼女が”イモ貝”らしき貝に刺されてしまいます。”イモ貝”は、毒を持っていて、刺されると死ぬ恐れさえあるんです。驚いた先生は、彼女が死んでしまったのではないかと調べると、彼女は奇病が治っていました。画家だった彼女は、生きる希望を見出し、先生の島から旅立って行きました。

しばらくすると、その女性の奇病が治ったという話を聞きつけて、その離島の管理をしている一族の巫女である女性を治して欲しいと男たちがやってきます。最初は、嫌がっていた先生ですが、島を追い出すと言う言葉に負けて、画家の女性の時と同じ”イモ貝”を探して、巫女の所へ持って行きます。すると、そのイモ貝に刺された巫女は病気が治ります。

シェルコレクター

やっと解放された先生は、またゆっくりとした生活に戻れると思いきや、今度は本土から奇病を治して欲しいという人々が押し寄せて、先生に詰め寄ります。驚いた先生は家に閉じこもると、そこへ、先生が、昔、別れた息子が訪ねてきます。妻と離婚しても息子とは連絡を取っていたのですが、何年も会っていませんでした。息子はボランティアをしながら社会運動のような事をしており、島に集まった人に、その考え方を訴えることを始めます。沢山の人々と砂浜で宴会をしていた次の日の朝、息子は、”イモ貝”を握って、砂浜で倒れていました。息子は・・・。後は、映画を観て下さいね。

シェルコレクター

この映画、なんだか、掴めそうで掴めない感じがあって、難しいなぁと思いました。先生は、仙人のような感じであり、そこへ、下界の人間が救いを求めてくるけど、結局、それまでの罪が余りにも大きかったから、救われなかったよ~って事なのかしら。

人間の本質がとても良く描かれていて、汚い部分が辛いなと思いました。確かに、人間って、欲の塊だし、他人より自分の事がかわいいのも当たり前なんですけど、面と向かって言われると、うん、まぁ、そうだけど、言われたくないなぁっていう気持ちになってしまいます。

シェルコレクター

貝って、螺旋状になっているでしょ。夢枕獏さんの小説「上弦の月を喰べる獅子」で、螺旋蒐集家が出てくるのですが、同じ事を言っているんだと思うんです。螺旋とは、渦であり、小さなものは原子核の周囲を運動する電子の回転、田螺(タニシ)のような巻貝から、最大直径16万光年にもおよぶ我々の銀河系のような渦状星雲に至るまで。螺旋のかたちは、無限なるものの断面。世界を表していて、貝とは、世界=宇宙だったんだと思うんです。世界は、螺旋を描き、螺旋の時を刻み、それを見つめているのが、この映画の中の先生だったんだと思いました。


ちょっと難しいけど、簡単に言ってしまえば、因果応報って事なんです。全ては、仏教の因果応報に辿り着くと言っているのかなと思います。でも、それを簡単に理解しろと言われても、難しいですよね。良い行いをすれば良い報いがあるし、悪い行いをすれば悪い報いが起きるんだけど、それを簡単に割り切れって言われても、だって、人間だものって感じですよね。

シェルコレクター

先生は、仙人であり、下界の人間を見ていたんだけど、段々と下界の人間に引きずり降ろされて、下界に降りた事の報いを受けて、また見つめる方に戻るって感じでしたね。この映画は、観て直ぐに理解出来る内容では無く、じっくり考えて、答えを出すような映画でした。


前出しましたが、夢枕獏先生の「上弦の月を喰べる獅子」に近いことを描いているので、もし、お時間があったら、この「上弦の月を喰べる獅子」を読んでみて下さい。これ、面白いですよ。日本SF大賞受賞作です。夢枕先生、山岳小説(エベレストは夢枕先生の小説です。)ばかりじゃなくて、SFを書いて欲しいなぁ。(笑)


シェルコレクター

私は、この映画、まぁ、お薦めしたいと思います。但し、やっぱり薦める人を選びます。普通の単館系のふんわりした映画とは違い、SF的な考え方が出来る人でないと、この映画が訴えている事が解らないのではないかなと思いました。宗教やSF的な、そういうことが盛り込まれているので、簡単に観てしまうと、薄っぺらな感想になってしまうかと思います。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ





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