「完全なるチェックメイト」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
1972年、アイスランドで行われたチェス世界選手権で、ボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)とボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)が対戦する。長きにわたりソ連がタイトルを持ち続けてきたが、史上初のアメリカ人挑戦者が誕生。若き天才の登場に世界中が注目する中、ボビーは第2局に出現することなく不戦敗となり……。
というお話です。
ボビー・フィッシャー、本名ロバート・ジェームズ・フィッシャーは、1943年にアメリカ・シカゴで産まれた。彼の母親・レジーナは、生物物理学者だったハンスとロシアで結婚したのだが、ロバートの姉ジェーンを産んでしばらくして離婚し、自分の国籍のあるアメリカへ戻り、そこでロバートを出産する。ロバートの父親は出生証明書にはハンスと書かれているが、本当の父親は解らない。
貧しい生活の中、落ち着きが無かった6才のロバートにチェスセットを与えて、簡単なレクチャーをしたところ、ロバートはチェスにのめり込みます。どんどんと才能を開花させ、チェスでは誰にも負けないほどに強くなったロバート=ボビーは、14歳の時に、とうとうチェスのインターナショナルマスターとなります。
その後、何度も引退、復帰を繰り返し、1972年に、アイスランドでチェス世界選手権で、ソ連のボリス・スパスキーと対戦する事となる。このソ連との対決は、冷戦下のソ連VSアメリカにとって、大きな勝負となり、お互いが国をかけて戦う事となってしまいます。
ボビーの母親は、とても多才の人で6か国語を話し、医学修士を取得し、社会運動家であったので、スパイと疑われたこともあり、そんな母親を見ていたボビーは、些細な事にとても敏感で、いつも追われているような感覚を持っていたのではないかと思われます。なので、ソ連のボリスとの対戦でも、些細な事がとても気になり、逐一、文句をつけ始め、ピリピリした雰囲気の中、対戦する事になります。
お互いに相手を牽制しながらの対戦は、極度の緊張を保持し、2人の精神を壊していきます。お互いに、些細な物音や、視線が気になり始め、カメラさえも気になる状態に。そして、結局、2人の対戦は、小さな遮断された部屋で行われる事となり、極少数の関係者のみが部屋に居るという状態での戦いとなります。
息を飲む大戦の中、6局目にボビーが勝利を収めたところから、展開が変わり、ボビーが最後までリードを保つ事となります。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、ボビー・フィッシャーという人間を知っていて、なおかつ、チェスとか将棋などのゲームの1手を刺すときの緊張感を知っている人でないと、共感出来ないし、それほど面白いとは思えないのではないかと思いました。特に、ボビー・フィッシャーという人となりを知らないと、只の変人としか映らないかも知れません。それくらい、ボビー・フィッシャーという人間が複雑であり、この映画では、彼の人となりを描けていないんです。そりゃ、難しいですよ、だって、ボビーは天才なんですもん。簡単には、描くことは出来ません。
このボビーさん、しばらくは日本に滞在していて、日本人の女性と結婚していたんです。晩年は、アイルランド国籍を取得出来て、アイルランドで暮らしていました。こんなに身近に居た人なのに、日本では、ほとんど話題にならなかったというのが、驚きですね。出来れば、ボビーの試合を中心にした映画では無く、彼の人となりを中心に描いた映画を先に作って、公開してから、この映画なら、誰もが、あの試合の緊張感も理解出来たし、ボビーが、何故、あんなに神経質になって行ったのかという事も、解ったのではないかと思うんです。うーん、残念。
でも、私は、楽しめましたよ。チェス、好きだし、超弱いけど、あのコマがカッコ良くて好きなんです。たった64マスの中で、お互いに16個のコマを動かして勝負をするんです。何万通りの手があるにも関わらず、その中から、いち早くキングを倒せる手を考えるのは、スーパーコンピューター並みの頭脳を持っていないと出来ないのに、それを人間の脳が計算してしまうというところが、何とも面白いと思いませんか?1手間違えたら負けが決まってしまうような、そんな緊張感を保ったまま、長いゲームを戦うなんて、それを考えただけでも、ゾクゾクしてしまう。
私は、この映画、超!お薦めしたい映画なのですが、これ、好き嫌いがはっきり分かれるだろうなぁ。だって、チェスに興味があって、ボビー・フィッシャーを知らないと、ほとんど、変人の映画にしか映らないからです。うーん、ボビー・フィッシャーを沢山の人に知って貰いたいのですが、この映画だけでは難しいのかなぁ。日本人が奥さんだったんだから、もっと、日本でも取り上げられても良いと思うんだけど、何でかしら。残念ですが、皆さんに観て欲しいです。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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