劇団扉座公演「いとしの儚」を観てきました。
ストーリーは、
天涯孤独の博打うちの 件(くだん)鈴次郎。 手癖は悪いし意地も汚い人間のクズだが、博打の神様にだけは愛されていた。 ある日、鬼とのカケに勝った鈴次郎は美しい女を手に入れる。
女の名は「儚」―――はかな
この美女とは、何体もの死体から良い所を寄せ集めて作った人間だった。 ただし、生まれてから100日経たないと抱いてはいけない。100日待たずに抱けば、水となって流れてしまう、という。愛を知らない男と愛しか知らない女の100日間の物語りがはじまる。
というお話です。
このお話は、長谷尾草紙という平安初期の文人・紀長谷尾にまつわる日本の絵巻物に書かれたおとぎ話が元になっていて、夢枕獏の「陰陽師・酔月ノ巻」の首大臣にも出てくるお話です。元のお話では、双六(すごろく)の名手である男と鬼の勝負で女を手に入れるというお話なのですが、今回は、博打好きの男となっていて、彼にも悲しい過去があってという、とても良いお話でした。

主役の鈴次郎は、山中崇史さんが演じられました。イケメンなのに、賭博打ちながら目が血走っている演技だったので、ちょっと怖くなりました。血走った目で暴力とか振るう場面だと、鬼より怖いんですもん。鬼がカワイイ感じに見えてしまいました。(笑) で、鈴次郎に与えられる美女・儚は、MEGUMIさんが演じられました。いやぁ、美しいですね。
実は、今回、1列目だったので、MEGUMIさんの顔の小ささと、肌の美しさに、ノックアウト状態でした。だって、申し訳ないけど、山中さんと抱き合ったりしていると、あまりの頭の大きさの違いに驚いてしまいます。いやいや、山中さんの頭が大きいわけじゃないですよ。他の共演者といると、変わりませんから。でも、MEGUMIさんと組むと、もう、あまりにも大きさが違い過ぎる。あんなに美しくて、頭が小さくて、スタイルが良くて、彼女以上の「儚」は居ないでしょう。鬼から与えられた絶世の美女にふさわしい方でした。
鬼役は、岡森さんと犬飼さん。すごいメイクでしたが、鬼なのに、何となく可愛くて、たのしくなっちゃいました。
内容ですが、鬼に賭博で勝って、与えられた美女は、死体から作られたばかりの女性で、産まれたばかり。だから、鈴次郎が、一から教えなければならず、それまで、一人で生きてきた鈴次郎は、突然、家族が出来て戸惑うばかりでした。でも、段々と情が湧いて来て、鈴次郎なりに育てるんです。鈴次郎は、自分がマトモに育てて貰えなかったので、ハッキリ言って、礼儀や常識などの教養がありません。美しく、完璧な美女なのに、酷い言葉遣いで、下品に育ち始めてしまった”儚”を見かねて、ホモの坊主が預かって、イッパシの美女に育ててくれます。
礼儀や常識を教え、読み書き、音楽などもたしなみ、良い女になって、鈴次郎の前に現れるのですが、鈴次郎は、自分が持っていないものを儚が持ち始めたのをみて、自分と吊り合わなくなると思ったのか、坊主の元から連れて帰ってしまいます。
この鈴次郎は、父親はわからず、母親は遊女で、酷い育ち方をしてきたようなんです。だからこそ、ツキの女神が付いていたのだと思うのですが、儚という家族を持ち、しあわせを感じてしまったが為に、ツキの女神にそっぽを向かれ始めてしまうんです。儚を取るか、賭博を取るか、どちらかしか手に入らないのに、それに気が付かないんですよ。

儚を手に入れたなら、賭博は辞めて、普通の生活にすれば良いのに、それが出来ないんです。これ、ギャンブラーに良くありますよね。ギャンブルに集中して、他のものに目をくれなければ、きっとツキも周ってくるのに、他のものが気になってしまったが為に、負けてしまう。うーん、良くある事です。ギャンブルをしたいなら、他のものは捨てないとね。捨ててこそ、ギャンブラーです。(笑)
そこで、鈴次郎に、儚が、2人で普通の生活を送ろうと話し、鈴次郎も、その言葉を聞くんですけど・・・。難しいですよねぇ。可哀想でした。とっても良いストーリーでした。うーん、マジで感動しましたもん。ちょっと、オトナ系のお話でしたが、これは、良かったなぁ。この話、好きです。
そうそう、鈴次郎は、ツキの神様から好かれていて、その神様を、操り人形で表現するのですが、この人形が、すっごく美しいんです。とても妖艶で、何とも言えない強さと恐さを併せ持っていて、神様っぽいんです。「一糸座」という糸あやつり人形を操る劇団で、寛永年間から続く結城座からの流れを汲む有名な方達らしいのですが、私が、ものを知らないので、あまり説明出来ずにスミマセン。来年の6月に神奈川芸術劇場で新作公演「ゴーレム」をやるようなので、ちょっと行ってみたいかなと思っています。
私は、この舞台、超!お薦めですが、既に、公演は終わってしまいました。私は、神奈川県の厚木というところで観たのですが、厚木公演で終わりだったので、また、再演されたら、ぜひ、観てみて下さいね。
ぜひ、楽しんでください。
そう言えば、私の好きな”高橋一生”さんが、扉座に所属していたそうで、また、扉座の舞台にも出て欲しいなって思います。今は、劇団員では無いけど、でも、客員で戻って来て欲しい!!
劇団扉座 「いとしの儚」 http://www.tobiraza.co.jp/
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