25作目
東京国際映画祭 コンペティション部門「モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ」を観ました。
ストーリーは、
在宅介護していた夫の容体が急変する。慌てた妻は主治医に連絡を取ろうと必死になるが、事態は思わぬ方向に転がっていく…。平凡な主婦が絶望的な行動に走る様を、抜群のテクニックで描くノンストップ・サスペンス。
というお話です。
ソニアの夫は、病に倒れていて、特別な治療を必要としています。その治療の承認が取れないと、保険が下りず、すべての医療が自費負担となってしまいます。ソニアの家は、それ程、貧困では無いけど、病気になった時の為に保険に入っていたのに、その保険が全く適用にならないというのはおかしいと思い、保険会社に掛け合いに行きます。
しかし、保険会社の担当者は逃げるばかりで、審査をする医師までも居留守を使う始末。仕方なく、強硬手段を打ち、審査担当の医師の自宅まで追って行き、書類を読んで、承認を下すように話すのですが、書類さえも読もうとしません。とうとうソニアはキレてしまい、脅迫まがいのことをして、医師に書類を読ませることに。医師は、読んだ後も、承認は出来ないと言い、保険会社は、一定の割合しか承認は下ろさないと決まっているので、一度、却下された案件は、元には戻せないと話します。

ソニアは引き下がらず、どうしたら承認して貰えるのかと聞くと、CEOに掛け合うしかないと言い、今度は、CEOと人事担当を追って、スポーツクラブに向かいます。スポーツクラブの更衣室でCEOと人事担当を捕まえたソニアは、承認を下す為の書類を作るように、2人を銃を出して脅していると、背後で物音がして、つい、銃を撃ってしまいます。人事担当者に弾が当たり、驚いたソニアとソニアの息子は、CEOを連れて、書類を作る事が出来る場所に移動します。
CEOに必要書類を作成させて、顧問弁護士に法的に通用する書類となるように、その書類を持って行くと、今度は、CEOだけの署名では無く、もう一人の株主の承認も必要だと言われます。そして、今度は、承認を貰えそうな株主を訪ねて、移動する事に。そんな移動を繰り返している間に、既に、警察に捜査の手は回っており、ソニアを追って、警察が迫っています。

株主のマンションに着き、株主にサインを求めていると、警察に包囲され、株主の女性を人質に彼女の部屋まで逃げる事に。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
保険会社という大企業に立ち向かう女性の姿を描いているのですが、大きく蠢く会社は、一人の女性が騒いだところで、ビクともしません。大企業なのに、すべてに責任を取れる人間が居ないのです。この映画の題名通り、多くの頭数が居ても、誰も頭となる人間が居ないという事です。確かに、大企業だと、そうなのかも知れません。特に、保険会社はそうだと思います。だって、ただ、利益追求の会社でしょ。誰も、保険の勧誘している時に、お金が貰えないかも知れませんと注意喚起をする人は居ないですもん。

保険会社の仕組みって、何度読んでも、保険を払っている人が得をするようには出来ていないですよね。必ず、保険会社が倍以上得をするように出来てる。試しに、保険会社の人に、この保険を掛けたら、私に得はあるの?と聞くと、正直な保険会社の人は、口をつぐむでしょう。もし、べらべらしゃべる人間なら、まず、信用しない方が良いでしょう。保険を頼む時は、自分が損をすると解っていて頼むしかないんです。不思議よね。商売って、客と店がお互いに満足がいかないと成立しないはずなのに、保険だけは、客が満足する事は無いんです。やっぱり、保険会社の商売って、間違っているよね。でも、それを改善出来ないのも事実で、困ってしまいます。

ソニアは、夫の事を思って、自分の全てをかけて、こういう行動に出たのだと思いますが、それを息子が抑えて行く姿が、何とも言えずに、良かったと思います。まだ、高校生くらいなのに、彼の肩に、家族の全てがかかってしまう瞬間があり、息子の成長が映画の中で描かれていて、素晴らしいと思いました。

保険に関わらず、大企業というものが、どれほど無責任になってしまっているのかという事を、鋭く描いていて、とても面白いと思いました。今、日本でも、建築の杭の問題で、大企業がつるし上げになっていますが、大企業だからって、正直にやっている訳では無いんです。底辺の人間は、どんな会社でも同じ。誰もが、自分の得になるように動いてしまうんです。そして、正直にやっている人間は、要領が悪いと言われて、潰されてしまう。それが大企業なんです。少し、考え無ければね。

私は、この映画、お薦めしたいと思います。大企業の問題点を突いていて、こういう問題を、もっと社会で取り上げて行く必要があるのだと教えてくれます。日本公開は、まだ、分かりませんが、もし、公開されたら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
東京国際映画祭 コンペティション部門「モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ」
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=19