19作目
東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門「シム氏の大変な私生活」を観ました。
ストーリーは、
冴えない中年男のフランソワ・シム。いつも「SIMカードと一緒」と名乗るが、ウケない。妻は出て行き、職も失い、何も上手くいかない。女性になりすましてネットのチャットで元妻に近づき、本音を探ろうとする情けなさ。ようやく歯ブラシの営業職にありつき、セールスの旅に出る。道中、若い女性に出会い、夕食に招待される。はたしてシム氏の人生は好転するだろうか?
というお話です。
何処にでも居るような中年男性のシムさん。妻との旅行を計画していたのですが、旅行の1か月前に妻が出て行ってしまい、仕方なく、一人で旅行を始めたシムさん。何をやっても、あまりツイていない彼は、旅行先の近くに住んでいる父親との仲も、何となく、ギクシャクしています。実は、シムは、妻との離婚後に、失業もしてしまっていたんです。
旅行の途中、空港でアナウンスの音を録音している不思議な女性・ポピーと出会い、彼女と意気投合し、彼女の叔父の家のパーティーに誘われます。パーティーでも、どーも浮いてしまうシムさんですが、そんな彼を優しく見守り、声をかけてくれたのはポピーの叔父・サミュエル。彼は、シムに古い航海記を貸してくれて、ぜひ、読んでみてと言います。
シムは、歯ブラシの営業をやってみないかという電話を貰い、仕事に就き、会社の車と歯ブラシをもって、地方を営業周りする事となります。その旅には、先日、サミュエルに借りた本を持って、旅立つことにします。そして営業周りの途中に、自分の故郷に近い事に気が付き、今は誰も住んでいない実家を訪ねる事にします。
近所には、幼馴染も住んでいるので、幼馴染と懐かしい話をしながら、夜も更けて行きます。そして、実家にあった、父親の書いた小説と、玄関に何枚も来ていたハガキに気が付きます。その小説を読んでみると、父親の驚くべき過去が記されていて、自分の誕生の秘密も知ってしまい・・・。後は、映画を観て下さいね。
中年男性の辛さというか、何をやっても、思うように行かずに、ストレスは溜まって行き、だけど責任感はあるので、色々やろうと思うし、何とも、ちぐはぐな事ばかりをやってしまう自分を見て、ちょっと悲しくなる気持ちが良く描かれていました。この雰囲気って、やっぱり、男性特有かな。女性だと、オバサンになると、どんどん図々しくなって、人の話を聞かなくなるから、シムのように、それほどストレスは貯まらないのよね。
あ、でも、シムも、人の事はお構いなしに喋りまくっている場面もありました。そこは、オジサンというよりも、オバサンだなって思っちゃいました。時々、オジサンってオバサン化しますよね。(笑)でも、最近は、若い人も図々しい人が増えているから、誰もがオバサン化しているのかも知れません。若い頃っていうのは、恥じらいがあるので、みっともない事はしないというのが普通だったんですけどね。
シムは、妻とよりを戻したそうなんですが妻の方には、全く、その気は無くて、あまりのそっけなさに、可哀想になりました。いくらなんでも、冷たすぎないっすかって思っちゃいました。まぁ、でも、このシムが夫だったら、私も、”ウザ!”って言っているかも知れません。何をやっても、上手く熟せないんですもん。イライラしてしまいそう。この奥さん、良くガマンしたなぁ。(笑)
この映画のオチは、絶対に書けないのですが、ハッキリ言って、凄いです。そう来るか!っていうような、ひねりの効いた、何とも笑えながら、ちょっとホッコリする感じのラストで、気持ち良くなりました。途中で、ぶはっ!って噴き出すほど、驚きの展開だったので、大笑いしたかったんだけど、周りが静かで笑えませんでした。口を押さえて、クスクス笑っちゃった。だって、このオチで、シムがこれまで悩んでいた事なんて、あっと言う間に吹き飛びましたよ。
最後に一つ、シムの若い頃も、シムのお父さんとお父さんの友達の若い頃も、超!イケメンが演じていて、麗しい!と言ってしまうような感じなのですが、何故か、中年や老年になると、あまりの劣化ぶりと言うほど変わってしまって、そのギャップは、何があったからそうなったの?って監督に聞きたいほどだったのですが、質問が出来ませんでした。あのイケメンから、どうしたらそうなるの?ハゲるのは、男性ホルモンが多いってことで、全然良いんですけど、顔の劣化が激しすぎるっ!まぁ、中年も老年も、それなりのオジ様で魅力的なのですが、タイプが違うでしょ、タイプがっ!骨格も違うっつーの!あのまま年を取っていれば、執事に置きたいほどのオジ様なんだけどなぁ。
私は、この映画、超!お薦めしたいです。日本公開、あると良いなあ。マチューも重要な役で出演しているし、主演のジャン=ピエール・バクリさんは、フランスでは有名な俳優ですし、他の役者さんも、フランスでは、有名どころです。日本公開を待ち望みます。ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門「シム氏の大変な私生活」
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