【TIFF2015】「フル・コンタクト」彼に罪は無くても、彼の心は壊れてしまう。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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17作目

東京国際映画祭 コンペティション部門「フル・コンタクト」を観ました。


ストーリーは、
ドローンの遠隔操作で誤爆をしてしまった男を描く現代の寓話である。遠く離れた空軍基地で戦闘機を操縦しているアイヴァンは、攻撃の為に外国に行ったこともなければ、爆撃にしようしている機体に触れたことも無い。最新の戦争は、彼のような兵士の安全を保ち、被害者との関わりを断つ。しかし、誤爆によって、アイヴァンは人生のあらゆるものから隔絶されていく。

というお話です。


フルコンタクト

アイヴァンは、ネバダ州の空軍基地でドローンの操作をしています。砂漠のコンテナの中、モニターを見て、機械的に標的を追い、爆撃するんです。この兵器の開発により、確実に被害が減り、兵士の危険も無くなりつつあるのですが、遠隔操作の機械のよるものなので、相手の認識を誤ると、何の罪も無い人が犠牲となる事が出て来てしまうのです。

中東での攻撃だと思うのですが、軍が追っていた人物に爆撃しようとすると、別の人物が近づき、そのまま爆撃してしまいます。罪の無い人をも殺してしまったアイヴァン。でも、その攻撃指示は、本部から来たもので、アイヴァンの意志ではありません。それでも、人を殺したということに、変わりはないんです。

フルコンタクト

表情には出ませんが、自分のスイッチで人を殺してしまった事が大変な負担となり、アイヴァンは、逃避してしまいます。良く解らない砂浜に隠れ、人との接触を一切絶って、閉じこもります。映像的には、砂浜で一人サバイバルしているのですが、私は、この映像は、彼の気持ちの中の事であり、実際は、部屋に閉じこもっていたのではないかと思いました。その砂漠に、誤爆して死んだ人達と同じ顔の人々が来て、またも、アイヴァンはその人々を殺してしまいます。

フルコンタクト

ところは変わり、アイヴァンは、新しい仕事に就いています。空港の荷物を運ぶ仕事であり、面白みはありませんが、精神的なストレスは少ない仕事です。そこで、ある女性と出会い、何となくイイ感じとなります。彼女は、彼に、顔に傷があるけどと聞くと、彼は、格闘技のトレーニングをしている事を話します。アイヴァンは、格闘技を始める事で、身体も精神も鍛えて、再起を図ります。後は、映画を観て下さいね。

これ、少し前に公開された「ドローン・オブ・ウォー」のクロアチア版と言って良いと思います。同じように、安全な場所で人を殺して、精神的に壊れて行くという話なのですが、こちらの凄いのは、アイヴァンという主人公が、自分で、その罪に向き合い、立ち直ろうとする事なんです。ダメになったらダメでは無く、やっぱり、人間なんだから、起きてしまった事は起きてしまった事で、受け入れて、解決していかなければね。

フルコンタクト

アイヴァンは、最初、コンテナの中でドローンを操作している時は、ほとんど表情が無いんです。彼女と一緒に居ても、全然楽しそうでも無く、それこそ、自分が機械みたいなんです。でも、彼の内面では、恐怖と苦しみが渦巻いていて、砂浜でただ一人、カニを食べたりして、自分を追い詰めて行くんです。叫んでも、誰も助けてくれず、ボロボロになってしまいます。彼の責任では無いのに、それ程になってしまうんです。

フルコンタクト

このドローンの爆撃手って、もっとメンタル的な審査とかをして、精神的に強い人を連れてこないと難しいんじゃないかしら。精神的に強いというか、無関心な人間の方が、こういう事に向いていると思うんです。爆撃したことを、考えてしまうような人間は、やるべきじゃないと思うのは私だけなんだろうか。ただ、ゲームの中の事だと思ってやれてしまう人の方が良いでしょ。もちろん、ただ、大量殺戮をしてしまうような人間に持たせたら危ないとは思うけど、頭の良い人間がドローン操作をやると、直ぐに潰れてしまいます。


アイヴァンは、軍を辞めて、普通の仕事に就きながら、格闘技(パンクラスみたいなやつです。)を始めるのですが、これが、また、カッコいいのよ。ボロボロの顔なんだけど、自分の身体を使って戦う事をやり始めて、彼は、人間に戻って行くんです。それが、人間ってもんでしょって感じに見えてくるんです。それが、また、観ているこちらに何かを語りかけているような表情で、イイんですよ。

フルコンタクト

このアイヴァンは、ドローン操作は続けられなかったけど、でも、ドローン操作をやる人も居てくれないと困るんです。ドローンが無くなると被害が増えるし、機械的な戦いはダメみたいな感じに描かれる感じもあるけど、でも、それは必要な事だと私は思います。テロが無くなるなら良いけど、今のところ無くなる兆しは無いし、人の国の手助けをしているのに、自国民が死ぬのは許せないですもん。戦争が無ければとは思うけど、そんなキレイ事では、この世は回らないですから。

フルコンタクト

色々考えさせられる映画であり、心にグッとくる内容でした。ハリウッド映画よりも、何となく、深くて、観ているこちらに訴えかける映像に、とても惹かれる映画です。私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。ぜひ、日本公開して欲しいです。こういう、人間であるという感覚を、ちゃんと定位置に戻してくれる映画って、観るべき作品だと思うんですよね。ぜひ、公開されたら、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ




東京国際映画祭 コンペティション部門「フル・コンタクト」

http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=11