【TIFF2015】「土と影」土地に囚われてしまわないで。未来を見つめて欲しい。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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14作目

東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門「土と影」を観ました。


ストーリーは、

コロンビアの辺境の地。初老のアルフォンソは、病に臥す息子に会うために、17年前に捨てた故郷の家に帰ってくる。自分のかつての妻、そして息子の妻がサトウキビ畑の労働で懸命に家庭を支えている。元妻はアルフォンソに当然冷たい。故郷は荒地にしか見えない。アルフォンソが家族の為にできることはあるだろうか…。

というお話です。


土と影

カンヌ映画祭カメラドール(新人賞)の作品です。


アルフォンソは、17年前に、家を捨てて、出て行ったのですが、息子が病気だという連絡を受けて、戻ってきます。何で出て行ったのかとか、そういう細かい事は描かれていないのですが、その地を見る限り、仕事は少なく、枯れた土地なので、作物もほとんど育たないように見えました。若かったアルフォンソは、枯れた地で仕事も無いのでは、家族を養えないと思ったのかも知れません。息子が病気だという知らせが受け取れたという事は、妻も、アルフォンソの居る場所を知っていたのだろうし、きっと、仕送りもしていたのではないかと思います。


土と影

戻ってくると、息子は、肺を病んでいて、その荒れた地では、満足な医者も居ません。ただ、薬を飲ませておくしかないというんです。肺を病んでいる事が解っているなら、治療をすれば治ると思うのですが、そこは、日本の現状とは違います。観たところ、気管支不良のようだったので、ちゃんとした治療をすれば治ると思うんですけどね。


肺の病気は、その地の埃や塵が原因だと思われ、アルフォンソは、息子の妻や孫を、このままこの地に置いておく訳には行かないと思い、環境の良いところに連れて行きたいと薦めるのですが、妻は、その地を離れる訳には行かないと言います。彼女にとって、その土地は、彼女がずーっと守ってきた土地であり、夫が出て行っても、夫の土地であるその場所を守る事が、彼女の生きがいになっていたのではないかと思います。


土と影

妻は出て行かないと言い、息子は、母親が一緒に行かないなら出て行けないと言い、アルフォンソは、息子の嫁と孫だけを連れて行くしかないのかと悩んでいると、とうとう、息子の様態が悪くなり、手遅れになってしまうのではないかという状況に陥ります。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。


この土地に対しての執着って、日本でもあると思うんですよね。自分たちの身体を壊してまで、そんな土地にこだわる必要は無いのにと思うのですが、自分が守ってきた土地なのだという気持ちが強い人って、結構、居るんだと思います。福島の原発の時に思ったのですが、どんなに自分の土地だと言っても、環境が変われば、それは、もう、住む場所では無いのだし、新しい土地を見つけて、そこで新しい歴史を作って行くことの方が、自分にとっても、家族にとっても、大切な事だと思うのですが、そんなに簡単に割り切れるものでは無いのかも知れません。


土と影

その土地にこだわりがあれば、そこにとどまれば良いし、家族の未来を思えば、新しい土地を早く探す事が一番良いのだろうと思います。それは、年齢にもよるのでしょうね。もう年寄りだったら、無理して未来を見る必要も無い訳だし、若ければ、新しい土地で歴史を作る方が良いですよね。親は、子供たちを早く良い土地に移してあげるように促すべきだし、年寄りになったら、若い人に負担を出来るだけかけないように、暮らして行くことを考えなければね。どんなに頑張っても、年を取れば、若い人に迷惑をかけてしまうのだから、極力、迷惑をかけないような努力をしないと。


土地というものへの神話は、日本と良く似ているような気がして、とても考えてしまいました。でも、人間は、どんな所でも生きていけるんです。その命さえあれば、何処にだって住めるし、「住めば都」っていう言葉もあるように、自分の命をかけてまで、その土地に居る必要は無く、新しい土地で、その命を永らえれば良いんです。土地なんかに囚われないでくださいね。そんなもの、いつかは誰かの物になってしまうのだから。

土と影

私は、この映画、まぁ、お薦めしても良いかなと思います。但し、淡々と話が進み、大したことが起きないので、単館系の映画を観慣れている人でないと、眠くなると思います。でも、その土地に対しての気持ちの描き方が、とても日本人の気持ちと近いので、彼らの気持ちは、理解出来ると思います。日本公開は、ちょっと解りませんが、もし、観る機会があったら、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ




東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門「土と影」

http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=135