9作目
東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門「If Only」を観ました。
ストーリーは、
インド西部のアーメダバード(グジャラート州の都市)の空港に写真家のアーディルが降り立つ。ネットで知り合ったクシャーリが出迎える。実はアーディルはムンバイで女優志望のサミーラと愛し合っていたが、情熱的で激しい気性の彼女と衝突を繰り返した末に破局していたのだった。快活で庶民的なクシャーリも母親との確執を抱えるなか、アーディルとクシャーリはカッチ地方に旅に出る。ふたりは関係を深めていくが、そんなときに女優になったサミーラがアーディルに再び接近する…。
というお話です。
インドのアーメダバードという空港に降り立ったアーデイル。彼は、ネットで知り合ったクシャーリと旅に出るために、この地に降り立ったのでした。アーディルは、女優のサミーラと付き合っていたのですが、アーディルが写真家として成功し始め、NYに誘われた時に、サミーラは、まだ女優として認めて貰えずにいて、自分を捨てて行くのかというので、アーディルはサミーラの為に、NY行きを諦めたのでした。その後、サミーラは、有力プロデューサーに取り入り、有名女優となって、どんどん我が儘になり、アーディルの手に負えなくなって行きます。2人は、喧嘩ばかりになり、とうとう、アーディルは耐えられなくなり、家を出て、このアーメダバードに降り立ったのでした。
クシャーリというネットで知り合った女性と、カッチ地方に旅に出て、色々な人と出会い、色々な経験を積んで、楽しい時間を過ごすのですが、アーディルは、どうしてもサミーラを忘れる事が出来ません。雑誌や、大画面で、サミーラを目にする度に、苦しさを覚えて、一人になりたくなるアーディル。そんなアーディルをみて、クシャーリは、彼に恋をしてしまいます。アーディルを助けたいクシャーリですが、彼のサミーラへの思いを忘れさせることが出来ません。
旅行中のある日、突然に酔っ払ったサミーラからアーディルに電話があり、サミーラはアーディルが恋しくて電話をしたようだったのですが、その気持ちを上手く伝えられず、結局、喧嘩になり、2人の仲は、決定的にダメになります。その電話を聞いていたクシャーリは、アーディルを自分に向かせようとするのですが、こちらも上手く行かず、2人は、そのまま、旅を終えて、別れてしまいます。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
これまでのインド映画のように、歌あり、ダンスあり、コメディありの内容とは違い、とっても美しい映像で、主人公たちの心の動きを細かく描いていくことで、深い愛のお話となっています。ちょっと、ヨーロッパ的な恋愛映画っぽいかな。とにかく、監督が、写真家の方なので、画面が美しいんですよ。
恋愛で苦しむのって、誰にでもありますよね。好きなのに素直になれなくて、すれ違ってしまうということは、誰にでもあると思います。そんな苦しさを良く描いてありました。それに加え、付き合ったら、お互いを束縛したくなってしまうという気持ちが、お互いを壊していく事に気が付かないという事も描いていました。
確かに、自分が大変な時に、一緒に居て欲しいと思うのは当たり前だし、付いていてくれなかったら、私を捨てるの?って言いたくなってしまうのも解ります。でも、お互い、一人一人の人間なんだから、束縛も、寄りかかるのも、大概にしないと、壊れます。個人を尊重し、相手が成功するのなら、自分が苦しくても、喜んで送り出してあげる事が相手を思う事なんじゃないの?それを行かせないなんて、そりゃ、仲は壊れるでしょ。相手は、自分の所有物でも、ペットでも無いんだから、勘違いしないように。
そして、別れて、相手が忘れられない苦しみって、とっても解るのですが、その忘れられなくて苦しんでいる自分を好きになりましょう。映画の中でも、エルスベスが言うのですが、彼女と付き合った事も別れた事も、全てが自分なのだから、それを受け容れて、新しい道を行けば良いんです。あんな事もあったなぁと、良い思い出として処理すれば、新しい恋を手に入れられます。失恋があるからこそ、今の自分もあるのだから、自分を好きになりましょう。
そんな恋の行方を描きながら、インドの中の階級っていうのかな、経済力の格差なども描いていました。アーディルは、飛行機を使って旅をし、クシャーリは、電車を使うんです。そして、街中の移動は、タクシーとスクーターの違いとか、それぞれに、生活の水準が違う事を表していると監督がおっしゃっていました。日本でも、価値観の違いはあるけど、インドほどの違いは無いように感じるんですけど。
出演者は、みーんな、初心者だったそうです。歌手だったり、モデルだったりするのですが、俳優としての仕事は、みんな初めてで、面白かったそうです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。今までのインド映画とは違い、ヨーロッパ映画のように楽しめると思いますよ。日本公開は、まだ決まっていないようなので、出来たら、公開して欲しいです。だって、とっても映像が美しいんですもん。色の使い方も、光の使い方も、とても印象的です。もし、公開されたら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
東京国際映画祭 アジアの未来部門「If Only」
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=37