7作目
東京国際映画祭 コンペティション部門「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」を観ました。
ストーリーは、
名ジャズ・トランペット奏者として一世を風靡した、チェット・ベイカーの苦闘の時代を描くドラマ。ドラッグに依存し、暴行されて歯を失い、どん底に落ちたチェットが再生を目指す姿を、イーサン・ホークが見事に再現する。シャープな映像とクールな音楽が抜群の官能をもたらす1本。チェットのどん底時代からの回復期に焦点を当てるが、イーサン・ホークという稀有な才能を得て、破滅的でありながら繊細な美しさを持つ天才ミュージシャンの実像を見事に再現することに成功している。激動の60年代において、黒人優位のジャズミュージシャンの世界における白人スターという地位の複雑さも描かれ、映画に奥行を与えている。
というお話です。

名ジャズトランペッターのチェット・ベイカー。白人ながら、ジャズトランペッターとしての才能を持ち合わせた彼でした。ある時からドラッグに依存してしまい、妻に見捨てられて、仕事も減っていた時、自伝の映画の話を持ちかけられ、自分の役を自分で演じる事になり、その時の相手役の女優と恋に落ちます。これからという時に、ドラッグの売人に借金を重ねて暴行され、トランペットを満足に吹くことが出来なくなったチェットは、映画も中止になり、誰からも見捨てられてしまいます。ただ一人、女優の恋人ジェーンだけは、チェットを見捨てず、2人で車に住みながら、生活を続けます。

チェットは、どうしてもトランペットを捨てる事が出来ず、訓練を続け、以前のような天才肌のトランペッターでは無くなりましたが、枯れた感じの味のあるトランペッターとして蘇えります。マイルズたちに認められようと、一夜限りのライブを開きますが、精神的なプレッシャーに勝てず、辞めていたドラッグに手を出してしまいそうになるのですが・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、素晴らしかったです。これ、また観たい!イーサン・ホークの演技も素晴らしいのですが、映像と音楽のコラボが素晴らしいと思いました。今度観に行くときは、音楽をもっともっと、良く聞いて楽しみたいです。本当に、音が良いんです。ジャズトランペットの音が、涙が出るほど心に響いてくるんです。そして、歌をイーサン・ホークが歌っているのですが、これがまた、何とも切なくて、惹かれてしまうんです。

イーサンの枯れた感じが、何とも味があって、守ってあげたくなるような人物に仕上がってました。あまりにも激しい人物だったようで、周りは大変だったようなのですが、この映画の中のチェットは、弱くて、壊れそうに繊細なんです。だから、薬に頼らざるを得なくなってしまったのかも知れません。あういう芸術家的な人は、完璧を求めて、脳がスッキリした状態で演奏をしないと納得が出来ないのでしょうね。誰かが、助けてあげないと、壊れてしまうのに。この時期は、チェットにとって、一番、辛い時期だったのだろうと思います。
このチェット・ベイカーさんって、ジャズ界では有名な方で、日本でも、何度かライブを開いていらしたそうなんです。恥ずかしながら、私は、この映画を観るまで知りませんでした。帰って来て、とりあえずYouTubeで探して聞いてみたら、まるで潤いがあふれ出るようなステキな音なんです。こんな音を出し、イケメンだったなら、そりゃ、若い頃は、ちやほやされたんでしょうね。ドラッグに溺れて行くのも解らないでも無いかななんて思ってしまう。

チェット・ベイカーさんの人気もある事ながら、この映画は、良く出来ていると思いました。彼の転落人生を見事に描き、どん底から這い上がる為にもがく姿も描いていて、惹きこまれました。そして、彼を支えていた恋人のジェーンは、彼を支えつつも、自分の夢も捨てずに追って行き、男に振り回されるだけの女性ではない姿が、印象的でステキでした。男の為に自分を捨ててしまう女は、結局は、男にも捨てられて終わると思っているので、ジェーンの姿は、現代女性が見本にすべき人だなぁと思いました。
そうそう、チェット・ベイカーの歌を、イーサンさんが歌っているのですが、監督もおっしゃっていましたが、実際のチェットとは、声が全く違うんです。でも、何故か、チェットになっているんです。声や歌い方がちょっと違っても、雰囲気や、醸し出すものが同じなら、なんら違和感はありません。とても良かったと思います。イーサンの、ちょっと枯れて疲れた感じが、オジ様~って感じでラブです。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。もう、素晴らしいとしか言えません。なんか、ごちゃごちゃ言うよりも、観て欲しいという感じの映画です。光の取り入れ方もステキだし、特に、音楽が素晴らしいと思います。私は、次に観る時は、ぜひ、音楽中心で観たいと思っています。あ、でも、まだ、日本公開は決まっていないのかな。でも、これ、日本公開しないって言ったら、信じられません。こんなに素晴らしいのに、日本で観れないなんて、あり得ないっ!ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
東京国際映画祭 コンペティション部門「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」
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