「屍者の帝国 THE EMPIRE OF CORPSES」死者を甦らせても魂は入ってない”木偶” | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「屍者の帝国 THE ENPIRE OF CORPSES」を観てきました。


ストーリーは、

19世紀末のロンドンでは死体蘇生技術が飛躍的に進歩し、すでに亡くなった人々を労働力として有効活用していた。優秀な医学生のジョンは、内密にイギリス政府が運営するウォルシンガム機関から召集がかかり、ある秘密の任務を請け負う。彼は伝説の書物であるヴィクターの手記を求め、唯一の手掛かりと思われるアフガニスタン奥地へと向かう。

というお話です。


屍者の

19世紀末、死体を労働力として活用する技術により、街には死体が労働力として溢れ、人間はその労働力によって、余裕のある生活を送っていた。そんな世界の中、ジョン・ワトソンは、自分の親友であり共同研究者であるフライデーが亡くなり、その遺言として、彼の遺体を内密に掘出し、蘇生技術を使い甦らせ、死者の中に魂は戻るのかという研究を続けています。そこへ、イギリスの諜報機関ウォルシンガムの局長=Mが訪ねて来て、違法に遺体を蘇生させれば懲役刑だが、ある任務を請負ってくれるなら、無かった事にしようという取引を申し出ます。

屍者の

その任務とは、ヴィクター・フランケンシュタイン博士の手記を追って、アフガニスタンの奥地へ行って欲しいと言う事でした。ヴィクターの手記は、アレクセイ・カラマーゾフが持っていて、アフガンの奥地で屍者の国を築いているらしい。ワトソンは、フライデーと共に、アフガンへ向かい、途中、フレデリック・バーナビーという監視役とロシアのエージェントと落ち合い、共に、アフガンの奥地へ向かう事となる。

向かう途中、屍者の襲われるのだが、その屍者は、それまでの屍者とは違い、俊敏で先読みをして攻撃をしてくるというものだった。苦戦するワトソンたちを助けたのは、ハダリー・リリス。彼女は、ユリシーズ元アメリカ大統領の秘書であり、やはりヴィクターの手記を追っているのでした。


屍者の

カラマーゾフの居る場所に付いたワトソンたちは、そこで手記に書いてあった方法で、新しい屍者を作りだしているカラマーゾフに、それは屍者では無いと怒ります。彼らは、日本に渡ってしまったヴィクターの手記を廃棄して欲しいとワトソンに託し、自分たちは、新しい世界へと旅立ってしまいます。


ワトソンは、ヴィクターの手記を追い、今度は日本へ旅立つこととなります。日本へと渡ったワトソンとフライデー、バーナビーは、日本の「大里化学」という民間会社が手記を手に入れたらしいという情報を手に入れ、日本陸軍の山澤と一緒に、大里化学へと潜入します。そこで、ヴィクターの手記を目の前にして、ワトソンは、カラマーゾフに頼まれた約束を守れずに、ある選択をしてしまいます。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

屍者の

この映画、超!面白いですね。なんか、「リーグ・オブ・レジェンド」という映画みたいでした。色々な歴史上の人物が、この中で大暴れしていて、謎を追って行くんです。これ程、面白い内容だとは思っていませんでした。これは、スゴイ!と思って、既に3回、観てしまいました。(笑)

屍者が労働力として、生者の生活を支えているという考え方は、衝撃でしたね。普通なら、なんで身体が腐らないんだとか、内臓はどうなっているんだとか、屍者の動力エネルギーは何で供給しているのかとか、食事をするのならば排泄はどうなっているのかとか、どうしても、色々考えてしまうのですが、そんな事は、どうでも良いと割り切ってしまえば、こういう事になるのでしょう。それも、1878年という、19世紀末期の世界が精力的に動いていた時代を舞台とし、人間が近代化する為に沢山の選択をした時代に、屍者を使うという選択をした世界を描いていて、これは面白いと思いました。

屍者の

今の私たちの世界は、この時代に、屍者では無くロボットを使う選択をしたと思って良いのかな。プログラムによって、AIを生み出す方へ舵を切ったのが、私たちなのかも知れません。その可能性の中、彼らは、屍者を選んだんです。そして、フランケンシュタイン博士が作ったザ・ワンという意志を持った屍者を目標として、彼らは、魂のある屍者を望んでいた。それって、ただ、死なない人間ってだけじゃんと思ってしまう私は、ダメですね。浪漫が無い。(笑)

魂を追うワトソンは、フライデーの魂を取り戻すことが出来るのか。そして、”魂”とは、何なのか。それを解明して行くのですが、”魂”の考え方が、これも、面白いと思いました。普通、魂があるから意志があって、意志があるから言葉が出てくると思うのですが、言葉があるから意志があり、意志があるから魂もそこにあるのだという考え方なんです。そう、反対に追って行くんですね。これ、面白いと思いました。そう言われれば、確かにそうだけど、ちょっと目新しいでしょ。

屍者の

出てくるキャラクターが、ジョン・ワトソンとか、フライデー、バーナビーなどなど、小説の有名なキャラクターや、実在の人物が出てきているんです。ワトソンはホームズの相棒だし、フライデーは「ロビンソン・クルーソー」に出てくる原住民の名前だし、バーナビーは実在の人物でタイムズの特派員として世界を飛び回った人だし、ハダリーは「未来のイヴ」というSF小説のアンドロイドの名前だし、他にも、カラマーゾフとかエジソンも出てくるし、Mは007の局長の愛称よね。だから、このキャラクターたちは、映画、小説、ドラマ、歴史を楽しんで覚えている人には、とっても楽しい組み合わせであり、この先も予想を膨らませる要素でした。

屍者の

ワトソンは、この後、ホームズと組む事になり、ハダリーはアイリーン・アドラーとなり、そしてフライデーは・・・。私は、彼がモリアーティーになってくれれば、シャーロック・ホームズの小説でのモリアーティーとの攻防は、フライデーが、ワトソンにこだわるが故の事件となってくるのかもなんて思えて、物語が膨らんでしまいます。魂があるからこそ、意識=思考は無現に広がって行くんです。面白いでしょ。

この「屍者の帝国」が、これ程、面白いのであれば、他の2作も面白いのかなぁと期待してしまうのですが、他は、まだ解りません。楽しみにしましょう。


屍者の

私は、この作品、超!超!超!お薦めしたいと思います。面白いです。10/2公開だったのに、既に3回観ちゃった私のハマりようを解ってください。結局、小説は、まだ読書中なので、映画の方が先になってしまいましたが、これ、映画だけだと、ヴィクターの手記の謎が、イマイチ、解りにくいかも知れません。最後のエンディング中のフライデーの言葉で解決しているのですが、それだけだと、ちょっとね。もし、もっと知りたい方は、本も読んでみて下さい。出来れば、19世紀末の世界史を理解してから観に行くと、もっと世界観が判って、面白いと思いますよ。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ


P.S : 蛇足かも知れませんが、原作とは設定が違っていて、原作ではMから与えられた屍者がフライデーなのですが、映画では、ワトソンの友人のフライデーを屍者として生き返らせます。そして「君にもう一度会いたかった。聞かせて欲しかった、君の言葉の続きを。」というセリフになるのですが、これって、亡くなった伊藤計劃さんに対しての叫びだったのでしょうね。若くして亡くなった伊藤さんの言葉の続きが知りたかったというのは、誰しもが思う事だと思います。残念です。







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